↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/27

23. 時々、豊穣の地で




 「わぁ……!」


 「にゃーあ!」


ファスとパクたちの目の前に広がるは、色とりどりの落ち葉の絨毯。カサカサはらり、とゆっくり降ってくる。吹く風はひやりとしているが、日差しは暖かいので丁度いいくらいだ。

パクたちはカサカサと音を立て、落ち葉で遊んでいる。普段は音を立てないようにしているので、新鮮で面白いようだ。ふみふみと踏んだり、大きな落ち葉やどんぐりを拾ったりと楽しそう。

ファスはそんな家族を、優しい笑顔で見守っていた。


 「んにゃ!」


 「にゃむむ!」


オネムとソラが木の根元を指している。きのこが生えていた。大きくて立派なそれが、ぽつぽつと周りにも。ふたりは真剣に匂いを嗅ぎ、毒はないかと調べている。


 「にゃむ!」


 「じゃあ、少しもらおうか」


大丈夫なようだ。ファスは持ってきていたカゴを出し、食べられる量だけ採っていく。

今年の冬も、カイのアパートにお邪魔する予定だ。なので少しだけ、いつもより多めに。早速、いろんなきのこが手に入り、みんなで運んでいく。


 「な!なーう……?」


 「あ、栗だ、ね……?」


はやてが見付けたは、イガを纏った栗。地面にいくつも転がっているが……足の踏み場がないとはこの事か、奥には入れそうにない。無理に進んだら、イガのトゲが刺さってしまう。なんだか此処だけ攻撃力が高いな、とパクたちは少し警戒。


 「前は、こんなになかったけど……。あ、危ないから届く所だけにしようか」


 「にー……にゃ!」


それでも栗はおいしいと知っているので、パクたちは力を合わせて拾い始める。器用にイガを避け、コロコロと中身を取り出していく。その間もどんどん落ちてきて、危うくぶつかりそうになったしらゆきを、ファスが抱っこで守ったり。あっという間に、カゴはいっぱいだ。まだまだたくさんあるが、運べる分だけと決めているのでその場を後にした。


 「しらゆき、大丈夫?」


 「にぃ!にゃんにゃ」


収穫したものを纏めている木の下で、休憩がてらみんなの怪我の有無を確認。大丈夫なようだ。

ファスはお茶を配り、秋の景色を見渡す。


 「御方サマ、何処に行ったんだろうね…」


 「にゃあ、にゃー」


此処は、以前連れてきてもらった、豊穣の土地だ。ずっと秋のまま、季節は巡らず時が止められたままの不思議な土地。御方サマの縄張り内なので、魔物はおらずのんびり過ごせる。

けれど、慣れていない土地であるので、以前通った道筋を大きく外れる事はしない。御方サマが戻ってくるまで、動ける範囲で収穫させてもらっていた。それでも、一冬充分越せる量がある。


 「ぶにゃにゃ、にゃー」


 「味見してみる?ちょっと待ってね……」


ダイチが持ってきた大きな梨を切り分け、みんなに配る。とても甘くて、瑞々しい。満足気なゴロゴロを聞きながら、何か簡単なものを作ろうかと思案するファスだった。






一方その頃。

御方サマは、目の前で落ち込む少女に威圧をぶつけていた。御方サマの方が小さいのだが、そこは一族の頂点に立つ災害級の長。体の大きさなど些末であった。


 「やりすぎじゃというたであろう」


 「良かれと思ってぇ……」


 「なんじゃこのサマは!すずなりにもほどがある!」


 「だって、たくさんあればある程、喜ぶではないかぁ。これだけあれば、いくらでも冬は越えられよう?飢える心配はないし、凍える事もなかろうと思ってぇ」


 「みてみよ」


びし、と御方サマが指した先には、きゃっきゃモフモフと仲良くしている微笑ましい家族たち。

少女は笑顔になった。しかし、彼らは何やら真剣に話し合っている。


 「にゃー、にゃあにゃにゃ…」


 「な、なうー…」


 「そうだよね…なんだかおかしい。食べられるし、おいしいんだけど……ここまで実ってるのは、あ、だから御方サマ、見回ってるのかも。異常事態が起こってるのかな」


 「ぶにゃにゃー」


六匹と一人は、警戒するように辺りを見回している。

思っていたのとは違う反応に、少女は固まった。


 「何故じゃ?!」


 「するにきまっておろう。このじょうたいは、いくらほうじょうのちとはいえ、いじょうじゃ」


 「誤解じゃ!喜ぶと思うたのじゃ!楽しく収穫してくれればそれで、あの子らが飢えぬようにとぉぉぉ…」


 「おぬしはいつもそうやって、からまわりするのぅ。いぜんのしっぱいから、なにもまなばなんだか」


ぬおぉぉぉぉ……!!

と、地面に頽れ、泣き荒ぶ少女。彼女こそ、かつてこの地に恵みを与えていたカミサマである。

人間と共存していたが、限りの無い人間の欲に振り回され、挙句に悪と決めつけられ討伐された過去。しかし、去年のお月見にファスとパクたちが豊穣の感謝と祈りを捧げた折、その純粋で温かい心に感激感動し驚異の復活を遂げたのだ。


 「やりすぎなのじゃ」


 「足りぬのじゃ!わらわの気持ちを、あの喜びの高鳴りを伝えるにはまだ足りぬのじゃぁぁ…」


 「やめろというのに。よいか、おぬしはそのきもちの、はんぶんのひょうげんでよい。それであれば、あやつらもけいかいせず、たのしむであろう」


 「はっ半分?!……分かった、あの子らが喜ぶのであれば…」


落ち込みながらも頷くカミサマに、御方サマはやれやれと息を吐く。


 「わらわはもどる。ふあんであろうからな」


 「うむ!今度は抑えるぞ!」








 「にゃ?!」


 「は、畑?!畑が広がってる……!」


 「にぃ!にゃんにゃにゃ??!」


 「お、御方サマ、もしかして人が入ってきているんですか??」


 「……。……すこし、まっておれ。あ、ニンゲンはおらぬぞ。そこはあんしんしてよい」


以前、草地であったそこはすっかり整備され、広大な畑が。奥には田んぼがあるのか、垂れた稲穂が揺れている。

それはそれでいい景色なのだが、ファスとパクたちは圧倒されるばかり。警戒度が上がり、全員森の中に避難。じぃ、と気配を消して窺っていた。







 「はんぶんというたであろう!!」


 「良かれと思ってぇぇぇ」


 「しかもなぜ、かいこんしておる??!」


 「わらわが手ずからに育てた野菜たちならば、あの子らも喜ぶかとぉぉぉ」


 「ちかづいてもおらんだろう!!やたらとけいかいさせるでないわ!!」


 「本当じゃぁぁぁ、全然楽しんでくれておらぬぅぅぅ……!」


……豊穣のカミサマの愛は、見事に空回っていた。







 「あ、御方サマ…」


 「にゃーあ?」


 「しんぱいかけたの。あれは、わらわのけんぞくがやったことであったわ」


目を丸くするファスたちに、農業に興味を持ったから作ったらしいと説明しておく。


 「おぬしらなら、とってもよいぞ。こんなにあるのだから、えんりょするな」


 「い、いいんですか?」


 「よいよい。ほれ、はようこいこい」


手招きされ、ファスもパクたちも恐る恐る近付いていく。人里に行かないと見られない畑の様子に、パクたちはすぐに興味津々、匂いを嗅ぎながら歩き回る。


 「んにゃー……!」


 「うん、凄く立派なかぼちゃだね……!あ、向こうはお豆もある。あれは、秋ナスかな」


 「ぶにゃ、ぶにゃにゃあ」


 「ホントだ。これおいもの葉っぱだ」


慣れてきたか、全員の顔がいきいきワクワクしている。もう一度御方サマに確認すると、にゃあにゃあと収穫を始めた。初めての畑体験に、目が輝いている。爪や魔法を駆使し、毛皮を土まみれにしながら。とても、楽しそうに。

うんうんと頷きながら眺める御方サマ。ふと森の方角を見れば、カミサマが大粒の涙を流しながらお祈りポーズをしていた。

ようやく見れた姿だ、余程嬉しかったのだろう。


 「御方サマ、こんなに穫れました!ありがとうございます…!」


頬を赤く染めて、ファスも楽しそうにカゴの野菜たちを見せてくる。


 「これで、今から何か作ってみてもいいですか?」


 「おぉ、いいのぅ!」


 「簡単ですが、焼き野菜に。きのこも使いましょうか。塩やハーブソースは持ってきてますから……」





……手伝ってもらいながらできた焼き野菜はとてもおいしく、秋の味覚をその場で味わえたパクたちはとても満足気。御方サマも、お茶を手にお腹をさすっている。

よかった、と微笑み片付けるファスは、改めて目の前に広がる畑を眺めた。

もしかしたら、この土地のカミサマが、戻ってきてるのかもしれない。

カミサマが戻った喜びが、実りとなっていたのかも。


 「…そうだと、いいなぁ」


 「にゃ?」


 「うん、今年もこんなに穫れて、嬉しくて」


 「にゃあ!」


ファスとパクたちはそっと祈る。

…恵みに感謝を、生かしてくれる事に感謝を。


 「ありがとうございます……」


 「にゃにゃ、にゃあおう」


静かに祈る姿を、御方サマも静かに眺める。


 「……」


その後ろの森に、喜び溢れ盛大に泣く恵みの根源が居るとは、最後まで言わなかったのである。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。