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オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


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20/22

20. 時々、暑中お見舞い申し上げます




ちゃぷちゃぷにゃあにゃあ。

パクたちは川に入り、ちゃっぷちゃぷと暑気払い中。時折、水を跳ねさせて走り回る。楽しそうだ。

川と言っても浅く、流れも緩やかな小さな川。うっかり流されてしまう心配はないので、ファスは木陰にて座って見守っていた。


 「にゃむにゃー」


 「なー、にゃっ」


オネムが作った水球を、はやてが器用にぽんと打ち上げる。ダイチはぽむ、と頭でパス。ソラが受け止めようとしたが、パンっと弾けてびしょ濡れに。


 「んにゃあー……」


ふるふると体を震わせ、水を飛ばすソラに、パクとしらゆきが大丈夫?と窺っている。

比較的涼しい土地である、薬草群生地。けれど昨夜は風もなく、夜になっても熱気が居座っていた。熱帯夜というものである。

パクたちも流石に暑かった。あちこちに移動し、椅子やテーブルの上、窓際や床、と各々涼しい場所でころんと寝転んでいた。ファスも眠れず何度も寝返り。全員、寝不足だ。

ファスはみんなに休んでもらおうと、今日はこうして涼しい場所でささやかなピクニック。ごはんを食べてひと眠りしたパクたちは、すっかり元気に水遊び中だ。時折吹く風は気持ち良く、ファスはうつらうつらと舟を漕ぐ。寝不足と、日々の疲れもあったのだろう。ファスは柔らかい敷物の上に、こてんと身を横たえてしまった。珍しい事だ。


 「にゃっ」


すぐに気付いたパクたちは、慌ててファスの元へ。眠っているだけだと分かり、ホッと一安心だ。


 「にゃあ、にゃにゃ」


 「にぃ、にゃん」


パクはカゴからタオルを引っ張り出し、器用に手足を拭く。しらゆきもだ。ふたりは、ファスの側についておく事にしたようだ。御方サマの縄張りで、守り神がついているから安全だとしても、警戒は怠らない魔猫たちである。

交代制と決め、次ははやてとダイチ、その次はオネムとソラ。順繰りに暑気払いをする事数時間…。


 「ぶにゃにゃー…」


 「んーにゃあ」


 「にゃむむー」


 「なうー」


遊びきったパクたち全員、満足気な顔でお互いを拭いていた。少しお腹すいたな、とカゴを見る。そこにおやつがあると、パクたちは知っている。


 「にゃむー、にゃむー」


 「んにゃ、んにゃー」


食べたいオネムとソラが、眠るファスを揺り動かす。幸いすぐに目を開け、ぼんやりとしながら身を起こした。起きた!とみんなでスリスリすると、ファスは微笑みながら撫でてくれる。


 「おはよう…。ごめんね、寝ちゃってたんだ……。みんな、何もなかった?」


 「にゃーにゃ。にゃあ、にゃー」


 「にぃにぃ」


 「よかった…、たくさん遊べたんだね。そうだ、お茶飲もうか」


ファスはいそいそと顔を洗い、スッキリとした顔でおやつの準備を始めた。ひと眠りして元気になったようだ。まずは全員、水分補給。今日のおやつはうめの甘露煮。そして、


 「これ、作ってみたんだ。クラッカーっていうんだって」


 「にゃ?」


クッキーより薄い。カリカリしていて、塩気がある。パクがカリカリと食べていると、オネムの目が輝く。


 「これにね、うめジャムをのせて……はい、どうぞ」


パクは頷き、カリッと一口。クラッカーの塩気とジャムの甘酸っぱさが広がる。


 「にゃああぁぁぁぁ……!」


 「にゃむ、にゃむむ!」


パクの反応で分かったのだろう、おいしいと。カリカリ好きなオネム、珍しくみんなより先に前に出る。ファスは何もつけていないのと、ジャムをつけたものをお皿に入れて、まずはオネムへ。そして、みんなに配った。

全員の尻尾がピンと立っている。気に入ってくれたようだ。

さっぱりしたお菓子はないだろうかと探し、見付けたクラッカーのレシピ。乗せるものによっておつまみにもできるようなので、御方サマと守り神様にも作ってみよう、とファスは頷く。きっとパクたちも食べる筈だ。


 「そうだ、戻ったらカイ達にも…。気に入ってくれるといいな」


 「にゃあ、にゃにゃあ!」


 「んにゃにゃ、にゃ!」


まんまるの輝いた目でおかわりを求める家族に、ファスはカゴから甘露煮と山盛りクラッカーを取り出した。

にゃあにゃあと歓声が上がる。今年の夏も、全員元気に過ごせそうである。




……今日のお供えはあの、『くらっかー』なるものか。

守り神は夕飯時を楽しみに、わさわさと木々を揺らしていた。










 「……」


 「……」


 「……気持ちは分かるが、依頼を聞く時ぐらいは起きろ。寝そべるな」


 「あ、うん。いいんだよトオヤ君…。こうして出てきて、聞きに来てくれただけでも。受ける受けないは別の話だろうし……」


王都の別次元の暑さ、極度の癒し不足、おいしいもの不足、完全な嫁不足。

異様な程の不足が重なり、カイとうららはソファに寝そべっていた。何処から見ても完全なる無気力。いっそ清々しい。立っているのはトオヤと、執務室の主であるアレクの二人であった。


 「それで…どお、トオヤ君。この依頼」


 「……『南地区で魔物活性化。至急、Cランク以上の冒険者募る』」


聞いてはいるだろうが、二人はピクリとも動かない。


 「南地区には確か…暑い気候の土地にしか生えない薬草があったな。以前、中々採りに行けないと全員落ち込んでいたか。ついでだ、土産でそれも採っておく、」


 「よーし!!どれだ?どの薬草だ?!」


 「師匠から保存できる入れ物借りてくるよ!!」


 「受けるようです」


 「ありがとうトオヤ君!!!」


俄然、やる気に満ち溢れた二人は、夏の暑さにも負けず立ち上がる。

アレクは、高ランク依頼を片付けられると泣きながら、トオヤの手を掴んでブンブン振った。やはりSランクパーティを動かすには、冷静な男を挟むのが効果的なようである。

王都は今年も暑いが、冒険者三人組は秋の再会を楽しみに、なんとか乗り切れそうだった。







改めまして、この場を借りて暑中お見舞い申し上げます。

外へ出れば熱気と湿気、えげつねぇ暑さにも負けずに戦っている皆さんへ。少しでも癒し……と感じてくれれば幸いです。

体調に気を付けて、お過ごしください


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