3章.11 いざ、ティーザニア王国へ
里を出てとりあえずカサンドラに向かう事にした俺は、街道をひたすら風魔法を使い爆速していた。
「軍の進軍速度を考えると、カサンドラから俺の足で3日って所か?」
本当なら全力で飛ばして行きたい所だが、敵の戦力が不明なのと初めて場所というのもあって、俺はゆっくり進みながら情報収集する事に決めた。
といっても観光する様な安全な旅ではないので、今回はカトレアやパゴダさん夫妻には会わず、カサンドラはティーザニア王国の情報のみ仕入れて出立した。
何でも、第三王子が討たれたらしく、第二王子が他の王子達と協力して軍を起こしたらしい。
一方、穏健派として第一王子と第八王女が協力して事態の沈静化に当たっている、か。
ティーザニア王国も一枚岩ではないという事だな。
「まぁ、行ってみたらわかる、かっ!」
俺は道中現れたホーンウルフを片付けながら、昼間聞いたティーザニア王国の情報を整理しながら考えていた。
穏健派と言われていた第一王子と第八王女。
この2人に接触すれば流れが変わるかもしれない。
「とりあえず目指すは世界樹の森だな。後は燃やすなり脅すなりで国には入れるだろ。」
ホーンウルフを倒し解体も終わらせると、日も暮れ始めたのでここを野営地に決め、先程のホーンウルフの肉を串焼きにして調理し始めた。
「…うん、まぁ野営だし贅沢は言えないよな。こんな所で料理する訳には行かないし。」
塩胡椒のみで味付けしたワイルドな料理だが、ホーンウルフはそこまで臭みがないので不味くはない。だが、今まで日帰りで夜は美味しい料理を食べていた俺には物足りないと感じてしまった。
「明日の野営は、シチューでも作って食べるか。」
少し最近は楽をし過ぎかもしれないな、と思いつつ
俺は眠りについた。
次の日は夜明けと共に歩き出し、山をひとつ越えると村を発見したので、今日はここにお世話になる事にした。
「すいません、宿をお借りしたいんですが、どこか泊まる所はありますか?」
様子がおかしい。
俺の姿を見ると、村の人達があからさまに警戒をし出したのだ。
俺が不審に思っていると、村の男が1人話しかけて来た。
「あ、貴方様は、ティーザニア王国の方でしょうか…?…でしたら、どうかこの村の事はお見逃し下さい!お願いします!」
話が見えないな…。
とりあえず話を聞いてみるか。
「すいません、俺はティーザニア王国ではなく、外の里で生まれたエルフなので無関係です。ここはティーザニア王国とはかなり近い場所にありますよね?何か問題でも?」
俺に敵意がないと分かったのと俺がエルフだったのもあり、村人の男はすんなり事情を話してくれた。
「そうでしたか…!早とちりして申し訳ない!この村はティーザニア王国の交易場所でもあるんですが、先日の問題で商人様達が怖がってしまって…。第三王子殿下は何であんな事してしまったのか…。」
なるほど、唯一の交易が馬鹿のせいで途切れたと。
自業自得じゃないか?
そう思ったが、俺は良い事を思い付いた。
早速、村人の男に聞いてみる。
「すいません、実は俺、旅の行商人もやってるんですけど俺でも交易は可能なんでしょうか?それかティーザニア王国の担当の方に紹介をお願いしても?」
俺は村人の男に金貨を1枚握らせると、彼は驚いた様子で慌てている。
「こ、こんな大金!いただかなくとも紹介ぐらい致しますとも!何せ、商人様がいなければ怒られるのは私なんですから!」
ちょろ過ぎる…。
流石にここまで無防備だと罠の可能性すらあるな。
警戒だけは忘れずに俺は男に返す。
「いえいえ、これは投資でございます。偶然とは言ってもこれ程の商機を用意して頂くのですから、これぐらいさせて下さい。また何か情報がございましたら、お聞かせ頂ければ俺はそれで…。」
その後、俺は村の酒場に併設してる宿を借りて晩酌をしていると、ある一団が酒場にやって来た。
「失礼致します。貴方が今回、品物を見せて頂ける商人様でしょうか?私は今回護衛として同行させて頂いた、オフィーリアと申します。よろしく。」
この身なり、貴族か王族か?
しかし何で商人の護衛なんかやっているんだ?
疑問は次々と湧いて出て来るが、こちらも無難に返す事にした。
「初めましてオフィーリア様。俺はしがない流れの行商人で御座います。ティーザニア王国の方々が満足頂ける物をお出し出来るか分かりませんので、ご了承下さいませ。…そして、取引はどちらで?」
俺が下手に出ていると彼女達を騙せた様で、オフィーリアはこちらに笑顔を向けて話し出した。
「ならば、明日にでも早速行いたいと思う。今日は貴殿も疲れているだろう?ゆっくりと休んでくれたまえ。」
ふうん、流石にみんながあの馬鹿王子とは違うか。
悪いけど、利用させて貰うけどね?
「ありがとうございます。それでは明日の商談、楽しみにお待ちしてますので…。」
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深夜、俺は黒の外套を羽織り隠密スキルを使用してオフィーリアの部屋を目指していた。
わざわざ人質になりそうなのが中から出て来たんだ。
入場券として使って下さいって言ってる様な物だよな?
俺はオフィーリアの部屋の前に着くと、魔力探知で罠の類いがない事を確認して進入する。
女性の部屋に夜中に忍び入るなんてなぁ…。
流石に罪悪感が凄いけど、やましい事はしないから許してくれ…。
急な罪悪感を感じながらも、寝息を立てるオフィーリアの横に座り、剣を首に当てた。
「…お前、王族だな。声は出すなよ?分かったらゆっくり頷け。」
おかしい。
反応がない。
俺はゆっくり警戒しながら顔を覗く。
「気絶している…。」




