2章.21 親バカ
めっちゃ書いてたら2章が終わりそうです
戻って来たミレイさんに呼ばれて解体場に連れて行かれた俺は、ザイルさんとミゲルさんの前で持って来た3匹のゴブリンの上位種を取り出した。
「これは…、確かにゴブリン騎士とゴブリン将軍ですね。それに、50匹近くのゴブリンですか…。」
「騎士は弓で一撃、将軍は剣で袈裟斬りが致命傷か?…お前が“剛剣“に認められてなけりゃ、信じられんかったな…。」
ザイルさんとミゲルさんが絶句している。
いや、ゴブリンで大袈裟な…。
「Dランクの依頼ですよね?あれぐらいの集落で捕まった人間がいなかったら、俺なら1人で行った方が楽ですね。流石に人質がいたら救出して一旦帰りましたが。」
そう伝えると、ザイルさんは呆れたような顔をしていつもの表情に戻っていた。
「ウルド君にDランクは通過点に過ぎませんね。今回の依頼、ありがとうございました。この規模まで大きくなった集落だと、最悪、討伐隊を組まなければいけなくなる所でした。しかし、ウルド君らしくありませんね?カサンドラで何かありましたか?」
ザイルさんに隠し事は出来ないみたいだ。
しかし、ザイルさんにダークエルフへの差別意識があったら俺は、ザガルタを出るしかなくなるな。
でも、このままザガルタで旅の準備を進めるには事情を説明した方が動きやすい。
俺は意を決してオリビアについて話す事にした。
「実はカサンドラの闇市で迫害されるダークエルフの子供を保護したんです。その子との生活費と、安心出来る拠点が欲しくて金を貯めようかと思っているので、少し本気で稼ぐ事にしました。」
すると、ザイルさんとミゲルさんは一瞬驚いた後に何故か笑い出した。
「クククッ、つい最近、独立したというのにパパですか!全く、ウルド君には驚かされてばかりですね?安心して下さい。エルフの本国や一部の人間の間では未だに迫害があるそうですが、ザガルタは辺境の街です。僕やミゲル君を含めて、ギルド職員にそんな偏見を持つ者はいませんし居させませんよ。」
「ハッハッハ!!1週間遊びに行ったら未婚の子連れになるエルフなんて、世界探してもお前ぐらいだろうよ!あー、腹痛えッ!!」
勢いでやったとはいえ、ここまで笑われるとは思わなかったな…?
まぁ、これでひとまずは安心してオリビアと街を歩けるってもんだ。
「もし、一緒に歩いてる所に何かされたら俺はそいつを許す事はないので、手を汚さずに済みそうで安心しました。流石にこの街にいられなくなりますからね。」
一応、俺は牽制として正当防衛は辞さないのと、オリビアへの馬耳雑言には徹底抗戦する事を匂わせておく。
「クククッ、やはりモウラの子ですよ君は。街中で相手を急に侮辱発言する輩などは痛い目を見ても仕方ありません。ただし、命は取らないようにして下さいね?衛兵が来た時に説明が面倒になるので。」
これに関しても問題ないと。
…しかし、俺は父さんほど親バカじゃないぞ!
そこでようやく俺の顔の強張りが無くなったのを見て、ザイルさんから報酬の話になった。
「とりあえず今回の依頼の件とウルド君の事情も理解しました。報酬はこの後、ミレイさんに会議室に持って行かせるので受け取って下さい。金額が金額なんで、受付ではちょっとあれなんで。この調子で早くCランクになれる様に頑張って下さいね?」
「あの死骸はこっちで引き取っていいか?勿論報酬は出すぞ。次にギルドに来た時にミレイから受け取ってくれ。」
本当にオリビアには思う所がない様子の2人に、俺は疑いを向けた無礼を詫びる。
「御二方を疑ってしまいすいません。本当にありがとうございます。死骸は無礼のお詫びに受け取ってください。それでは失礼します。」
俺は謝罪をして一礼し、報酬を受け取る為に会議室へと向かった。
会議室に入り30分程待つと、布袋を持ったミレイさんが入ってきた。
「ウルド君、今回の報酬なんだけど帰りに気をつけてね?……達成報酬と討伐報酬、素材報酬と合わせて、合計で金貨20枚と銀貨8枚になります。」
ゴブリンでこんなに貰えるの…?
といっても家を買うのにはまだ足りないか。
「ありがとうございます。俺には魔法鞄があるので大丈夫ですよ。美味しい依頼なんでまたあったら教えて下さいね。率先して受けるので。」
俺がそうお願いすると、ミレイさんがいつもの大きな溜め息を吐いた。
「ギルドマスターからも貴方なら大丈夫って言われたわ。むしろ、今回のような厄介な依頼を優先して斡旋するようにってね。もし依頼があったら、次からは指名依頼って形になると思うけど、無理はしないでね?」
これでCランクに早く行けって事だろうな。
ザイルさんには頭が上がらないや。
「分かりました。じゃあ、うちの子が待ってるんで失礼します。また明日来ますね。」
「ふえっ!?ちょっと!うちの子って何!?ウルド君!?ちょっと!ウルド君ってば!」
驚くミレイさんをそのままスルーして、俺はオリビアの待つ宿へと帰ったのだった。




