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TeX.Hacker  作者: 融暖
第1章
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13/29

ep3-TeX体④-

3人のエンヴィスは、後から追い付いた橄欖の整備スペースに、やっとの思いで収容された。


コックピットから降りたカイルは、先に降りていたシンディナとフレンツェラの2人に出迎えられる。



「チクショー!こんなボロボロにしやがってー!」


一息つく前に先ず耳に入ったのは、女性整備士の悲痛の叫び。

見下ろすと、その整備士を別の整備士達がなだめる姿が目に入る。



「おい!シンディ、フレン!何で新人1人守れないんだよ!ただでさえ、あんた達の機体の整備で徹夜だってのに!」


その整備士はこちらを見上げると、目尻に涙を浮かべて叫んだ。


どうやら怒りの矛先はコチラでは無いようだ。


「無茶言わないでほしいっす!自分達もいっぱいいっぱいだったんっすから!」

「シンディナが突撃しなければ、あるいは。」

「ちょっ!それは言っちゃ駄目っすよ!」


まるで漫才。

先程までの緊迫感は良い意味で無くなっていた。


それはカイルの顔に自然と笑顔を作るほどに。


「新人が機体を潰すのは当たり前だから、それはいいんだ。けどあんた達ならあわよくばと!」


くーっ、と叫びたいのを我慢している整備士だったが、他の整備士によって何とか抑えられているのだった。



『3人ともおかえり〜。怪我してない?』


館内放送で、ペゼリアの緩やかな声が流れる。

慌ただしく、殺伐とした格納庫に似つかわしく無いそれは、この場の空気を一変させる。


整備士達は各々の持ち場に戻り、シンディナは駆け足で壁側の通路にあるモニターに向かう。


「私は大丈夫っすよ!2人は?」


モニターの電源を入れると、内蔵されたマイクに呼びかけるシンディナ。

その下へ、カイルとフレンツェラも遅れて駆け付ける。


「ボクも大丈夫。」

「俺も大丈夫です。エンヴィスが守ってくれましたから。」


何とか笑顔で報告して、自身を助けてくれたエンヴィスに視線を送る。

自分の思っていたよりも、かなり損傷は多いようで、数人がかりで様々な損害箇所を確認している。


「右腕部は根元からセパレート。それ以外の部位は装甲だけだと思うけど、念の為中まで調べるよ!」


先程まで騒いでた整備士が、率先してチーム全体に的確な指示を出している。



ふと気付いた事だが、この格納庫に自分以外の男性の声が聞こえない。

その整備士を始めとし、周りの人達も全員が女性の様な気すらする。

それどころか、行く人来る人全て女性ではないか。

もしかすると、この艦の乗員は全てかも知れないと思うと、途端に恥ずかしさが込み上げ、顔が一気に熱くなる。



『何はともあれ、一息ついたらブリッジまでお願いね〜。』


そんなカイルを他所に、ペゼリアの通信が終了する。

どうやらシンディナとフレンツェラは、色々報告をしてくれていたみたいだ。


モニターが消えたのを確認し、2人はカイルに向き直る。


「ゴメンっす!ちゃんと守れなくて。」

「ごめんなさい。」


2人が、改めてカイルに頭を下げる。

自分が言うことを聞かなかった結果なのだから、とてもいたたまれない。


「ボクが油断していたから。もっと戦場全体を把握出来ていれば問題無かったはず。」

「頭を上げてくださいよ!ほら、俺はピンピンしてますから!」


とは言いつつも、視界の端に映るボロボロに傷付いたエンヴィスの姿が、カイルの心の底に深く刻まれていた。


その後、2人をなだめながらも真っ赤な顔を気取られぬように、重い空気を纏いつつ格納庫を後にする。


ブリッジに向かった3人が去った後には、工具の音と叫び声が響いていた。


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