2章.28 彗星
いつも読んで頂きありがとうございます!
章の終盤は長くなりがち。
轟音と共に敵に降り注いだ流星は、陣形など関係無く敵を貫いていく。
「えっ…?何、これ…?」
魔術師の1人が声を漏らす。
退避を忘れて魔術師達は目の前のあり得ない光景に呆然と立ち尽くしていた。
「ふぅ、では皆さんは退避をして魔力の回復をお願いします。それでは。」
俺はそう言い残し、主力部隊に合流するべく駆け出した。
土煙が晴れて視界が良くなってくると、8割近くが物言わぬ骸に変わっている。
まだだ、寧ろここからが本番なんだ。
明らかに反応が大きいのが、まだ生き残っている。
「ブモォォォォォッ!!!」
王と思われる一際大型のオークが雄叫びを上げた。
無傷ではないが、恐らく戦闘に支障ないレベルだろう。
そして更に、王の雄叫びに応える様にトロルや他の個体より強い上位種のオークが起き始めた。
数は残り9匹か。
雑魚は片付けたけど、この後が問題だ。
急ぎ主力部隊に合流すると、正に今から突撃する直前だった。
「何だか分からねぇが雑魚は全て吹き飛んだ!!魔術師部隊は立派に役目を果たしたんだ!!なら俺達もしっかり役目を果たそうじゃねぇか!!行くぞお前ら!突撃だ!!」
「「「「「うおおおおおおお!!」」」」」
雄叫びを上げながら主力部隊が突撃していく。
俺も後を続いて矢を実弾へと切り替える。
王は未だにトロルとオーク数匹の護衛がいるので、まずは近付く為にこいつらを排除しないといけなかった。
他の冒険者達が3人から2人で1匹を相手にしているので、俺はドライアドと協力して戦線に参加した。
「ウルド!拘束したわ!」
ドライアドが木の根を操りトロルを拘束する。
そのトロルの頭を火魔法を纏った矢が命中し爆発すると、地面に崩れ落ち再生する事なく絶命した。
「やっぱり頭を吹き飛ばせば再生しないな。ドライアド、次を頼む。」
倒し方が分かれば簡単だ。
同じやり方で次々と護衛を片付けて、ついに俺の目の前には王を残すのみとなった。
「鑑定。」
【種族】オーク王
【性別】男
【レベル】60
【スキル】戦斧術Lv10 盾術Lv7 指揮Lv8
自己再生Lv4 麻痺耐性Lv3 毒耐性Lv1
分かってはいたがかなりの格上だな…。
それに、自己再生がどの程度かに寄るけど面倒だ。
「ドライアド、腕に集中して拘束を狙ってくれ。」
「分かったわ!でも今のままじゃ無理よ!少し弱らせないと!」
何度か木の根で拘束を試すも、戦斧と盾で防がれる。
このまま見てても仕方ない。
さて、どうすればダメージを通せるんだ?こいつ。
そこで俺は前世の記憶を掘り返す。
こいつの再生能力で再生出来ない威力を叩き込むにはどうすればいいか。
周りを見ると頭の消し飛んだトロルの死骸が転がっているのを見て、俺はひとつ策を思い付いた。
俺はまず頭を狙い矢を放つ。
風魔法を纏わせて回転を加えた矢は、視認出来ない速さで頭目掛けて一直線に飛んで行った。
イメージは狙撃銃。
ライフリングを通って回転が加わった弾丸だ。
回転により、飛距離と貫通力が上がった矢が頭に向かって真っ直ぐ向かう。
それをオーク王は軌道を読んで盾で防ぐ。
「ブモォッ!?」
しかし風魔法の力で高速回転する矢は、盾を貫き腕に突き刺さった。
「これは効くみたいだな?王様。」
更に連続で3発を連射する。
次は頭では無く胴体だ。
少し精度を落として威力を上げる。
「ブモァッ!!」
胴体に2発命中し風穴を空ける。
そして1発は盾に当たり、オーク王の盾が砕け散った。
よし。
盾が無けりゃどうにでもなる。
だがオーク王を見ると、腹に空けた風穴は既に塞がりかけていた。
「自己再生ってこういう事か。これは近接職は大変だな。」
こいつと真正面から戦う所を想像すると、かなり骨が折れそうだ。
それに自己再生のせいで決定打を与え辛い。
ーーだが、それだけだ。
俺は再び2本の矢を放つとオーク王に向かって駆け出す。
「風の鎧。」
以前使った風の鎧を纏い、王に肉薄する。
2発の矢が右肩を貫き、戦斧を持つ腕が千切れて飛ぶのを見て俺はドライアドへ叫ぶ。
「今だ!拘束しろ!」
その瞬間、木の根が左腕に絡みつき大きな隙を作った。
「オラァッ!!」
俺は瞬時に弓を剣に持ち替えて袈裟斬りをお見舞いした。
「ブモァァァァァァァァァッ!!」
が、致命傷には至らなかったのか、オーク王の渾身の蹴りが俺の身体を捉えた。
「がはッ!!」
数m飛ばされる俺を見てドライアドが悲鳴のような叫びを上げる。
「嫌ぁッ!ウルド!!ウルド生きてる!?死んじゃ駄目なんだから!!」
だが、風の鎧で守っていた俺を蹴りで仕留めるには後一手、足りなかった。
ダメージが残る身体を起こし、俺は王を見据える。
「もう、避ける体力は、ないよな?ドライアド、今だ。」
そう告げた瞬間、4本の木の根が王の右腕両足胴体を拘束した。
飛ばされた先で再び弓に持ち替えていた俺は、瞬時に限界まで魔力を込めて魔力の塊の矢を解き放つ。
「ブモ…」
放たれた光の矢は、流星と違い一本の光となってオーク王の声を掻き消し、頭を消滅する。
そして、この戦いを引き起こした王はゆっくりと倒れ、二度と動く事はなかった。
「さっきが流星なら、こっちは“彗星“だな…。」
後ろでは主力部隊も戦闘は終わったようで、みんな歓声を上げて喜びを表している。
だが、少々ダメージを受け過ぎたのと魔力を消費し過ぎてしまったようで回復魔法に回す力は残っていなかった。
さっきの蹴りのダメージと魔力の枯渇でギリギリだった俺は、立っていられなくなり座り込む。
「嫌ッ!貴方が死んだら意味ないじゃないッ!絶対に死んじゃ駄目なんだからッ!」
ドライアドが飛んできて涙を流し叫んでる。
しかし、既に俺は満身創痍で脳が働かない。
ドライアドに、ちゃんと…伝えなきゃ…。
しかし、俺にはもう口を動かす余裕はなかった。
致命傷は受けてないから…多分死なないぞ…。
だけど…ちょっと疲れた、から…
休ませて…。
もう、限界だ…。
「ウルドーーーーーーーッ!!」
そうして俺はローガンさんとの戦い以来、久しぶりに意識を失った。




