3章.3 接触
春も過ぎて雨季に差し掛かる頃、俺はいつも通りに討伐依頼を数件こなしてギルドに帰って来ると、何やら受付でミレイさんと3人組の男女が揉めている様だ。
「ですから先程も申した通り、冒険者の情報をお教えする事は出来ません。お引き取りお願い致します。」
「我々にその様な態度、許されるとお思いですか?私達をよく見て、よく考えて、…いいですか?もう一度聞きます。ウルドという冒険者の情報をよこしなさい。」
なるほど、俺関係のどっかの馬鹿か。
ミレイさんには申し訳ないと思い、また何か今度ご馳走してやろうと思いながら俺は、受付へと近付いた。
「ウルドは俺ですが。そんな不躾な態度を俺の知り合いに取る様な人達とお話しする気はございませんので、お引き取り下さい。」
俺は最初から拒絶の対応をして顔を見ると、3人共にある共通の特徴がある事に気付いた。
こいつら……エルフか……!
その瞬間、俺は警戒レベルを最高まで引き上げる。
「貴方がウルドですか。私達はティーザニア王国の国王勅命の騎士です。我々と一緒にティーザニア王国へ来て頂きます。貴方の意見など関係ありあませんのでご了承下さい。」
ザイルさんの言ってた意味が良く分かった。
こいつら異常だ。
俺は完全に敵対者とコイツらを認識した。
そしてひとつ、確信を得る為に質問する。
「ひとつだけいいですか?貴方方にとって、ダークエルフとはどういった存在でしょうか?俺は田舎の里で暮らしていた為、国の常識を知らないのです。」
すると男の騎士が当然といった顔で語り出した。
「ハッ!あの様な呪いの一族、生き残っていると考えるだけで胸糞悪いわッ!貴殿も同じエルフならその様な下賤な輩の名など口にしない方がいい。魂まで穢れてしまうぞ?」
確信した。
ああ、コイツらは敵だ。
この思想は俺と決して交わる事はない。
この答えで全ては決まった。
俺は魔力を全力で循環させ、指輪から弓を取り出だし、リーダーであろうエルフにバレない様に鑑定をかける。
「鑑定。」
【名前】ゴードン
【種族】エルフ
【性別】男
【年齢】286
【レベル】47
【スキル】剣術Lv8 弓術Lv8 指揮Lv6 隠密Lv5
286年間何をしてたんだコイツは…。
俺が肩透かしを食らっていると、ゴードンというらしいエルフが喋り出した。
「さっきから黙りこくって突っ立って何されてるんです?早く出立の準備をなさい。知り合いと言っていたこの子娘の首を跳ね飛ばしてもいいんですよ?分かったらさっさと………ッ!?」
俺は魔力を僅かな量で練った矢を、奴の左腕に飛ばした。
ゴードンは反応すら出来ずに左腕を失う。
俺は続けて3発、3人の右足を狙い魔力の矢を放った。
「ガッ!?」
「グァッ!?」
「ギャッ!?」
それぞれ奇妙な声を上げ、当然反応出来なかった3人の右足は、ふくらはぎを爆砕してその機能を失わせた。
「いいか、よく聞け。今回生かしておいたのは俺からの慈悲だ。国に戻って今から言う事を全て伝えろ。次に俺や知り合いに近付いた時点でそいつを殺す。もし守られないのなら、貴様ら王族を白み潰しに殺す。次は世界樹か?腐った国を放置する様な神は要らないだろ?俺が焼き払ってやる。最後は王様、お前だ。分かったか?……そうだ、確かこうだったな?お前の意見など関係ない。失せろ。」
俺は地面を這いずって逃げる3人を塵を見る様に一瞥して、何事も無かったかの様にミレイさんに話しかけた。
「またミレイさんにご迷惑をかけてしまいましたね。これ、依頼の部位証明です。ザイルさんがいたらお話があるんですが、この後確認して貰えますか?」
ミレイさんが呆然とする中、後ろからザイルさんが現れた。
「僕ならここにいますよ。しかし派手に立ち回りましたねぇ。まぁ、こうなる事は予測出来たのですが。ウルド君、彼等は絶対に君を諦めませんよ?必ず貴方か貴方の周りに接触する筈です。提案なのですが、一度里に帰るのは如何でしょう?ギルド職員やザガルタの君の知り合いは、僕が必ず守ります。カサンドラの方は紅の乙女に連絡して対応させるのでご安心下さい。貴方は一番大切な家族を守るんです。」
そうだ。
里に危険が及ぶ事を完全に忘れていた。
しかし、オリビアを連れて行っても大丈夫なのか?
もし、里のみんなに拒絶されたら、俺は……。
いや、それよりもみんなを守りたい。
まずは行ってから考えよう。
それに、俺の家族ならきっと、そんな事関係ないと言ってくれる。
だって、俺の両親だからな!
「ザイルさんすいません、では一度里に帰らせていただきます。動きがあったらコチラからも連絡します。どうか、お気を付けて。」
「君もですよ、ザイル君。モウラとリーリエによろしくお伝え下さい。たまには顔を見せに来いってね?」
ザイルさんのウインクに俺は笑い、急いで家に向かった。
「オリビア、悪いけど今から俺の里に行くぞ。時間がないから急いで準備してくれ。俺も準備してくる。」
俺がそう言うと、オリビアは何も聞かず肯定した。
「わかった。すぐに準備してくるっ。」
良い子だと頭を撫でて、俺は食材などの腐る物や俺とオリビアの服や下着を指輪に収納して、ドライアドを呼ぶ。
「ドライアド、今から里に帰るんだけど、この家に侵入しようとした者を拘束して貰えるか?それがエルフなら殺しても構わない。」
普段なら俺が言わない台詞に驚くも、ドライアドは了承する。
「何となく分かったわ。でも、貴方が殺すのを許可するなんてよっぽど貴方を怒らせたのね?どうやったのか見てみたかったわ。それで?殺した場合はどうする?そのまま地面に埋める事も出来るけど。」
そう聞かれ、隠すよりも公にした方が奴等は嫌だろうと考えて俺はドライアドに命ずる。
「いや、冒険者ギルド前に放置してくれ。これでザイルさん達にも伝わるし、俺に返り討ちにあったと街で噂される筈だ。存在がバレれば多少は動きづらくなる筈。」
それを聞くとドライアドは分かったわ、と言って帰って行った。
代わりに低級精霊が現れて数匹が家に入って来たので、恐らく侵入者が来たらドライアドに知らせるのだろう。
そこに丁度良く戸締りの確認を終えたオリビアがやってきた。
「ウルド!準備できたっ!」
それを聞いた俺はオリビアを抱き上げる。
「よし、じゃあ不本意ながら里帰りだ。行くぞオリビア。」
そう言って俺は里に向かって全力で駆け出した。




