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オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


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17/20

17. 時々、試験準備




庭に柿の木があるのを見付けたレオたちは、興味津々と見上げ観察する。


 「なー、なおう」


かきがするりと登り、まだ青く、小さな柿の実を指した。大きな葉に埋もれて分かり辛いが、確かにこれは、柿だ。落葉高木だというが、庭にあるのはそこまでではなく、レオたち全員、楽々登って到達できる高さしかない。


 「みにゃ、みにゃにゃ」


恐らく、周りの木々に遮られ気味になっていたのだろう。柿の木の周りは、どれも高木だ。

けれどいい事もある。レオたちは顔を見合わせ、喉を鳴らした。

この高さなら、自分たちでも採れるからだ。これは秋の楽しみに取っておいて、まだ柔らかい葉を選んで摘んでいく。プチプチとカゴ分だけもらうと、レオたちは一旦巣へ戻る。


 「ににっ、み、にににっ」


 「……にゃ、」


庭で見付けた薬草たちを、全員で優しく洗い、日当たりがいい場所にて乾かしておく。飛ばされないように、風向きにも気を付けて。


 「にゃい、にゃいにゃい」


今日は庭先で勉強だ。時折乾燥具合を確かめながら、レオたちは薬草学の本を読み込む。傍らに図鑑を広げ、花や葉の形、効能も確認。必要な材料も確かめる。


 「……にゃ、にゃあ、……にゃー」


 「にゃいにゃ、にゃい」


今レオたちは、魔法と共に、薬草学も学んでいる。薬も作ってみたいのだが…。

魔研にも、充分な薬作り環境が整っている。しかし、レオたちにとって居心地がいいかは別問題。

一度見学で、シドと見て回った事がある。爽やかな薬草の匂いが溢れ、ここなら大丈夫かと思われたが、どうにもしっくりこず、落ち着かなかったレオたち。結局、少しの薬草をもらって帰った。

ならば巣で……と考えたが、器具を借りに行かねばならないし、しかし今あるモノはレオたちには使い辛い。割ったり壊したりしてしまったら、他の職員が困ってしまうだろう。

なので今は、本格的に作る事はできず、材料集めや保存法、加工の途中までを実践していた。

でもやはり、作ってみたい。レオたちは基本の作り方が書かれているページを開く。パクたちが使っているような器具があればなぁ、と呟くクリームに、トバリが頷く。何度か手伝った事があるが、パクたちが愛用している器具は、レオたちにも使いやすく重さも丁度よかった。


 「戻ってたのか。どうだい、集まった?」


 「なお!」


 「みにゃにゃ!」


様子を見に来たシドに、尻尾をピンと立てて成果を見せる。魔研の庭にも、自生する薬草がある。裏山ほど豊富ではないが、基本の薬を作るには充分だ。別の場所には、職員が育てている薬草もある。


 「これは…、柿の葉?」


 「みみっ、ににぃ」


身振り手振りで、柿の木があった方向を指すクリームに、シドは思い出したように頷いた。


 「そういえば、お前たちが来る前にも職員が言ってたな。確か、渋柿だ」


試しに食べた職員達が、物凄い顔になっていた。けれど栄養豊富で薬にもなるので、伐らずにそのままにしておいたのだ。レオたちは顔を見合わせる。

渋柿を甘くする方法なら、ファスが知っている。前に食べさせてもらった干し柿だ。これは、ますます秋が楽しみになった。探せば、他にも何かあるかもしれない。


 「…うん、材料も合っているし、保存も適切。あとは実践だね」


 「にゃ、にゃい」


 「ファスとパクたちに頼んできたよ。向こうでなら、気負いなく作れるだろう?」


レオたちの目が輝いた。ただし、と続き、ぴしりと並ぶ。


 「お前たちだけで作る事。パクたちの手助けは禁止だ。そうでないと、試験の意味が無いからね。もし手を借りたと分かった時は……」


レオたちは固唾を吞んで、シドを見上げる。


 「図書室の出入りを禁ずる。ひと月」


厳しい……!!レオたちは揃って固まった。勿論、不正などする気はない。自分から信頼を落とすような真似はするつもりもない。


 「まぁ、試験だと伝えているから、大丈夫だろう。何か訊きたい事は?」


 「にゃい、にゃいにゃ?にゃいぃ」


レオは代表で挙手。時間制限はあるのか、使っていいのは自分たちが採取した薬草だけか、作るのはどの薬かと、身振り手振りも駆使して質問する。

だいぶ意思疎通できるようになったが、まだまだファスのようにはいかないのだ。シドはレオたちの目線や動きからも読み取り、答えていく。


 「作るのは、基本の傷薬に毒消しと麻痺消しの三つ。制限時間は、薬師試験の時間を採用する。二時間半だ。ファスにこの時計を預けておくよ、きっちり二時間半後に鳴るように設定しておいた。それで……薬草は此方で用意したものを持っていく。お前たちの目利きも、合否に入っているからね」


レオたちは薬効、毒の有無を嗅ぎ分けられる。それはシドも承知している筈。

という事は、薬加工に向かない薬草を、態と紛れ込ませているのだ。レオたちは顔を見合わせた。

手伝いでやった事があるとはいえ、まだ経験が足りない。


 「にゃいにゃ、にゃー?」


 「向こうも都合があるからね。試験は二週間後だ」


 「……にゃ、にゃにゃ、にゃあ…」


 「いや、裏山に行くのは試験が終わるまでは禁止。ここにある、お前たちが採った薬草で勉強しなさい。そうだな……試験勉強の間だけは、多めの本の持ち出しを許可しよう。ただし、薬草学に限りだ」


レオたちの目が輝く。いつもは、ひとり一冊までなのだ。図書室は他の職員も利用する為だ。

それでも毎回五冊、交換しながら心行くまで読めるので、満足していたが……初めてそれ以上の許可が下りた。


 「にににっ、みっみみっ」


 「なーな、なおなおなー」


 「みにゃにゃにゃっ」


気が早いクリームにかきとくりは、もう図書室へ向かおうとしている。レオとトバリは、シドを窺うように見上げた。止める理由はない、熱心なのはいい事だ。いっておいでと促すと、全員尻尾を立てて走っていった。

それを見送り、シドは薬草の具合を確かめる。


 「…うん、よくできている。専用の器具さえあれば、すぐに作れるようになるだろうな」


レオたちが使いやすい器具を作るにあたり、ファスに意見を求め、そしてパクたちが使う器具も見せてもらった。それを参考に、注文しておくつもりだ。

無事、合格祝いの品になるか。シドは先を楽しみに、モフ弟子たちの後を追った。




……自力では運べないくらいの本を持っていこうとするレオたちを、必死に止める司書達の姿があったとか。







久しぶりに、本編にお話を上げようとしております。

六月のどこかで更新できると思いますので、気長にお待ちください……。

梅雨のジメジメムシムシなんて、もふもふで吹っ飛ばそう。な、お話です



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