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白銀の花は不老に咲く  作者: 季原若草


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第9話 屋敷で生活するために

 アマリリスが治癒のため、マレインの部屋にノックをして入る。前回の治癒から、結局マレインと会う機会が無かった。

 アマリリスは、屋敷で生活するために必要な事は山ほどあった。持ってきた荷物を部屋にしまって終わりでない。


 奥方達の挨拶から翌日。まず始めに、ファルがアマリリスに足りない衣服は無いか聞き取りをした。アマリリスが遠慮したため、クローゼットを漁ると、持っていた服は古く下着が少なかったため、馬車に乗って2人で買い物に行き一日が終わった。

  

 2日目。エメルトが、作ったテストを持ってきた。読み書き計算の数枚のテストを終えて、力尽きたアマリリスは机に突っ伏した。

 エメルトは、テストを採点し終わると、家庭教師のように付きっきりで、間違えた問題を全て教えて一日勉強会となった。

 

 3日目。勉強疲れでぐったりするアマリリスの部屋に、シオリと侍女のディハニヒが訪れた。シオリが、作った桜良語のテストを受けたが、勉強会は無かった。ディハニヒがコップに、注いだジュースで喉を潤してアマリリスは回復する。

失礼しますと、シオリに頭を下げると終わった終わったと、カルミアの部屋に晴れやかな気持ちで遊びに行こうとしたが「まだ終わってない」とシオリに肩を掴まれて止められた。アマリリスはヴァイオレット家の使用人のため、賃金について説明。ハウスメイドがアマリリスの部屋を、掃除する時間を教えてくれた。


 昼食後。趣味の乗馬から帰ってきたティートリーが、シオリを連れて部屋に入ってきた。ムッとするシオリの隣で使用人としての心構えを説き、アマリリスはうわの空だった。怒涛の1週間はこうして過ぎていった。


 

 ベッドで、久しぶりにアマリリスに会えたのかマレインはソワソワしていた。アマリリスは、マレインがいつもとは少し違う違和感に気づく。 


「マレインちゃん、その緑の玉はなに?」


 マレインの長く細い横髪を翡翠の玉で結ばれている。


「桜良国の翡翠で、魔除けでつけたのよ。前につけようとしたけど、どーせ死ぬから意味ないといじけて髪の毛触らせてくれなかったのに、友達ができたおかげね」

「母さん。俺の昔の話をわざわざアマリリスちゃんに話さないでくれ」


 シオリはぶっきらぼうに理由を答えて、マレインはみっともない話を暴露するなと反論する。


「マレインちゃん似合うよ」


 アマリリスに褒められてマレインはデレデレとした態度にシオリは「単純なやつ」と、ボソッと呟いた。 

 アマリリスは、治癒を終えてマレインの部屋から出て行った。


「母さん。アマリリスちゃんはもう勉強もテストもやらなくて済むとニコニコしていたけど、家庭教師つけるんでしょ?」

「2人つけるわ。エメルトが家庭教師役して勉強したから終わりと思っているわね。計算が苦手で、桜良語の漢字は全然書けないし。へんとつくりの意味は全く分かってない。」

「男の家庭教師はつけないで」

「アマリリスはこれから大変ね。マレインの治癒をして、家庭教師2人の授業受けるから、体を休める日を全て含めると週4日は忙しいわね。」

「母さん、話をずらさないで」

「桜良語勉強させれば、もしかしてうちの会社で働くようになるかもしれないわよ?側にいられるかもしれないでしょ?」



 マレインは、考えこんで分かったと答えてシオリは、胸をなでおろした。家庭教師は、ルーシーに手配してもらったが、桜良語の家庭教師は男性1人しかみつからなかった。通訳する人間も少なく知り合い同士で情報交換して雇う事になる。

 

 桜良国では紅霞の売買は死刑になる。取り締まっても、秘密裏に取引はある。プランタン国より金を上乗せしてでも買いたがる人間がいるため、一部で桜良国内で取引される。反対に、プランタン国では特に禁止されていない。金額は安くなるが、リスクが少ない。プランタン国で取引されていた最盛期では、通訳と家庭教師の求人は出すとすぐに応募がきた。

 桜良語は難しい言語だ。桜良語の通訳は当時は需要があり高額な方で、貧困に喘ぐ者は死に物狂いで独学で学んだ。桜良国で観光旅行、夕霞の治癒院での治癒。桜良国人とプランタン人の人攫いが取引するための専門の通訳者がいた。紅霞の純血売買の通訳は1番賃金が高かった。

家庭教師の場合は、プランタン国で紅霞の医者の跡継ぎに桜良語を教える人間が必要だった。純血を買った家で生まれた混血は、買い手の親の子供が主人になり追い出された場合の働き口となった。

 

 現在の桜良国の通訳者は、絵画や食器といった「物」の取引、たまに観光旅行のために雇われている。入国はだんだんと厳しくなり、気軽さのない桜良国の旅行は現在は流行らない。桜良語の参考書や辞書は絶版になり、中古で探すしかない。

 

「マレインが心配するような人じゃないわよ。桜良国の書物を原文で読みたいから、独学で勉強したんですって」

「翻訳本読めばいいのに」

「昔は、翻訳本読んでいたけど解釈が違ったりするから、作家の書いた世界を自分の目で見たいと言っていたわよ。自分は恋愛に全然興味ないタイプのオタクと言っていたから、気にしないで大丈夫よ」

 

 マレインは、家庭教師がオタクであるとかどうでも良かった。ボーイがアマリリスに話かけていたと、微笑ましそうにエメルトとファルは雑談していた。アマリリスに、ちょっかいかける人間かどうか知る事が重要だった。

 

 次の治癒の時にマレインは、アマリリスにボーイと何を話していたか思いきって聞いた。


「マレインちゃんの事、沢山聞いていたよ。プレゼント渡したいけど、何か好きなものあるか聞かれたよ」

「そっちかよ!」

 

 マレインは続けて「俺は男だ」と口から出そうになったが手で口を押さえた。ファルとエメルトは、顔を見合わせた。


 



 


 



 

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