3章.26 自由への一歩
旅行中なのです
出立式の夜、翌日の出発を前にして俺達は立食パーティーに参加している。
色々あったティーザニア王国だったが、終わってみれば…良い思い出とは言えないけど、ダークエルフとの関係改善の一歩を踏み出したと考えれば大きな前進だ。
「次はオリビアと一緒に来れる国になってたらいいなぁ…。」
美味しい葡萄酒を飲み干しつつそんな独り言を呟いていると、ライゼルがグラスを2つ持ってやって来た。
「ウルド殿、君とは初めからこうやって酒を酌み交わす仲で出会いたかったよ。」
ライゼルからグラスを受け取り乾杯する。
「ウルドで構わない。俺もライゼルって呼んでるしな。それに俺にも里に血は繋がってないが妹がいるから他人の気がしなかったよ。今度は妹と娘も連れて来るからよろしくな?」
「ウルド、ありがとう。しかしやはり妹がいたのか!オフィーリアの扱いが上手いからもしやと思っていたんだ。」
ライゼルは既にほろ酔いの様だが妹の門出だからか、今日は無礼講らしく結構な量のアルコールを入れていた。
「俺も妹には甘いからな。でも今回で時には厳しくしないといけないって学びを得た。ありがとう。」
「俺とオフィーリアで学ぶなよ!…酒で紛らわそうとしたがやっぱり心配だ…!ウルド、妹を、オフィーリアを頼むぞ!!」
酔っ払ったライゼルから熱い抱擁を交わされる。
こいつ酔ったら熱くなるタイプかよ。
「分かった分かった。傷ひとつ付けずにザイルさんに届けるから安心しろって…。つーか国民の誤解はちゃんと解いとけよ?あのままじゃ俺もオフィーリアも一生この国に入れないからな?」
昨日のオフィーリアの出立式を思い出し、2人で酔いが覚める。
国民の反応は明らかにオフィーリアが嫁ぎに国を出るみたいになっていたのだ。
「あら、現実にしてしまえば問題はないのでは?私としましてはそうなるのが一番嬉しいのですけどね?」
リセリアが色々な挨拶が終わったらしく、こちらにやってきた。
「俺はまだまだ身を固めるつもりはないよ。それに娘だってまだ小さいからね。そもそも未婚のお前に言われたくないんだが?」
新しいグラスを手に取り料理を楽しみながらもリセリアを煽る。
するとリセリアもニヤリと笑みを浮かべ返して来た。
「私は王位を譲るお方にしか身体を許しませんから。なのでウルド様、王宮にていつでもお待ちしていますよ?」
「参りましたよ…。とにかく俺はまだ独り身を楽しみたいんだから勘弁してくれ…。」
俺は肩をすくめて料理を物色しに逃げるように向かって行った。
知らない肉料理をいくつか皿に乗せてさっきの場所に戻ろうと思っていると、オフィーリアが両親と話している姿を見つけた。
「オフィーリア、陛下から言われて許可はしたが、僕達は心配だ…お前にはこの国で嫁ぎ幸せになって欲しかった…!これは父である私の偽らざる本音なんだ!それだけは…分かってくれ…。」
「父様、そして母様!私は幸せなのです!今まで書物でしか知らなかった外の世界へ行ける事を!そして、この国では得られない知識を学べる事を!必ず成長した姿で帰って来るので、どうか心配しないで下さい!」
抱き合うオフィーリア親子を見ていると、俺も少しホームシックになってしまった。
早く家族にルルやオリビアに会いたいな。
するとオフィーリアが俺に気付いたようだった。
「ウルド殿!丁度良い、この2人は私の両親だ!お父様お母様、こちらは今回この国を救ってくれた精霊使いのウルド殿です!」
急な紹介に驚いていると、オフィーリアの父親が先に挨拶してきた。
「これはこれは、私はバートン・リ・ティーザニアと申します。この度は娘の我儘にお付き合い頂きありがとうございます。しかし私とて父親、娘をはいそうですかと国外に出すなど許せる訳がない!ウルド殿、私と決闘してくれッ!!」
「貴方っ!危険過ぎますわ!どうか、どうか旦那をお許し下さい!オフィーリアを愛しているだけなのです!」
すっごくオフィーリアの両親っぽいわ。
せっかく覚悟を決めて来てくれたんだろうし、相手した方が良いんだろうか…?
するとライゼルが現れてバートンに声を掛ける。
「バートン叔父上、これはオフィーリアが望み国王陛下がお認めになった事。例え父と言えども一度了承したならば潔くなられよ。オフィーリアは既に成人し、公務でもあるのだからな。」
ライゼルの言葉にバートンは泣き崩れるのを俺は見てるしかなかった。
本当に見てるしかなかったので、さっき取ってきた謎の肉と葡萄酒を味わいつつ見ていた。
「もぐもぐ、戦わせてやれば良かったろ。俺なら大丈夫だし相手にも怪我させずに出来たぞ?」
「ウルド、俺達は王族だ。決闘で負けるというのはひとつの結果以上に失う物が大き過ぎるんだよ。」
これには王族の内情を知らない俺は黙るしかなかった。
オフィーリアの父なのだから、ライゼルが止めたのは優しさからだろう。
俺はオリビアが独り立ちする時、バートンの様になるのだろうか…。
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ついに出立する日が来た。
なんだかんだで数日のつもりが結構長居してしまったので、みんな心配してそうだな。
「オフィーリア、いつでも帰って来い。俺達はいつだってお前を想っているからな。」
「ウルド様、オフィーリアを頼みます。またいつでもいらして下さいね?」
『ウルド様、国の事、リセリアの事、更には王族の娘までありがとうございます。契約は続いてますので、何かあればすぐにお呼び下さい。』
ライゼル、リセリアに加えてユグドラシルまで来てくれた。
「何かあったら世界樹に伝えるかザガルタまで手紙をくれ。みんな、元気でな。」
「皆、行ってきます!絶対に、成長して帰って来ます!」
来る時は独り死ぬ覚悟で喧嘩に訪れ、帰る時は2人に増えると誰が予想した事か…。
来た時は人質とテロリストが、出る時は式典を開かれたんだし誰も当たらないよな。
「暫く会えなくなるけど良かったのか?」
俺はあっさりと旅立ったオフィーリアに気になり話しかける。
すると目尻から一筋の涙を流し、笑顔を作るとこう言った。
「昨日たくさんお別れは済ませた。…それに、旅立ちは笑顔が良いと物語で読んだからな!」
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