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2章.25 緊急事態

最近クリームシチュー食べてないなぁ

季節が秋から冬になり、ザガルタの街にも雪が降る時期になった。


俺とオリビアはこの機会に俺は料理の勉強を、オリビアは文字の読み書きの勉強をそれぞれ進めていた。


「おっ?字を書くの上手になったね。オリビアは物覚えがいいからすぐに出来ちゃいそうだね。」


俺が頭を撫でながら褒めると、オリビアは猫の様に目を細めていた。


「えへへっ。早く覚えてウルドのお手伝いがしたいのっ!」


嬉しい事を言ってくれるじゃないか。

学習意欲が高いのは良い事だ。

オリビアには1人で生きていく力を手に入れて欲しい。

選択肢は多い方が良いからな。


「じゃあそろそろ俺は晩御飯の準備するからここまでにしよっか。今日は寒いし、シチューにしようかな。」


オリビアの勉強を一区切りにして、俺はキッチンに向かって晩御飯の仕込みをする事にした。


じっくり煮込むこと2時間。

これは最高傑作と言っても過言ではない。

今回はビーフシチューならぬオークシチューだ。


「…うん、美味い!オリビアー?お皿の準備をお願い出来るー?」


「はーいっ!今並べてるよー!」


俺は完成したシチューをテーブルに持って行きお皿に装って行く。


「よし、今日のシチューは自信作だからね。はい、いただ………なんだ?」


さぁ食べようとした瞬間、ドンドンドン!と玄関から扉を叩く音がする。


この時間に何の様だ?


俺は念の為、魔力探知を使用するが反応は1人みたいだった。


「俺が出るから、もし俺が逃げろと叫んだら奥の窓から逃げるんだ。いいね?」


「う、うん…。」


一応オリビアに戦闘になる可能性を考え、逃げる準備をさせて玄関に近付く。

ドンドンドン!と未だに鳴り響く扉の前に立つと、表から聞き覚えのある声が聞こえた。


「……ド君!…ルド君!いない!?ウルド君!お願い…!」


ミレイさんの声だ。


慌てて扉を開けるとミレイさんが険しい表情で寒い中、俺を呼びに来たみたいだ。


しかし、よく見たら泣いている……?


「ミレイさん…?何があったんです?とりあえず中に入って下さい、どうぞ。オリビア、お皿をもう1枚お願い。」


「わ、わかったっ!」


急いでミレイさんを家に入れたが氷点下の外に暫くいたらしくガタガタと震えてたので、シチューをミレイさんにも装ってあげた。


「とりあえずシチューが冷めちゃうのでご飯にしましょう。はい、いただきます。」


「いただきますっ!」


俺とオリビアはシチューに手を付け始めたが、ミレイさんは俯いて動かない。

俺は食べる手を止めてミレイさんに話しかけた。


「ミレイさん?何があったか知りませんが、温かい内にシチュー食べて下さい。今日のは最高傑作なんで美味しいと思いますよ?」


そう俺が言うと、ミレイさんは目に涙を溜めて話し出す。


「ウルド君…。君に、依頼が来たの……。もし、これを受ける場合は明日の朝一にギルドに来て欲しい。私から伝えられるのはこれだけ。勿論、今、断ってくれて大丈夫。……どうしますか?」


ヤバい案件なのがミレイさんの表情を見てすぐ分かった。

しかし、何事だ?冬に指名って事は緊急事態なのは間違いないだろう。


うーん、考えても分からんしやるか。


「明日の朝一ですね。分かりました。オリビア、明日は仕事が入っちゃったから家で待っててね。なるべく早く帰ってくるから。」


一瞬、ミレイさんの肩が震えた気がしたが、理由が聞けない今それを心配しても、ミレイさんが何か抱え込むだけだろう。


「うんっ!家のお掃除とかお勉強して待ってる!」


この様子なら安心だ。

最近のオリビアなら留守番ぐらいで心配はいらないか。


「なら、とっととご飯にしますかね。ちょっとシチュー温め直すから待っててね。ミレイさんも食べていって下さい?このまま外出たら風邪引いちゃいますから。」


ミレイさんは食欲がないのかシチューに手をつけなかった。

夕食を終えると紅茶を淹れ、本当は聞く気はなかったけど流石に放っておく訳にも行かないので、憔悴し切っているミレイさんから話を聞いてみる事にする。


「はい、紅茶です。それで?何があったらいつも元気なミレイさんがそうなるんですか?ドラゴンでも倒してこいとか言わないですよね。」


ミレイさんは紅茶を一口飲むと、何か決意した顔になり話し出した。


「ウルド君、私は出来れば断って欲しい。その子は…、貴方がお世話してるんでしょう?明日の朝一にカサンドラを目指せばまだ間に合うわ…。」


ある程度察した。

恐らく何かがザガルタに近づいてる。

しかも、ギルド職員が退避を推奨するレベルの何かが。


でも、逃げるなんて有り得ない。

関わったみんなを守りたい。

そして、そして何より…。




「なるほど。なら余計に残りますよ。まだこの家、買ったばかりなんで。」

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