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TeX.Hacker  作者: 融暖
第1章
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ep7-失敗作①-

挿絵(By みてみん)

朝食を取った後、カイルはエウレリアの先導の下、地下第9階層へと赴く。


第9階層と言えば、あのシンディナ達3人組でも立ち入りが叶わない階層だ。


たしか…研究や開発を行う区画だったはずだ。


エウレリアは、玉座のある秘匿された区画に行くことができるのだから、この程度造作もないという事なのだろう。


開いたメインシャフトエレベーターの扉からは、これまでのどの階層とも違った、薬品や油の混ざったような異様な刺激臭が鼻を突く。


すかさず腕を鼻に当てて身を守るカイルだが、その横に立つエウレリアは、ほんの僅かに眉が動いた程度だった。


前を向き直したカイルの目の前に現れた光景は、どちらかというと軍事施設のある階層に近い。


だが、建物は大小様々であり、あちらより小綺麗な印象を受ける造りだ。


少し薄暗い工業地帯のような街並みを、2人は目的地に向けて歩みを進める。


エアー工具や電動工具等の音が響く軍事施設階層と違い、耳に入る音は思わず両手で耳を覆いたくなるほどだった。


いや、音というより叫び声に近い。


人体実験でもしているのではないか、そう疑われても否定のしようがない程だ。


通路を行き交う者達は白衣や作業着をまとい、誰もが何かに追われるように足早だった。


中には髪を振り乱し、書類の束を抱えたまま独り言を呟く者までいる。


そんな道を迷わず進むエウレリアに連れられて、カイルは周りと比べると比較的大きな建物に到着する。


銀白の金属で作られた建物は窓一つなく、周りからの侵入を拒んでいるように感じられた。



そんなこともお構いなく、エウレリアが手をかざすと、ロックされた扉は当然のように開き、そこに躊躇なく足を進める。


遅れまいと後を追うカイルは、暗闇に静まり返る室内でエウレリアにやっとの思いで追いつく。


外の喧騒が嘘のように、建物の中は静まり返っていた。


「明かりをつけます。」


エウレリアの一言と共に、室内全体が明かりで満たされる。


一瞬の眩しさに目を瞑ったが、次に瞼を開いたカイルを迎えたのは、紫に塗装された下半身を持つ一機の機械体。


「これが貴方に託したい機械体…、エンヴィスN型の高速機動試験型です。…未完成ではありますが。」


エウレリアの皮肉にも聞こえる説明をよそに、カイルはその異形さに視線を奪われていた。


上半身は、エンヴィスN型に黒い追加装甲をつけただけのようだが、何よりも目を引くのはその下半身にある。


「これが…」


未完成の機体で、失敗作の烙印を押されつつも形になった下半身は、基本的な形状はN型を踏襲しているが、その足先にはスキー板状の物が装着され、下腿部の側面には巨大なファンが左右それぞれ二基ずつ搭載されていた。


均整の取れた機体ではない。


完成された兵器の美しさもない。


歪。


一言で表すならそれが答えだろう。


エウレリアの説明通り、異様に肥大化した下半身とは違い、上半身はベース機の面影が非常に強く残っている。


だが、その不格好なまでの異形さが、カイルにはなぜか力強く見えた。


カイルは生唾を飲み込む。


正直、この軍においてエンヴィスにどれ程の派生型があるのか分からないが、それでもこの機体が特異である事は感じ取れる。


失敗作、不良品、何と呼ばれていても構わない。


これが…自らに与えられた新たな翼なのだと、カイルの拳には無意識に力が込められていた。


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