3章.20 決戦、アンフィスバエナ
なんだかんだ3章も終わりそう!
世界樹の精霊の合図で穴に飛び込む。
空間内は意外と広く、戦うには申し分ない広さが用意されていて安心した。
「…流石にデカいなこりゃ。討伐だったら諦めてる所だよ…。」
竜種は伊達じゃないって事か。
パッと見だが東京タワーを横にしたぐらいのサイズはありそうだ。
「ギュアオオオオオオンッ!」
大蛇竜の咆哮が空気を震わせる。
どうやら封印が解けた様だが、まだ本調子ではない様子だ。
「それじゃ、始めるか!」
聖弓ユグドラシルを構え魔力を込めると、あまりの密度にバチバチと音がする程の濃密な魔力を凝縮した魔法矢が完成した。
まずは片方の頭だけに集中して一撃を入れる。
聖弓は魔力の凝縮による手振れがないので、今までとは比べ物にならない威力と密度の魔力矢は俺の狙い通りの軌道で飛ぶだろう。
「行くぞ。“彗星“。」
ゴウッ!と音を立てて飛んでいく必殺の一矢は、大蛇竜の左の頭に目掛けて光の線を描く。
しかし、その光の線が頭を貫く事はなかった。
多少ダメージは出たと思うが、アンフィスバエナの反射的に作り出した魔法障壁を破ってかすり傷をつけた程度だった。
「マジかよ…!彗星でこれなら流星じゃ、かすり傷ひとつ付けられないなこりゃ…!」
魔力は有り余ってるから彗星を3発、同じ頭を狙うも全て魔法障壁に阻まれた。
「ギュアオオオオオオンッ!」
右頭部がブレスを吐く体勢になり、俺は全力で距離を取る。
すると次の瞬間、毒々しい色をした煙の息吹を吐いて来た。
「ぐッ…!これ毒の息か…!戦士ならもっと苦戦したかもな…。」
毒耐性スキルがあって本当に助かったな。
しかし、右の頭は状態異常系を操るとするなら…?
戦いが長期化する事も考えて、左頭部を潰した方が不意の一撃を防げるが、右頭部を潰せばもっと接近して楽に戦える。
右の頭から潰すのが正解か?
いや、そもそも潰せるのか?
「とにかく攻撃し続けるしかない…かッ!」
距離を取って彗星を放ち、また距離を取って再び彗星を放つ。
近接が届かない範囲で、世界樹からの無尽蔵とも思える程の魔力を借りて、瞬時に聖弓に魔力矢を生成し解き放つ。
しかし、数十回繰り返したが大蛇竜の障壁で全て防がれるので、全くダメージが通っている感覚がなかった。
「これじゃ埒が開かないか…。考えろ、どうすればダメージが入る…?」
魔法障壁のせいで…でも、魔法を込めずに射ってもダメージは通らない…。
そこで俺の頭にひとつの仮説が浮かんだ。
そうだ!あいつ確か世界樹の魔力を吸い取ってたから封印されたんだったっけ?
俺は逃げ回りながら純粋な世界樹の魔力のみで練り上げた魔力矢を作り出した。
初めて使う技術だし、繊細な魔力操作が要求されるから連発は出来ない。
その代わりにとてつもない魔力を凝縮してある。
「はぁはぁ、流石に逃げながら魔力凝縮の応用はしんどいぞ…。でも完成だ。あの大蛇竜の為にわざわざ作った矢だから、神話の似たような話から名前を取って『ミスティルテイン』と名付けるかな。」
「ギ、ギュオオオンッ!」
大蛇竜が動揺している。
やはりこの矢は効果的みたいだな?
渾身の力で弦を引き的に狙いを定めると、周囲に残る世界樹の魔力が聖弓に集まる。
「貫けぇーーーーーーッ!!」
ミスティルテインを放つ。
自身の魔力が一切込まれていないのは変な感覚だが、稲妻の如きスピードで的に向かって空気を裂いていき、障壁を出せなかったアンフィスバエナの右頭部に直撃した。
「ギュオ……」
「ギュアアアアアアアアアアアアアッ!?」
右頭部がミスティルテインの直撃により消滅して左頭部が苦しみの声を上げる。
俺がこれなら討伐出来そうだと思った直後、突如としてアンフィスバエナの右頭部に異変が起きた。
なんと失った頭が早くも再生を始めたのだ。
既に血管やら筋繊維がウネウネと動き、逆再生の動画を観ている気分だった。
「再生は卑怯だろ…。流石にこの技を何発も放つのは今じゃ無理だしどうするかなぁ…。」
俺があまりの再生速度に絶望していると世界樹の精霊から待ち望んだ言葉が届いた。
「ウルド様、アンフィスバエナが再生している間にこちらに戻って下さい。再封印の準備が整いました。」
「いいタイミングだな!くっそ、もう少し再生してろ!」
淡々と話された王国と世界樹の危機に一発目より時間がなく練り上げが甘いが、再びミスティルテインを作ると左頭部に放ち、こちらに来た穴に飛び込む。
「ギュアアアッギュアアアッ!!」
左頭部に命中して顔半分を吹き飛ばすも、右頭部の再生がほぼ終わりこちらに向けて毒の吐息を放とうとしているのを最後に見てギリギリ脱出に成功した。
「世界樹より与えられし力よ、その力を持って悪き竜を再び隔絶した世界へ切り離したまえ。そして守りの力を再びこの地へ。聖域作成!」
精霊が詠唱するとアンフィスバエナの魔力が徐々に小さくなり、穴が消えると同時に感じなくなった。
そして世界樹に新たな結界があるのを確認した俺は、やっと終わったのかと仰向けに倒れる。
「あー、しんど。流石に今日はゆっくり寝たいなぁ…。」
昨日はオフィーリアのせいで熟睡出来なかったからな…!
疲れで睡魔に負けそうになっていると、世界樹の精霊が仕事を終えてこちらにやって来た。
「ウルド様、大変お疲れ様でした。これで千年は安心です。最大限の感謝をここに。」
「感謝より俺との約束を守れよ。じゃなきゃお前を許さないからな、世界樹の精霊。」
俺がそう返すと、世界樹の精霊は初めて無表情から少しだけ優しい表情に変わった。
「ユグドラシル、私の名です。ウルド様との約束は必ず遂行しますので御安心を。それと最後に国王、あの子に会ってくれませんか?今回の件は全て私の行いなので、あの子に罪はないのです。」
俺は起き上がり、ティーザニア城に向かい歩きながらユグドラシルに答えた。
「別に会うのは構わない。ただ、あれはお前ら2人の罪だ。俺との約束が果たされる時に初めて許してやる。じゃあ俺は行くぞ。。」
振り返らずそう言い残し歩いていくが、ユグドラシルからの答えはなかった。
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