3章.17 心のある部品
GWって何…?
世界樹に向かう事を決め、謁見の間を出て行こうとする俺を国王が止めた。
「何故、私を殺さなかったのですか?貴方を利用して国内の王位継承問題に巻き込み、貴方の家族や友人を傷つけたのはこの私です。」
「ただの人形だった奴が偉そうに…。それに俺は殺し屋でも殺人鬼でもないぞ。死にたきゃ勝手に死ね。」
今回の一件は世界樹の精霊が原因なのは明らかだ。
国の生命維持装置の一部になっていた部品なんて、わざわざ壊す必要など今はない。
「許して欲しかったら部品としてじゃなく、王としてダークエルフの差別や偏見をこの国から無くせ。ハイエルフならそれぐらいやって見せろ。」
後は国王と第一王子に任せておけば良い。
俺はそのまま一度も振り返らずに世界樹に向けて歩き出した。
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ティーザニア王国のどこからでも視界に入る神聖な巨木、世界樹。
その大きさは途轍もなく、神聖な森の外からも勿論見えるはずなのだが、かつて世界樹の力に魅入られた者達が戦によって所有権を争い合った過去がある為、世界樹の精霊は守人としてエルフを選び、平和と安寧の代わりに世界樹の結界を守り抜く使命がある。
それに選ばれたのが現国王、リセリア・リ・ティーザニア。
かつての魔術の師であり元国王のハイエルフであり父、ゼノフ・リ・ティーザニアの娘である彼女は、父への憧れから日々研鑽を積み重ねてハイエルフへ至った。
しかし、彼女が夢見て憧れた国王とは簡単な物では無かったのだ。
国の内政、国内国外の不穏分子の排除など、彼女の心は荒んでいき、壊れていった。
彼女は考えた。
辛い決断の連続で壊れていく心を保ち、常に正しい選択をし続けるにはどうすれば良いのか?
そう、心を捨ててしまえばいい。
彼女は自ら心を捨て、国の部品となって800年もの間、国を守り抜いたのだ。
しかし、彼女達は気付いてしまった。
近々、世界樹の結界を張り直さないと国が危険な事を。
そして、自分にはその力がない事を。
力ある王族を待ち望んだが、ハイエルフに至る者すら現れずに王位を欲するだけの既に王族とは名ばかりの愚者ばかり。
ある日、世界樹様から啓示が来た。
伝説のスキル『精霊使い』を持つエルフが生まれたらしい。
世界樹様は新たにその方を国王にと提案があった。
私は国の部品のひとつ、新しい部品と取り換えられた部品は国には不用だ。
だから私は、この計画に自らの死を取り入れた。
次期国王の怒りを買い、親族達の命を奪い、ダークエルフという罪のない者達を憎しみの身代わりとして据えた罰だ。
悔いはない筈だった。
しかし、目の前の次期国王は決して楽にしてくれなかった。
私は王位継承を断られ、ダークエルフへの謝罪と国交回復、更に国王を続けよとは…。
しかも彼は一番の問題である世界樹の結界も解決に向かった。
あんなに迷惑をかけた国を救おうというのだ。
「世界樹様…私は、一体どうすれば…。」
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森の中を世界樹に向かって歩き続けると、幻術などもなく真っ直ぐ辿り着いた。
「おい、着いたぞ世界樹。早く出て来い。」
とっとと片付けて帰りたい俺は、だるそうに世界樹の精霊を呼びつける。
すると世界樹から大きな光の玉が現れて徐々に人の形となっていき、翠色の美しい髪の女性に変わった。
「よく来た精霊使い。私は世界樹の精霊ユグドラシル。私は貴方に嫌われてるはず。何故来てくれた?」
こいつが国王の中身か。
無表情でAI音声の様な抑揚のない声、世界樹の精霊に間違い。
「勘違いするな。俺はお前も国王も嫌いだ。二度とお前らと関わりたくないからやるだけだから気にしなくていい。それに…」
分かってしまった。
あの国王が命をかけて急に王位を譲るなどあり得ない。
「何か封印してるだろ。しかもとんでもない化け物を。」
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