第8話 5人の奥方と子供達 3
「シャーロットは、帰ってきたかもしれないから。カルミアがシャーロットの部屋を案内してくれる?」
「分かりました!あたしに、任せて下さい」
「いいの?」
「どーせ、やる事ないし…ん?シオリ奥様。アマリリスは、この屋敷の何ですか?もしかして、旦那様の隠し子?あの人とアデル奥様の次は、どんな人連れてきたんですか?」
屋敷全体で、ティートリーは女関係で信用されていないらしい。ファルは、苦笑いをする。
「誤解してるけど、アデルの場合は親同士が決めたのよ」
「アデル奥様の場合は旦那様が話を聞いて、アデル奥様と会って結婚が決まったから、半分恋愛結婚と聞きましたよ。」
「メイドの誰に聞いたの?子供は、そんな話聞くのはやめなさい」
シオリに嗜められるが、カルミアにとって屋敷の噂は生きる術であるため、お叱りを聞く気はなかった。それだけじゃなく、暇つぶしにもってこいもある。
「話は戻すけど、アマリリスは使用人としてこの屋敷で雇われているの。」
「メイド服着てませんよ?」
「マレインを週一で面倒見て、お友達係みたいなものよ。」
「お友達ですって……」
カルミアは、顔を隠すように下を向いて、ワンピースの裾をぎゅうぎゅうに握った。アマリリスは、横からカルミアの顔を覗きこみむ。
「どうしたの?」
「なんでもない、アマリリス行こう」
カルミアとアマリリスは、長い廊下を歩いて行く。アマリリスは、カルミアの態度を聞くか迷っていると、突然カルミアは笑顔で振り向き提案する。
「その前に、奥様達の子供達の部屋を教えるね。絶対に、間違えちゃいけない部屋があるし」
2階に降りてきてカルミアは先頭になり、廊下を歩いて行く。アマリリスは、カルミアに年齢を聞くと自分より一つ下だと判明した。2つの部屋の間に木製の花台が置かれて、上には花瓶に季節の花が生けてある。
「ここが、ボリジ様で、隣がロベイジ様で、入ってはいけない部屋なの。特にボリジ様の部屋はダメ」
「何で?」
「それは、こわーいこわーいアデル女王様が息子の勉強の邪魔をしてほしくないから。家政婦が要注意の部屋として、花瓶を目印に置いたんだって。」
カルミアは、両手の指で目をつり上げて見せる。女の子の部屋と男の子の部屋は離されていて、いくつかの部屋を通過して、廊下の中間に位置する階段を通り過ぎる。少し歩いていくとドアノブに鈴の飾りがついている、部屋の前でカルミアは止まる。
「イリス姉さん、カルミアです」
ドアノブの鈴を鳴らすと、長い赤い髪を三つ編みにして水色のリボンでハーフアップにした少女が部屋から出てきた。少し、彫りの深い顔で目は緑色のアーモンドの形だ。白いフリルのブラウスにはピンクの大きなカメオのブローチが胸元にあり、大人びていてよく似合っている。カルミアより、背が高く大人びていて少し年が離れているのが分かる。
「どうしたの?あら?カルミアは、お友達を連れてきたの?」
「うん、アマリリスが屋敷に住む事になったみたいだから紹介しにきたの」
「お父様が、私達の妹を連れてきたの?6番目の奥さんは、どんな人かしら」
カルミアの説明不足で、アマリリスはあらぬ誤解を受ける。ティートリーは、実の子供からも信用されていない。
アマリリスが、改めてカルミアとイリスにファルが説明した仕事内容を話す。カルミアとイリスは、よく分からないけどうちで暮らすのねと嬉しそうだった。
「ボリジ兄様と、ロベイジには挨拶してきた?」
「アデル様に挨拶は不要と断られました」
「別に、いいんじゃない?ボリジ様は、アデル奥様に似て気難しいし、ラッキーだと思ったら?」
「カルミア。そんな事言ってはダメ。私は、出来れば兄妹全員仲良くしてほしいの。みんな大切な兄妹だと思っている」
イリスは、寂しそうに「ボリジ兄様とあんまり話した事ないけど」と付け加える。カルミアは、自分は血は繋がってないと言いたげだ。アマリリスは、話を変えようとどこに出かけたのか聞いた。
「私とお母様は画材屋に行ってきて、お茶してきたのよ。お母様は、趣味で絵を描いてるの。お母様は部屋にいるわ」
「ありがとう。イリス姉さん」
「二人とも、私の部屋にたまに遊びに来てね。お母様に頼んで、手づくりのお菓子を用意するから。とっても美味しいの。」
シャーロットとイリスは、カルミアをお茶に誘っても「ヴァイオレット家の子じゃないので」といじけるので、二人なら来るだろうとイリスはカルミアに友達が出来た事に喜んだ。カルミアにお菓子をあげたら、遠慮なく受け取るが。
イリスと別れて、アマリリスとカルミアはシャーロットの部屋に向かった。中間の階段を登っていき、3階につくと女性2人の揉める声がした。アマリリスと、カルミアはおもわず物陰に隠れる。
「アデル奥様と、シャーロット奥様だ。イリス姉さんと、同じ赤い髪の人が5番目の奥さんのシャーロット奥様。」
カルミアは、2人に聞こえないように小さな声でアマリリスの耳元で話す。赤い髪の女性は、背はあまり高くなく緑色の垂れ目の少女のような純真無垢さがあり、おっとりとした雰囲気。内面から、光り輝くような眩しさがある。彼女自体、美しく人から愛されてきたという印象がある。イリスと比較すると、雰囲気と容姿が母親そっくりだ。
「ペリドットのイヤリングは、たまたまでしょ。なに過敏になってるの?」
「ペリドットのイヤリングは、私の両親が結婚祝いに送ってくれた私の誕生石なの。前に、イヤリングについて聞かれた時に、アデル義姉さんの誕生石にした方がいいと言ったわよ。」
「実家が宝石屋だからって、自慢げに。いちいち、細かい」
「前に私と同じ帽子を被っていた時は、たまたまと自分を納得させていたけど違うわよね?シオリさんと、ルーシーの装飾品を前につけていたし」
「うるさいわね。シャーロットは娘1人を産んだ妻で最後の妻。わたくしは長男と次男を産んだ妻」
「それに、そのカメオは……」
アデルの胸元にある、イリスと付けている同じデザインのカメオのブローチを、シャーロットは凝視する。
「ついでに買ったのよ。素敵でしょ」
「カメオは、イリスの誕生日プレゼントに私の両親が贈ったの!私を真似するのはいいけど、娘まで巻き込まないで!」
「うるさいわね!わたくしが、何を身に付けてようがシャーロットには関係ないでしょ」
フンッとそっぽを向き、スタスタと歩いて廊下の向こうに消えてしまった。シャーロットは、中央の階段に声をかける。
「カルミアと、もう一人の子はそこにいるんでしょ?」
アマリリスとカルミアは、ギクリと顔を2人で見合せて観念して出てきた。
「隠れてるつもりだけど、2人共顔が見えていたわよ」
「シャーロット奥様に紹介したい子がいて、それで私達来たんです」
「アマリリスです。旦那様の隠し子ではなく、マレインちゃんの使用人として雇われました」
アマリリスは、開き直って隠し子ではないと自虐気味に自己紹介する。簡単に、使用人としての仕事を説明するとシャーロットは「あまり言いたくないけど、アデル義姉さんに注意してね」と苦笑いを浮かべていた。
次回の更新は9月になります




