↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/22

21. 時々、残暑お見舞い申し上げます




王都の夏は、今年も厳しい。

影作りの範囲を広げ、魔法も駆使して冷やすものの、太陽の力は人間の努力を軽々超えていく。本日も暑い。

朝から広がる眩しい青空を横目に、一仕事終えたシドは部屋を出る。レオたちの様子を見に行く為である。

魔猫たちは暑過ぎるのも苦手だと聞いているので、夏場や冬場は訪れる頻度が自然と増えてしまう。巣は、レオたちの要望やファスの意見も取り入れ、快適に過ごせるよう整えているつもりだが…。昨日は風が無かったのが気に掛かる。

一応ノックし、戸を開ける。


 「全員、起きて、る……」


シドの目に飛び込んできたのは、床のあちこちに倒れているレオたちの姿だった。







 「全く、脅かさないでくれ……」


 「にゃい、にゃい」


とにもかくにも、水分補給。シドは手早く薬草茶を沸かし、普段より冷やした温度で配った。

全員が飛びつくように飲んでいるので、作り置きをしておくべきだなと再び沸かす。

昨夜はやはり、風もなく熱気が居座り、レオたちは中々眠れなかったらしい。お気に入りのベッドも暑く、それぞれ涼しい場所を求めて移動していた。明け方近くに風が出てきて床も冷え、あの姿だったという訳だ。


 「ファスが居れば、すぐにお前たちにもご飯を作ってくれるんだろうけど…」


生憎、パクたちと共に薬草群生地へ移動している。あるのは日持ちするおやつだけだが、それも残り少なくなっている。レオたちにカゴの中を見せ、それぞれ一つずつ食べたいものを選ばせた。

喜々と食べているので、全員食欲はあるようだ。それでも一応、シドはひとりひとり確認していく。弱った時の対処法は聞いているが、処置は早い方がいい。

レオたちも嫌がる事なく、実に大人しく診察されている。


 「…動き辛い事はないかい?喉がやたらと乾くとか」


揃って首を振った。魔素をしっかり取り入れて、元気いっぱいになったようだ。


 「今日は念の為、休みにしよう。眠れていないのなら、無理は禁物だ」


 「にゃ、」


 「にににっ、みみぃっ」


今日は外で魔法修行をする予定であった。先生に成長を見てもらえる機会、楽しみにしていたレオたちは元気だと必死に訴えるが、


 「駄目だ。寝不足を甘く見るな」


取り付く島もなく、両断されてしまった。心配してくれての事だとは分かっているが、しおしおと落ち込むモフ弟子たち。


 「何もするなとは言ってないよ、予定を入れ替えるだけだ。しばらく暑い日は続きそうだから、庭に出る時間を短縮しよう。その分、中でできる事をやればいい。涼しい日は修行時間も多く取るし…。僕もできる限り側についているつもりだけど、水分補給はちゃんとしなさい。いいね?」


ぴしっと整列し、返事はするものの、まだしゅんとしている。そういえば、とシドは思い出した。ここ数ヶ月、仕事が立て込んで魔法修行に立ち会えていなかったのだ。うららが代理で入り、騒がしくとも彼女は大魔導候補。的確に助言もできるので、安心して任せていた。

今日はレオたちにとっては、久しぶりに先生に見てもらえる日であった。


 『レオたち、シドさんに見てもらうんだって張り切って練習してたんですよ』


ファスに預けた日は、その日の様子を教えてくれるので、時間を作ったりしていたのだが…。シドは眉間を押さえた。

正直、失念していた。忙しさにかまけて、レオたちをちゃんと見れていなかった。

モフ弟子たちも、魔研の慌ただしい様子で分かっているので、何も言わないのだ。


 「うー……ん、僕もまだまだだな」


 「にゃい?」


お詫びも込めて、モフ弟子を優しく撫でる大魔導。


 「今日は僕も、此処に居ていいかい?お前たちは油断すると、休まず本を読み続けるからね」


輝く五対のまんまるの目に、シドは笑った。






……巣は静かだ。ペンを走らせる音が、大きく聞こえる程に。

レオたちはすやすやと、柔らかい敷物の上で眠っている。うきうきと本を読み、質問などもしていたのだが、やはり眠気が勝ったらしい。

その中に、水色の狼が混じっていた。シドが作り出した、魔法生物だ。狼が出す冷気が丁度いいらしく、五匹は囲むようにごろんと転がっている。

風がある内は涼しかったのだが、無風になると、じりじりと熱気が迫ってくるのだ。冷却魔道具では冷やし過ぎてしまう可能性があるし、レオたちがうっかり触って誤作動が起きたら大変だ。

と、色々悩んだ結果、こうなったのである。

戦闘時の巨大な姿だとレオたちが怯え、凍えてしまいそうになったので、大型犬の姿にて落ち着いた。狼も満更ではないらしく、仲良く挨拶を終えると、張り切って冷却の役目を全うしている。仲良くしたかったらしい、尻尾が揺れている。

それを観察していたシド、魔法生物にも気持ちがあるのかと今更ながら気付いた。基本、戦闘時にしか出さない上、命令を完遂したら消えるので。

こういった使い方は、レオたちがいなければずっとやらないままだっただろう。


 「……お前たちには、色々教えられてしまうな」


大魔導となり、多くの魔法は理解し分かっていたつもりだったが。魔猫たちと関わり、観察するようになってからは、自由で柔軟な発想に感心させられてばかりだ。

何より、魔法は楽しい、学ぶ事は楽しいと全身で、輝く目で教えられるのだ。その姿は、研究員達にも刺さるらしく。

初心を思い出したとか、眩しくて涙が出たとか、挫折しかけた研究をまたやってみようと思ったとか、あの純粋だった時代に戻りたい泣くとか。様々な感想が呟かれている。

なんにせよ、レオたちの存在は周囲を前向きにするようだ。いい事である。

気持ち良さそうに眠るレオたちを眺めていると、狼と目が合った。ふり、と尻尾が揺れる。


 「君が居れば、安心だ。もう少しで終わるから、それまで頼むよ」


 「ばうっ」


ふりふりと尻尾を揺らし、狼は満足気に座り直す。

こうして声を掛けるのも、あるか無いかだったなと気付く。これからは積極的に話し掛けていこうと決め、シドは仕事に戻った。







 「こんにち、うはぁうっっ……!!も、モフモフの楽園だあぁぁ」


 「がるるるる」


 「なんでっっ?!」


 「…レオたちの眠りを守るように命じているから、お前は妨げる者と判断されたんだろう」


 「がるるるるるる」


 「なんでぇぇっっ?!」








改めまして、この場を借りて残暑お見舞い申し上げます。

毎日暑いですが、皆さん無理せず休み休み、体を労わって乗り切りましょう…。

因みに、水色狼は同じサイズだと五匹の体温で弱るので、大型サイズが程良いそうです。シェパード犬をイメージしていただければと…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。