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オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


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26. 時々、あったか蒸しパン




秋も深まり、ぐっと冷え込むようになってきた。

朝の空気を吸いながら、ファスは空を見上げる。今日は少し、雲が多い。お日様が出ていないと、より肌寒い気がする。


 「んにゃあー」


 「にゃむぅー」


 「おはよう、ソラ、オネム。早いね」


ひょこと出てきたオネムとソラ。今日も水遣りをする為に、早起きしたようだ。挨拶代わりの、ひとしきりスリスリ。それから撫でてもらい、水遣りへ。

ファスは笑顔で見送り、倉庫へと向かった。






ポツポツと降り出した雨は、昼になる頃には本格的になってしまった。

本日のパトロール隊、パクとはやてとダイチはその様子を眺めながら、間に合ってよかったと喉を鳴らし合う。


 「みんな、お疲れ様」


山は冷えるのが早い。暖炉には火が入れられ、巣は暖かくホッとする。タオルで優しく拭ってもらい、一休みだ。用意されてあった柔らかい毛布に移動し、パクたちは丸まった。


 「にゃーあぁ……」


 「うん、採ってきてくれてありがとう。やっておくから、ゆっくり休んで」


 「なうー…」


 「ぶに…」


優しく撫でていると、すぐに寝息に変わる。途中で降られ、それでもギリギリまでパトロール。採ったものを濡らさないようにと急ぎ足で、守りながら帰ってきたパクたち。毛皮は濡れてしまっていたが、カゴの中は無事だった。ファスは労いを込めてもうひと撫で。冷えないように火の調節をして、台所へ。


 「にぃ、にゃんにゃ」


 「あ、ありがとうしらゆき。わ、むかごがこんなに、きのこも……頑張ってくれたんだ」


小さなカゴには、パトロール隊の頑張りが詰まっていた。今日はこれを夕飯にしよう、と優しく洗う。

何にしようかな、とファスは食材を眺める。外は雨、夜はいつもより冷えるかもしれない。


 「ねぇしらゆき、オネムもソラも、何か食べたいのはある?」


 「にー、にぃに」


 「にゃむ、にゃむむぅ」


 「んにゃあ、にゃあ」


 「あったかくてホカホカするもの……あ、今日は蒸し料理にしようか」


にゃあ!としらゆきたちは嬉しそうな返事。ファスはニコリと笑い、きのこの水気を取り野菜を準備していく。お米も、と手を伸ばし……ふと止まった。そうだ、と小麦粉を手に取る。


 「にー?」


 「材料は……、うん、大丈夫。えっとね、蒸しパンを作ってみようと思うんだけど、いいかな」


蒸しパン。いつものパンよりふわふわで柔らかいものらしい。食べた事がないしらゆきたちは、新しいものにピンと尻尾を立てる。


 「よかった、じゃあ……え?」


しらゆきたちは手袋をつけ、いそいそとボウルを準備。手伝ってくれるようだ。


 「ありがとう、みんなで作ろうか。先に蒸しパンを作ってから、野菜ときのこを蒸して…むかごは素揚げにしよう」


 「んにゃ!」


 「にゃむー!」


蒸しパンの材料は、小麦粉と重曹、花蜜に塩を少し、卵に油と手際良く計り終える。


 「これをまずは卵から…」


しらゆきたちは混ぜ係だ。一つ一つ追加されていく材料を、丁寧に滑らかになるよう、せっせと動かす。

交代しながらしっかり混ぜ合わせると、次は木べらに持ち替えて粉をゆっくり入れていく。

普段からファスのやり方を見ているしらゆきたち、すぐにコツを掴んだようだ。器用に生地を作り終えると、次は器に入れる作業。均等に分けなくてはならない。


 「ここに紙型を入れて、生地を……ここまで入れる。やってみる?」


 「に!」


しらゆきはおたまを受け取り、そっと生地を掬い、器に流し入れる。とても真剣な顔だ。オネムとソラ、ファスもジッと見守っている。

一つ一つ、丁寧に……。しらゆきは最後の一つまで、無事に入れる事ができた。

ボウルにおたまをそっと置くと、しらゆきはファスを見上げる。


 「すごく上手!綺麗に入れてくれてありがとう、しらゆき!」


オネムとソラも、思わず拍手。しらゆきはででんと胸を張った。

余った生地は、大きめの器に入れて一緒に蒸す事に。その間に、ファスは野菜を切っておく。出来上がりを楽しみに、うきうきとむかごを洗うしらゆきたち。

水が澄んだままなのを確認し、ざるに移して水切り。それから、使い終わったボウルなどを洗っていく。働き者の魔猫たちだ。


 「そろそろいいかな…」


フタを開け、串を通して出来を確認。ファスは頷くと、器を取り出していく。まんまるの期待の目に、まだ熱いから待ってねと声を掛け、次は野菜を蒸し始めた。

ふんわり、ほんのりとした甘い匂いに鼻をヒクヒク動かしていると、眠っていたパクたちも気付いたようだ。ぎゅうう、と体を伸ばし台所へやってくる。ファスへのスリスリも忘れない。


 「もう少しでできるから待っててね。あとはむかごを揚げるだけ」


 「にゃーあ」


揚げ物をする時は、危ないからといつも台所から出される。六匹はテーブルセッティングすべく、ぞろぞろと離れていった。テーブルを拭き、お皿を並べ、いつもの薬草茶を入れていく。

今日は蒸しパンっていうのだよと教えられ、生地を作ったと胸を張るしらゆきたちに、パクたちは惜しみない拍手を贈った。新しいパンにも期待が高まる。


 「お待たせ、できたよ。今日もありがとう」


運ばれてきたホカホカ蒸し料理に、歓声が上がる。蒸しパンは一つずつ。とても柔らかそうだ。最後に、むかごが運ばれてくると、みんなでいただきます。


 「まだ熱いかも、気を付けてね」


パクたちは頷くと、蒸しパンを手に取る。器用に紙を剥がし、ぽくりと半分に割った。ふんわりと湯気が上がり、その優しい匂いにまんまるの目が輝く。ふうふうと冷まし、はむとかじりつく。

ふわふわモフモフの柔らかさに、ほんのりな甘さ。おいしい。

全員の尻尾がピンと立ち、にゃあにゃあと食べ進めていく。ファスはその様子に微笑みながら、温かい蒸しパンを口に入れる。滑らかな生地、しらゆきたちが頑張ってくれた御蔭で、おいしいものを作る事ができた。


 「おいしいね」


 「にゃん、にゃんにゃあ!」


 「うん、また作ってみよう。次は、ドライフルーツを入れて、おやつにしてみようか」


にゃああぁ!と歓声が上がる。冷えてくると、あったかいおやつが欲しくなる。

また、みんなで作って食べよう。カイ達も一緒に。

外は雨。これからゆっくりと冷えていき、冬がやって来る。それまでにやる事はたくさんある。

でも、こうしてパクたちと一緒だとなんでも楽しい。

にゃあにゃあ賑やかないつもの食卓に、ファスは幸せそうに微笑んだ。






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