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白銀の花は不老に咲く  作者: 季原若草


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第15話 アマリリスは○○する 6

 翌月に遊びに来たアンジェリカを応接間に呼び出して、シオリはこんこんと言い聞かせた。アンジェリカは、誰かを犠牲にした正義の主張は止まらず、両者は相容れなかった。その日を境に、アンジェリカは屋敷に帰ってこなくなった。

 

 

 アンジェリカがクビを突っ込んだせいで、サジュマンは少し仕事は増えたが。サジュマンは、これくらい大した事ないと、シオリに豪快に笑った。

 

「アンジェリカは、もう帰ってこないみたいだし。良い機会だから、例のメイドは解雇しようと思うけど、どうかしら?」

「アンジェリカ様が、いなくなったからと例のメイドをクビにしたら、他のメイドから反感を買うかもしれません。結局、使用人達の間では終わった事件になっています」


 サジュマンは、メイドがいない時間の屋根裏部屋にこっそり入り。事件を起こしたメイドのクローゼットやトランクを、定期的に確認してシオリに報告した。1年半以上続き、問題が無かったため一つ仕事が減った。

 騒動から2年後。サジュマンは体調を崩して、高齢に差し掛かるのもあり引退した。シオリに体調を治してから、いつか旅行には絶対に行くと語り別れた。

 同じ時期に、ヘルガも辞めてシオリには「店ができて、落ち着いたら連絡します」とお世話になりましたと笑顔だった。2人は、シオリと涙ながらの別れを告げた。家政婦として、モルトケが雇われて、キッチンメイドのロッティが毒見役を引き継いだ。


「アンジェリカと揉めてから、一度も会ってない。マレインの看病と仕事で日常の忙しさで、アンジェリカの事はすっかり昔の事になっていた」

「知らなかったとは……いえ。知らなかったでは、済まないですよね。私にメイドの管理が、出来ていなかったのですから」

「昔の人間だと、アンジェリカの話をしなかったのは、詰めが甘かった。こちらの落ち度。」


 今度はシオリが謝罪した。モルトケは、シオリに叱られて、解雇を言い渡されて終わりと思っていたので混乱した。

 アンジェリカと親しいメイドは、ニルデとゾエ含めて10人近くいた。転職したり結婚して、今は数人しか残っていない。その分、メイドが新しく入って、人間関係が変わりアンジェリカを忘れているメイドもいる。ゾエは、辞めて今はどうしてるか分からない。

 

 アンジェリカが引っかき回した窃盗事件の後に、シオリは帰宅してサジュマンから話を聞いた。そのままモルトケに伝えた。シオリは紙にペンを走らせて、アンジェリカの信者の名前リストを渡した。

 

「昔、毒見役をしていたヘルガが1回吐いたのは、アンジェリカの信者の嫌がらせだと思う」


 今日初めてシオリは今まで、誰にも言わなかった憶測をモルトケに告白した。犯人はゾエか、ゾエの周りのメイドの誰か。両方もある。シオリは負けていられず、自分に敵意を出す信者の紹介状は、書かなかったが。

 アマリリスの治癒でマレインの看病は、ほとんど必要なくなったため。シオリは、時間と気持ちに余裕が出来た。アンジェリカが残していった、屋敷のシミを洗い流すつもりだ。


「あのメイドの事は、こっちで調査しとくから。モルトケさんはこれからも、引き続き仕事は宜しくね」

「かしこまりました」


 窃盗したメイドは、心を入れ替えて屋敷を磨き上げるように真面目に働いている。他人の心の中は、分からない。シオリの知らない所で、ニルデの恨みは暴走した。なあなあになった窃盗を、改めて向き合うつもりだ。シオリは、モルトケの腰で沈黙している鍵束をみつめる。

 

「アマリリスの部屋がすぐに使えたのも、几帳面な貴女がナニーの部屋を綺麗に管理してくれたおかげだから。」

「ありがとうございます」

「パターソンさんにも言ったけど、貴女にも期待しているから」


 モルトケは、褒められて照れくさくなる。家政婦だと一目で分かる鍵束には、アマリリスの部屋の鍵も含まれている。


 アンジェリカの慈愛は、影もないのに今だにメイドに取り憑いている。若いメイド達からしたら、住み込みで働き、仕事量も多くお金もあまりない。将来は不安で、親兄弟から離れた寂しさがある。

 そこに、現れたのはアンジェリカ。自分の話をうんうんと嫌な顔をせずに、遮ることもなく最後まで聞いてくれ「辛かったわね」と寄り添って主人を超えて、友達のように接してくれる。決して、反対の意見は言わない。メイド達は、見返りなく親切にしてくれるアンジェリカを崇拝した。

 ニルデのように、アンジェリカだけを主人扱いしたメイドもいた。ニルデ達は、アンジェリカが帰ってくるのを楽しみにして、辛い仕事も頑張れた。

 

 

 コックのポシュナーも含めて、3人は口頭注意で終わった。モルトケとパターソンは、シオリにアマリリスへの謝罪の伝言を頼むとシオリは了承した。2人は気を張っていたが、処罰がほとんどないと気が抜けた。

 

 シオリは、ルーシーに新しいコックを手配するように指示した。知り合いに連絡して、自分でも探す事にした。

 尋問の時に、ロッティはコックに確認しようとしたら、追い払われたと告白したのもあり、ポシュナーには責任はとってもらうつもりだ。シオリは、雇うのに時間がかかっても、絶対に追い出そうと決意した。シオリは、コックよりマレインの命の方が大事だ。

 


 1年後。シオリはポシュナーに解雇を言い渡して、ルーシーの紹介のコックを雇った。ルーシーは、毎朝コックのオフィスで、コックとメニューの確認承諾の担当になった。


 

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