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白銀の花は不老に咲く  作者: 季原若草


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第7話 5人の奥方と子供達 2

 アデルの部屋を出て、階段を降りてフィオナの娘の部屋に向かう。アデルには「うちの息子2人は、今は家庭教師の授業を受けている最中だから、アマリリスの事は伝えとくから挨拶は不要」と釘を刺された。


「これで、良かったと思います」

「ファルさん、何でですか?」

「奥様は、アマリリス様と他の男の子を接触してほしくないと言ってましたし。よその、お嬢さんを預かるからでしょうか?」


 アマリリスは、ふーんと聞き流した。アマリリスは、気になった事がありファルに聞いた。


「この屋敷は、旦那様の子供は何人いますか?」


 ファルは、一瞬だけ硬直する。そして、アマリリスの発言を言い直すように、言葉を選びながらゆっくり答える。


「奥方のお子様は……長男ボリジ様、ロベイジ様は、アデル様のご令息です。長女イリス様は、シャーロットさまのご令嬢。カルミア様は、2番目の人のご令嬢です。」

「同じ母様の兄弟がいる子供は、アデル様しかいないんですね」

「色々ありましたので」

 

 アマリリスは、子供の数を指で数えるが、合わない。何で?と顔を上げて聞く。


「ルーシー様はこれも……色々あって、子供がいらっしゃいません」

 

 ファルは奥方と子供の事になると、途端に歯切れが悪くなる。何かを隠すように。カルミアの部屋の前に到着して、ファルはノックをして声をかける。


「カルミア様、シオリ奥様の侍女のファルです。ご挨拶したい方がいらっしゃいますが、開けても宜しいでしょうか?」

「あたしは旦那様の子供じゃないから、わざわざ挨拶しなくてもいいわよ」

「そんな事を仰らずに。開けますよ」

 

 フィオナの娘なのに、ファルは意外と敬う姿勢で接する。ただ、フィオナを嫌いなだけらしい。

 アマリリスは、ファルによって無理矢理部屋に通される。豪華さのないシンプルな部屋で、椅子に腰掛けた肩より長い2つ結びの金髪の少女に、アマリリスは見覚えがあった。廊下で見た、不貞腐れるように俯いた写真の少女だ。顔は、写真に写らなかったが雰囲気と髪型で分かった。

 カルミアは丸顔にマロ眉の青い吊り目で鼻は低く、美しいというより可愛らしい容姿。リボンタイのシンプルなワンピースを着ている。フィオナの娘だが、似ているのはマロ眉のみで、誰に似ているか分からない容姿。


「カルミア様。また、眉を剃って」

「あの人と同じ眉なんて嫌い!」

「嫌いだからって、自分を虐めて。これじゃおかしいから、シオリ奥様の部屋に来て下さい」


 カルミアは、自分の母親をあの人と呼ぶ。ファルはカルミアの腕を引っ張り、カルミアは声をあげて抵抗する。ぎゃーぎゃーと元気にファルに引き摺られて、廊下ですれ違ったメイドにくすくす笑われたので、カルミアは大人しくなった。


「何で、シオリさんの部屋に連れて行くんですか?」

「私は侍女なので、化粧は必要ないので持っていませんのでお借りします」


 部屋で机に向かって仕事をしていたシオリは、カルミアの顔を見て侍女に指示する。


「ファル、貴女が眉を書いてあげて」

「いやよ!前に書いて、元の眉に戻したでしょ」

「私が書く」


 アマリリスは、ファルから化粧道具を受け取り、カルミアは逃げようとしたがファルに押さえつけられる


「あたしの顔は、お絵かきの紙じゃないわよ!知らない子に書いてもらうなんて嫌!」

「アマリリスです。これで、知ってる人だから大丈夫」

「そういう問題じゃない」


 カルミアは「私が書きますよ」とファルに、ドスを利かされ静かになる。アマリリスは借りたスクリューブラシで、カルミアの僅かに残った眉を整える。アイブロウペンシルで、眉を平行に囲っていき、ブラシでアイブロウパウダーの粉をとりグラデーションになるように仕上げていく。エメルトが手鏡を持ってきて、カルミアは受け取り恐る恐る鏡を覗き込む。


「意外と良いかも。ありがとう」


 カルミアは、すっかり機嫌が治りアマリリスに自己紹介をする。ファルは、疑問を口にする。何故、13歳の女の子が慣れた手つきで化粧が出来るのか。


「アマリリスさんは、化粧を練習していたんですか?趣味ですか?」

「母様が、自分が死んだら化粧教えてくれる人がいないから困るでしょと、毎日特訓してくれました。」

「お母様に、屋敷のお嬢様の化粧をしたと自慢できますね」

「母様はいないんです」

 

 シオリが横でファルに「この子のお母様は、亡くなっている」と耳打ちして、ファルはバツが悪そうに会話を打ち切った。ノックの音を聞いて、ファルは切り替えようと、ドアの前で取り次ぐ。


「面接が終わりました。」

「ルーシー。ありがとう」


ルーシーと呼ばれた女性が部屋に入る。黒髪を淡水パールの髪飾りで結い、耳にはお揃いの大きめの淡水パールのピアス。一重の黒い目は目力があり、真っ赤な唇から八重歯が見える。チャイナドレスを着て刺繍の靴を履き、つま先までこだわりがある。背筋を伸ばし凛とした綺麗な女性。

 ルーシーは来客に配慮して、シオリに小声で家政婦は急ぎの仕事があるため……とボソボソと説明する。

 

 ルーシーは、ふとアマリリスを見ると、幽霊でも見たかのようにギョッとしている。


(母様と父様と町に行った時に、ジロジロ見られる事があったけど。こういう反応は、初めて)


 町で両親と歩いている時に、アマリリスは暑くてフードを下ろした時があった。琴葉が急いでフードを被らせて、3人で適当な店に入って逃げた。

 屋敷で、働くメイド達も同じようだ。変わった色の鳥を見るような目で、アマリリスを見ていた。紅霞は、自分の目と髪の色の運命だと割り切るしかない。

 


「アマリリスです。宜しくお願いします」

「あっ……宜しく。4番目の妻のルーシーよ」


 ファルは、アデルの時と同じ説明をして、ルーシーはぎこちなく説明を受けた。


「面接の事は時間がかかりそうだから、後で聞くわ。ルーシーは部屋に戻っていいわ」

   

 ルーシーは、部屋から去った。アマリリスが、最後に挨拶する人間は、シャーロットとイリスの残り2人。

 

 


    


 

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