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白銀の花は不老に咲く  作者: 季原若草


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第6話 5人の奥方と子供達 1

 翌日、預言通りにアマリリスは頭痛が酷く午前中はベッドから起き上がれなかった。メイドが昼食を下げて、部屋から退出して1時間もしない内に、ファルというシオリの侍女がノックをした。金髪で面長の、おちょぼ口の侍女だ。

 ファルは、アマリリスの寝起きのまま洗ってない顔を、湯に浸して絞ったタオルで顔を拭いた。


「アマリリスさん、明日の11時に私が迎えに来ます。シオリ奥様が、部屋で話があるそうです」


 翌朝。宣言通りの時間ぴったりに、ファルはアマリリスの部屋をノックした。3階のシオリの部屋に入ると、シオリがぶつぶつと何か書き物をしていた。

 

「紹介状は、いつ書いても苦手…この子は何て書こうかしら」


 アマリリスは大きなシャンデリアが吊り下がる、女主人らしい品の良い部屋にあちらこちらに目線が動く。ありえない色彩の異質な絵画が飾られていて、部屋でういている。

 集中していたシオリに、ファルがアマリリスさんを連れてきましたと淡々と報告する。やっと、気づいたシオリは顔を上げる。

  

「ファルさんのおかげで、すっかり体調良くなりました。ありがとうございます」

「治癒の翌日の、昼食が終わった短時間だけなら、ファルがアマリリスの世話する事になったから。何か、あればファルにアマリリスの事で頼むけど。仲良くできそう?」


 アマリリスは、はいと元気よく返事をした。アマリリスは、ファルに不満はなかった。ファルは甲斐甲斐しく世話をしてくれ「妹の面倒を見ていたので、慣れています」と薄く微笑んだ。


「今日は、他の奥方と子供に挨拶してきなさい。ファルが案内するから。アマリリスは、この屋敷に長く仕えるから」

「奥方達には何て説明しましょう?」

「桜良国の紅霞の間で伝わる治療法を使用人として、この子が指導しに来た、でいいかしら」

「アデル様は、マレイン様が元気だと喜ばないので、何かしそうですので奥方達に説明なくても良いと思いますが」

「主人みたいに銀食器使って、使用人達は旦那様の隠し子と噂するわよ。もしかして、この子に家庭教師付けるかもしれないし」

   

 ファルは納得する。アデルは噂を真に受けて、腹を立てて部屋を破壊するが簡単に想像できる。嫌な選択の内のマシな方を、シオリは選んだのだ。

  

「ルーシー様はシオリ奥様の代理で、家政婦とメイドの面接をしてますから、後で伺った方がいいですか?」

「それがいいわね。ルーシーは、面接終わったら私の部屋に報告しに来るから。シャーロットはイリスを連れて、出かけているからそっちも後にして」

「分かりました。アマリリスさん、奥様達の部屋に行きましょう。アマリリスさん?」


 これでは、ファルがアマリリスの侍女だ。ファルは奥方の侍女で、使用人が借りているという不思議な現象が起きている。広い屋敷で人間関係が全く分からない状態のため、ファルとシオリに甘える事にした。


「失礼のないように、2番目…いえ、3番目の奥様のアデル様からにしましょう。」

「何故、2番目の奥様を先にしないんですか?」

「あの人は、挨拶しなくてもいい気がしますけど…アデル様の後から2番目の人にしましょう、その方が角が立たない」


 最後は、自分に言い聞かせるようにぽつりと言った。

 ファルは聞かれた事について、きちんと答えてくれる人だ。アマリリスはナースメイドは同じナースなら、ナースの血縁者かと聞いたらファルの妹だと教えてくれた。世の奥方は侍女を名字で呼ぶ事が多く、シオリはファルを名字で呼んでいる。ナースメイドは下級使用人のため、バルバラを名前で呼んでいる。

 妹とは、仕事の場面ではお互いに、職場の人間として接している。とそこまで教えてくれた。

 そのファルが「何故」という、疑問に答えてくれないのと、2番目の奥方について奥歯に物が挟まるような言い方をする。


「今の時間ならアデル様は2番目の人と部屋で話をしていると思います」

「挨拶する時困るので、2番目の人の名前を教えて下さい」

「フィオナさんです。これは、大事な事ですが…」


ファルは、周りに人がいないか辺りを見回す。


「アデル様と2番目の人の生い立ちに同情と共感する使用人。アデル様は長男を産んだ方なので、シオリ様と匹敵する程の権力があると使用人が影で噂しています。どうか、失礼のないようにお願いします。アデル様はすごく怖い方なので」

「気を付けます。フィオナ様はアデル様のお友達ですか?」

「2番目の人はアデル様の手下です」

 

 ファルはフィオナの名前を出したのは、結局1回だけだった。フィオナについて、触れてほしくないという態度を、ファルはあからさまに出してきたのでアマリリスは聞かなかった。 

 ファルは部屋の主に名乗り、入室の許可をもらいドアを開ける。アマリリスと一緒に部屋に入ると、2人の女性がお茶をしながら先程まで何か話していたようだ。


「アデル様、失礼致します。こちらが、マレイン様の治癒係のアマリリスさんです」

「治癒係?」

「説明致しますね」


 甘い香水の匂いを漂わせて、大きな口を開いたのはアデルという3番目の奥方だ。茶色の髪にオリーブ色の目。少し小太りの厚化粧に、ペリドットのイヤリングは優雅に揺れていて、首元には金のチョーカー。胸元には、カメオが飾っている。宝石の指輪を片手には3、4つずつはめている。ファッションの方向性は統一されず、もう少し抑えれば彼女の美貌は引き立ち勿体ない。もう1人の女性は、弱々しい声で抗議する。


「ファルは…何でシオリ義姉さんの侍女なのに、旦那様の奥さんである、あたしには顔を向けないの?さっきから、いない人扱いをして」

「隣にいらっしゃいますから、一緒に聞いていると思いました。」

「ファルは、あたしの事を相変わらず名前で呼ばないのね。フィオナという名前を忘れたわけじゃないでしょ?」


 アマリリスは驚く。フィオナを侍女と思い込んでいた。

 ヴァイオレット家は奥方も子供もみんな美人だらけで有名で誰もが羨むとファルが昨日、自信満々に髪の毛を梳かしてくれた時に教えてくれた。

 アデルの対面で椅子に座るフィオナと呼ばれた奥方は、焦げ茶色の髪は青いリボンで纏めて、目も同じ色。まろ眉だけが唯一の特徴の、幸薄い平凡な顔立ちの線の細い女性。衿元の黄色い薔薇のコサージュは、彼女の雰囲気とは不釣り合いだ。

 ファルは素朴な格好をしているが、容姿から見ればフィオナに比べて、ファルの方が奥様と呼ばれてもおかしくない。


「シオリ義姉さんは、私に意地悪するように侍女に命令してるのかしら。あたしが元メイドだから、気にくわないからって酷い」

「フィオナさんは、自分を可哀想とよくアピールするけど、強く言うわね。」

「アデルはどっちの味方よ」


フィオナは気分を害したとばかりにゆっくりと椅子から立ち上がり、足を引きずるようにして歩いて部屋から出て行った。アマリリスは、ファルにそっと静かに聞く。


「フィオナさんは、足が悪いんですか?」

「みたいです。」


 アデルは見慣れているといった態度で表情を崩さず、ファルに説明の続きを催促した。アデルにシオリの時と同じ挨拶すると、品定めするようにまじまじと見られて、巨大な猫に睨まれたネズミのようになる。


「貴女みたいな子は、ボリジには目に毒だからなるべく近寄らないでね」 




シオリがナースメイドを探していたので、バルバラを紹介しました。

バルバラとファルは仲が良いです


 


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