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白銀の花は不老に咲く  作者: 季原若草


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第14話 アマリリスは○○する 5

 応接間に、2人の上級使用人はそれぞれ呼ばれる事になった。2人は、応接間に入るまで「クビ」の2文字を覚悟しながら、顔には出さずに普段通り部下に指示して仕事をこなした。生きた心地はない。

 部下の責任と銀器の管理者として、執事パターソンが入室する。パターソンは30代前半の見た目で年齢不詳。背も鼻も高く無駄な肉はなく、引き締まった体つき。メイドに隠れファンが何人もいる。胃痛に襲われても歯を食いしばり、常に白鳥のように堂々としている。


「パターソンさん」

 

 パターソンは今まで聞いた中で、1番優しい声でシオリに名前を呼ばれて鳥肌が立つ。シオリの口から、猫なで声に近いような声なんて聞いた事がない。パターソンは、長い付き合いで分かる。

もちろん、執事の落ち度に怒っているがプラスで、恐らくシオリ奥様とは合わない、気難しいコックと静かに喧嘩をして。アンジェリカ様の信者がやらかしたのと、自分の子供の命綱を殺されそうになったから腸が煮え返っている。

 パターソンは、平謝りして言われるがまま尋問を受けた。パターソンは、主人奥方の銀食器を洗っているが、フットマンは子供達の銀食器を担当している。フットマンに、任せきりだったとパターソンは非を認めた。


 次にメイドの責任者として、家政婦モルトケが腰の鍵束をじゃらじゃらと鳴らしながら応接間に入った。この世の終わりのような顔をして謝罪をして、パターソンと同じような尋問を受ける。モルトケは中年の女性で、エラが張っていて愛嬌のある顔だ。

 モルトケは、ティートリーに妹がいるくらいの認識で。アンジェリカとシオリの確執や、一部のメイドはアンジェリカの友人という事も知らなかった。

 

 前の家政婦サジュマンは、アンジェリカを用心していた。アンジェリカは、誰に対してフレンドリーで、特にメイドを大事にしていた。

 サジュマンの悩みの種は、アンジェリカとメイドの距離が近すぎる。アンジェリカとメイドが、親しくしている姿を見かけると「主人と仲良くしすぎてはダメ」とメイドに注意をしていたが、聞く耳を持たなかった者もいた。家政婦に叱られるとメイドに距離を取られたアンジェリカは、別のメイドと仲良くした。

 アンジェリカは結婚してからも、遊びに来ていた。嫁いだ屋敷からヴァイオレット家までの距離はその日のうちに帰れるため、侍女は連れてこなかった。侍女にも、羽を伸ばしてもらおうという計らいだ。

 

 アンジェリカは、ヴァイオレット家に帰ってくると奥方を見かけたら、軽く世間話をしたあとメイドに会いに行く。

 アンジェリカとフィオナは、話す事はない。カルミアはアンジェリカを親族扱いしてないため、いつも部屋に隠れていた。アンジェリカは、カルミアに構うつもりは無かったため、お互いに平和だった。


 一方でアンジェリカは、病弱なマレインが心配で何か力になりたいが、シオリが会わせてもらえず叶わない。マレインが男の子だと、知る人間は少ない。アンジェリカはアデルに対しては好意的で、マレインの性別を知ったら、悪意なく話してしまうだろう。男の子の格好をさせないとダメと騒ぐ可能性もある。シオリは、アンジェリカを嫌いだからではなく、マレインの害になると判断した結果だった。

 シオリの態度はアンジェリカには、意地悪く映った。 


  

 会わせてもらえないかと、アンジェリカは人懐こくシオリの侍女に頼む。


「マレイン様は、体調が悪いので」

 

 毎回、同じセリフで素っ気なく断られていた。シオリの侍女達は、マレインの壁のようにガードしている。


「私は、マレインの顔は廊下の写真でしか知らない事になる。せめて、どんな子か知りたい。」

 

 メイド達に零して、アンジェリカと年の近いゾエは立候補した。憧れのアンジェリカの、役に立ちたいと。自分のために、友人が頑張ってくれる喜びと。自分の好奇心が満たされるため、アンジェリカはゾエに頼んだ。

 ナースメイドのバルバラに探りを入れると、すぐにシオリの耳に入った。ゾエは、バルバラとファルは、顔が似てないため姉妹だと知らなかった。

 腹に据えかねたシオリは、アンジェリカに「マレインに2度と近づかないで」と声を荒げる。ゾエには、ナースが厳しく注意をして、ナースの迫力にゾエは嗚咽をもらした。アンジェリカは、泣き止まないゾエの肩にそっと手を置き、「言い過ぎ」とナースに一言非難した。最悪の空気を置いて2人は、主階段を下っていった。

 その日の夜。ゾエは、メイド数人に自分に都合よく話した。酷い目にあって、泣かされたと強調した。それから少しして、毒見役のヘルガが吐いて寝込んだ。


 サジュマンは、アンジェリカと話した事ない、そこまで親しくないメイド達には、話かけられたら「忙しいので」の一言で断りなさいと、サジュマンは指導するようになった。ロッティも、その中に入っている。

 親しいメイド達には、アンジェリカと話している場面を目撃したら、メイドに仕事を口実に引き離したがあまり意味が無かった。サジュマンはハウスメイドに指示して掃除をさせて、屋敷を主人達が安心して寛げるよう清潔にする。陶器や資材の管理等、他に仕事があり限界がある。アンジェリカが遊びに来る度に、常に時間を割くわけにはいかず、アンジェリカとメイド達は上手く隠れて仲良くしていた。


 

 マレインの9歳の誕生日に、シオリが侍女達とプレゼントを買いに行っている間。屋敷で、事件が起きた。アンジェリカが口を出して、サジュマンが入る隙はなかった。アンジェリカの影響力は強かった。


「これで、終わった事だから。シオリお義姉さんには、内緒ね。蒸し返して、後で問題にしないで。人間は誰でも過ちはあるのよ。」


 窃盗の被害者は3人いて、アンジェリカもその1人だった。メイドに比べれば主人の私物が高価なのは当たり前で、アンジェリカの方が被害額は高い。周りの使用人達の前で、アンジェリカは高らかに宣言したのは悪手だった。シオリとサジュマンが、事件を起こしたメイドを処罰したくても手が出せない。アンジェリカの演説を聞いて、感化されたメイドもいた。応接間で、シオリと家政婦が被害にあったメイド2人の愚痴聞き役となった。スッキリした顔でメイドは、応接間を出て行った。 


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