2章.26 王の影
2章ラストスパートです!
翌朝、まだ朝焼けの時間に俺はギルドの扉を開く。
オリビアはまだ寝ていたのでご飯と書き置きを残したし、昨日、俺とミレイさんの会話を聞いてたので大丈夫だと思う。
俺がギルドに入ると既に30人以上の冒険者が集まっていた。
まだ状況が全く掴めてないので、受付にいるミレイさんの元へ向かう。
「ウルド君…君は執務室に行って。ギルドマスターが待ってるわ。」
これは本当に緊急事態だな。
俺は頷き、急ぎ執務室に向かった。
「ウルド君、緊急時の特例で君をCランクにする。
悪いけど今ここにいる時点で強制だ。」
部屋に入ると、いきなり俺の昇格が決まる。
しかし、そんな事は今どうでもいい。
「分かりました、お願いします。ランクなんかより早く何が起こってるか教えて下さい。」
理由は何となく察する事が出来るが、恐らくDランクじゃこの依頼の参加資格がないのだろう。
試験なしの特例なんて、ザイルさんが普段許す筈ない。
だか、今は事態の把握が優先だ。
「話が早くて助かります。今、ザガルタに向かってオークの軍団とトロルの集団が進行中です。オークは最低50、トロルは最低10です。現時点でオークには将軍級か、それ以上の上位種がいるはずです。絶対に、無茶はしないで下さい。」
オークとトロル…か。
確かオークは軍団を相手だと、上位種に寄るが難度がCからBになる。
トロルは単体ですらBランクの魔物だった筈だ。
そこで俺はひとつ疑問が浮かんだ。
「トロルもオークの軍団も何処から来たんです?しかも冬にわざわざ食料も少ない森の外に来るのは不可解ですね…。」
ザイルさんもどうやら同じ疑問に行き着いてたらしく、表情が更に険しくなった。
「良い疑問です。やはり君は冒険者として天性の才がある様ですね。一番初めに考え付くのが、更に上位種が森に住み着き奴らは住処を失ったという線。この場合、今はとりあえず奴らを全滅させれば解決です。そしてもうひとつ…。」
そう、俺はもうひとつの線が少し厄介だと思っている。
「奴らの中に更に上位種がいて率いている場合、ですね。恐らく各地で森を食い荒らしながら移動していると考えると、かなりの力を持つ個体という事。恐らくは王級。この場合、時期が悪過ぎますね。冬じゃなければもっと早く発見出来たし戦力も倍以上は用意出来たんですが…。」
王級。
その魔物の種族の頂点。
難度は間違いなくAだろう。
「やるしかないんでしょう?俺なら昨日、覚悟は決めてます。ザガルタの街には絶対入れさせはしない。」
妖精の誘い亭の人達、セオ君達のパーティ、ギルド職員の人達、そして…オリビア。
誰一人だって傷つけさせやしない。
「…そうですね。ウルド君の言う通りです。それでウルド君、実は君の配置について悩んでます。君は実力の底が見えない。本来なら後方で防衛なんですが、君なら最前線の方が良いと僕の勘が言ってるんですよ。そこで、鑑定をさせて貰ってもいいですか?」
ザイルさんの言う事はわかる。
俺の力を最大限発揮させるなら、城壁からの長距離射撃で戦力を削いでいき、残った上位種を全員で攻める。これが一番良い作戦だ。
ただし、王級がいなければ、だが。
この戦いはもう、力を隠している場合じゃない。
俺は魔弓術の隠蔽を解除した。
「いいですよ。ただし、他言無用でお願いします。今まで誰にも見せた事ないので。両親にもです。」
ザイルさんに少し動揺が見えたが、それもほんの一瞬で戻る。
「両親にすらですか。貴方は…。いや、では見せていただきますね。…鑑定。」
背筋がゾクッとする嫌な感覚。
やはり鑑定を受ける感覚は好きじゃない。
「こ、これは……!?」
【名前】 ウルド
【性別】 男
【種族】 エルフ族
【年齢】 18歳
【レベル】48
【スキル】弓術Lv15 剣術Lv9 風魔法Lv11
火魔法Lv4 水魔法Lv5 聖魔法Lv5
魔力操作Lv15 魔力探知Lv13 拳闘術Lv7
鑑定Lv8⚫︎ 精霊使いLv4 短刀術Lv5
魔弓術Lv10 毒耐性Lv3 麻痺耐性Lv3
呪い耐性Lv2 調合Lv1 採取Lv7 解体Lv10
隠密Lv15 鷹の目Lv6 魔力凝縮Lv7
料理Lv5
【称号】女神の加護⚫︎
「君は…、いや、申し訳ない。これは流石に見せられない筈だよ。前にオーク2匹の額の風穴は魔弓術を使用したって事だね。恐らくエルフの古き神々の歴史に残っている、狩猟神の光の弓とはこのスキル…。いや、今はそんな事考えてる場合じゃないね。君は最前線を頼むよ。僕が最終防衛地点で待機、場合によっては前線に出る。」
やはり隠しておいた方が良いみたいだな。
なんか神とか出てきたし、オリビアの件もある。 正直エルフの本国は俺にとって味方と思えない。
「了解です、行きましょう。」
時間が惜しい。
俺は執務室を後にして、集合場所のザガルタの街の入場門前へと急いだ。




