3章.31 勝ち取った日常
明日から4章開始!
風が気持ちいい朝、俺とオリビアはザガルタに向けて猛スピードで走っていた。
昨日のお別れ会では、オリビアが姉と慕っているルルと離れるのが辛い様で泣いて抱き合っていたし、だいぶ仲良くなった様なので安心した。
「オリビア、本当に残っても良かったんだぞ?報告を済ませて迎えに行っても良かったのに。」
「ウルドと一緒がいいのっ!ウルドはわたしといるの、嫌…?寂しくなかったの…?」
オリビアが少し震えている。
だいぶ良くなってきたから良い経験になると思ったが、俺が離れてた期間で若干悪化してしまったか。
俺はオリビアを安心させる様におんぶから抱っこに変えてギュッと抱きしめて落ち着かせる。
「寂しくない訳ないだろ?でもせっかくオリビアがまだいたいって言ってくれたから、それは叶えてあげたかったんだ。でも一緒がいいなら早く帰って報告終わらせて街に行こう。食材がないから買い物行かなきゃね?」
「うん…。わたし、ウルドがいなきゃやだよ…?ウルドが帰るならわたしも帰るもん…。わたしはウルドがいたらそれでいいもんっ!」
オリビアが強く抱きしめてきてぐずり出してしまった。
今回は緊急の案件だったから仕方なかったけど、里にいる時は我慢してたのが一気に噴き出したみたいだ。
「オリビアごめん、我慢させてたんだな。当分は前みたいに夜には帰って来る依頼しかやらないつもりだから安心してくれ、な?ほら、もうザガルタに着くから甘えん坊に思われちゃうぞ?」
「甘えん坊さんでいいもん…。今日はずっとこうしててもいい…?今日だけだから…だめ?」
オリビア、上目遣いをマスターしてやがる…!
なんて恐ろしい子…!
こんなお願いされて俺が断れる訳がなかった。
「じゃあこのままギルドに行こっか。みんなに甘えん坊さんを見て貰わなくちゃな?」
いつものオリビアなら恥ずかしがって降りるけど、今回は本当に甘えん坊さんみたいだな。
「今日はずっとこうしてるからいいもんっ!甘えん坊さんだもんっ!むーっ!」
今日のオリビアは本気の様子で一切離れようとしない。
流石に諦めた俺はオリビアにしがみつかれながら冒険者ギルドの扉を開いた。
「あら?ウルド君とオリビアちゃんこんにちは!報告の件よね?今ギルドマスターを呼んでくるわ!」
ミレイさんは俺を見つけると、颯爽と駆け出してザイルさんを呼びに行った。
暫く待つといつもの会議室に通され、俺はオリビアを抱きながら椅子に座りザイルさんを待った。
数分後、会議室のドアが開かれると、そこにはザイルさんとオフィーリアが立っていた。
「ウルド殿、数日振りだな!しかし本当に父親だったとは驚いたぞ?しかも凄い懐いてるじゃないか!可愛いなぁ…!」
「やぁ、ウルド君。早めに来てくれて助かるよ。今回は参考人としてオフィーリアさんにも来て貰ったから、詳しく教えてくれるかい?」
オフィーリアはオリビアに夢中の様だが、オリビアの方は人見知りが発動したみたいで俺に顔を埋めている。
「オフィーリア、この子はオリビアだ。人見知りだが良い子だから、慣れれば普通に話せる筈だよ。ザイルさん、このままで申し訳ないですが、早速始めさせて貰いますね。」
俺は里を出発してティーザニア王国からオフィーリアとザガルタに着くまでを、質問を受けながら説明した。
「なるほど…。国王陛下にそんな考えがあったとは知りませんでした。やはり貴方が行ってくれて正解でしたね。ティーザニアの内から変革してくれて、本当にありがとう。」
ザイルさんが深々と頭を下げる。
それを俺は慌ててそれを制止した。
「ちょ、頭を上げて下さい!俺はただ、友人や家族を傷付けられたのが許せなくて、それを仕組んだ国王が自分の命で償えると思い上がってたので叱ってやっただけなんですから。世界樹にも、今までダークエルフにしてきた仕打ちを償うまで許す気はないって伝えてきましたし、ティーザニア王国がこれからどう進むか、外から見てあげて下さい。」
俺がそう伝えると、ザイルさんは懐かしい物を見るような表情をして語り出した。
「僕が国を出た理由、話してなかったよね?昔、ダークエルフとは他種族と同じぐらいの関係性だったんだ。それを公の場で、ダークエルフが不幸を招き、かつての戦争が起きたと国王が言ったんだ。」
ザイルさんの目には、かつての光景が見えているのだろう。
そんな、悲しみを持った目に見えた。
「僕には師匠がいてね?…ダークエルフの彼女は、王族達から罠に嵌められて死んだ。僕は怒りに我を忘れて、その王族達以外の王族達も謁見の場で叩きのめし、陛下にありったけの憎しみをぶつけて国を出たんだよ。…もしかしたら、あの時の陛下はウルド君にしたように、世界樹様と一緒に僕を試したのかも知れないね。」
ザイルさんの話を聞いて、これが解決した後で良かったと安堵した。
もし出発前に聞いていたら、本当に正面から城を吹き飛ばすぐらいはしていたかも知れない。
オフィーリアはザイルさんの話を聞いて、自分の事のように怒っていた。
オフィーリアのこういう所がザイルさんが後見人を引き受けてくれる要因になったのかもな。
「そういえば国王が謝ってましたよ。ザイルさんに許して貰えるとは思ってないらしいので、許す必要はないと思いますけどね。」
そう言って俺はお茶を啜ると、ザイルさんとオフィーリアが苦笑した。
「ウルド殿は本当に陛下に厳しいな…。まぁ、やられた事を考えると仕方ないのだが…。」
「ウルド君の宿題があるんですよね?なら、その宿題を終わらせた時に僕も少しは許せる時が来るのかもしれませんね…。さて、長々とありがとうございました。オリビアちゃんも、ゆっくりウルド君に甘えたいでしょうし、ここまでにしましょうか。依頼に関しては急ぎの案件はないのでゆっくり休んで下さいね。」
「ウルド殿、私はギルドで色々と学んでから冒険者として活動を始める事にしたよ!こちらでもよろしく頼む!」
オフィーリアはまず、外の世界の危険性を知らな過ぎるので良い判断だ。
「ザイルさんありがとうございます。オフィーリアも勉強頑張ってな。落ち着いたらオリビアを紹介したいし飯でも行こう。それじゃ、また。」
そう言ってギルドを後にした俺達は、街に向かって歩き出す。
「オリビア、明日と明後日も休みにしちゃおっか。空けてた家の掃除して、料理を一緒にしたりさ。」
「いいの!?やったぁっ!…でも、本当に2日もお休みしていいの…?ウルド怒られない…?」
久々に帰って来たからのんびりしようと提案したが、思ったより俺が社畜だと思われてたようだ。
俺はオリビアを抱いたまま再び歩き出す。
「いいんだよ。だって、やっと勝ち取った自由なんだから。これからは俺達のペースでゆっくり進んで行けば良いんだ。」
そうだ、色々あって忙しい日々だったけど、これからは少しずつ、こういう日を増やして行こう。
時間ならいくらでもあるんだから。
「なんたって、俺達はエルフだからな!」
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