ep6-稚拙な翼③-
「疲れた〜。店員さん! 特製チョコレートパフェ、10個下さいな〜。」
商業区へ戻り、再び先程の店へ入るなり、ペゼリアは当然のように注文をした。
対応したのは先程と同じ店員であったが、流石に追加注文が来るとは思って無かったようで、笑顔の裏で口元が引きつっていた。
「ペゼリー、もうすぐ夕飯の時間っすよ?」
「いいよ〜、ウチの夕飯はこれで〜。」
「まったくもう……。」
シンディナが呆れたように肩を落とし、フレンツェラは気にした様子もなく、小さなパフェを注文していた。
一時の休暇を満喫し、各々の食事も佳境に差し掛かった頃、ふと思い出したようにシンディナが顔を上げた。
「そう言えば、配属は決まったっすか?」
「あ、はい。第一独立艦隊との事です。」
その言葉を聞いた瞬間、三人の表情がわずかに変わった。
「うわ~……よりによってそこか〜。」
ペゼリアが苦笑まじりに頬杖をつく。
「良くない所ですか?」
不安になったカイルが問い返すと、フレンツェラは首を横に振った。
「別に悪い所じゃない。変なだけ。」
「クセが強い人が多いんっすよ。」
シンディナも苦笑する。
それは安心していいのか、むしろ警戒すべきなのか、カイルには判断が難しかった。
「自分に合わないと思ったら、いつでも帰ってきていいからね〜。」
ペゼリアはそう言って、いつもの緩い笑顔を向ける。
冗談のような口調だったが、その言葉の奥にある優しさだけは、カイルにも分かった。
「ありがとうございます。」
カイルが頭を下げると、シンディナは軽く手を振った。
「さて、そろそろお開きにするっすかね。」
「ちょっと待って〜。店員さん〜、パフェ、テイクアウトで〜。」
「ペゼリー……また太るっすよ。全く……。」
シンディナの呆れた声に、フレンツェラが小さく頷く。
「ん、糖分過多。」
「え〜? 動けば消費するから大丈夫だよ〜。」
そんな何気ない会話を聞きながら、カイルは小さく笑った。
だがその時、ふとあるとこを思い出す。
「そう言えば、支払いってどうすればいいんでしょうか…お金持ってなくて…。」
「ん?大丈夫だよ〜。この街でのやりとりは全て監視…って言ったら聞こえは悪いけど、管理されてるからね〜。」
「該当する人のデータが全て記録されてる。その人がどこで何をしたのか。」
「だから、支払いはその人の口座から直接支払われるっす。カイル君も支給される給料から差し引かれるから、気にせず過ごせばいいっすよ!」
ニッと笑うシンディナを見て、カイルは複雑な笑みを浮かべるしかなかった。
かなり重要な事をサラッと言われた気がするが、これは聞き流して良いものなのだろうか…
けれど、目の前の三人はそれを当たり前のように受け入れている。
とは言え、覚えることは多い。
知らないことも多い。
これから向かう場所にも、不安しかない。
それでもこの街には、こうして笑い合える時間がある。
カイルは、その事実にほんの少しだけ救われた気がした。




