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2章.20 死ねない理由

豚足にハマってます


翌朝、俺達はいつもより早めの朝食を食べていた。

俺が今日から冒険者活動を再開するからだ。


オリビアは部屋でお留守番していて貰い、俺は前と同じで日帰り出来る依頼を片っ端から片付ける。


しかも最低限の処理をしてギルドに持ち込む事にすれば、解体手数料を引かれても時間に余裕が出来る分、討伐数が増えて売却報酬も増えるという、かなり良い作戦なんじゃないか?


「さて、早めに帰る様にするけど、勝手に外に出ないように。約束出来るかな?」


「うん。わたし、お部屋にいる。寂しくても我慢する。だから、早く帰ってきてね?」


俺はオリビアの頭を撫でて立ち上がる。

あまりダラダラして、オリビアの決意が鈍ったら行きづらくなるからね。


「もう少し落ち着いたら休みを作るからね。休みの日に一緒に外を歩いてみて、少しずつ慣れていこう。それじゃ、行ってくるよ。」


「うん!行ってらっしゃいっ!」


いってらっしゃいか。

里を出てからまだ1年経ってないのに、なんだか懐かしい気がするなぁ。


…なんだかんだ俺も寂しかったのか?


そんな事を考えて俺は苦笑しながらも、半年以上振りの挨拶をオリビアに返した。


「うん、行ってきます。」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ザガルタ冒険者ギルドに来るのも久々だ。

俺はギルドに入ると、早速依頼を物色する。


「オーク討伐、フォレストウルフ討伐、おっ!ゴブリン集落の破壊、及び殲滅か。達成報酬金貨10枚はかなり美味しいな。これにするか。」


約1週間ぶりに来たギルドで美味しい依頼を見つけたので、久々に会うミレイさんの列に並ぶ。

数分待つと、相変わらず元気そうな声が聞こえた。


「ウルド君!おかえりなさい!怪我なく帰って来てくれて、お姉さん嬉しいよ!それで今日は…、いやこれソロ用の依頼じゃないから!却下よ却下!」


再会を喜ぶ事10秒。

案の定止められてしまった。

まぁ、こうなるとは思っていたので問題ない。

オリビアを引き取ると決めた時、俺は決めた。

あの子を守りながら旅をする力と金を手にすると。


「ミレイさん、俺なら大丈夫です。ゴブリン集落なら今日中に潰して帰って来ますよ。百匹いようが殲滅して来ます。これからは本気で上を目指さなきゃいけなくなったので。」


俺の表情で何かを察したのか、一瞬ミレイさんが悲しい顔をした気がしたが、直ぐにいつもの表情に戻った。


「カサンドラで何かあったのね?全く、せっかく私の担当で初めて高ランクになれそうな力がある貴方が死ぬのは嫌なの!絶対に生きて帰って来るのよ?約束だからね?」


ミレイさんにはいつも心配ばかりかけてしまう。

でも、今も昔も死ぬ気はない。

今はオリビアを独りに戻す訳には行かない。



「安心して下さい。死ねない理由が増えたので。」



そう言って俺は街の外に向かって歩き出した。

命懸けの任務に行くみたいな感じで出て来たけど、大体の場所は聞いてるし、魔力探知を使えば規模も分かってしまう。

俺はその情報を元に、ゴブリンを殲滅するだけだ。


片道2時間程歩いた先の森の奥、そこにゴブリンの集落を発見されたらしく、普段のゴブリンは勿論、今回は上位種も多数いるだろうとの事。


俺はいつもの風魔法でかっ飛ばし、30分程で集落があると聞いた森に着いた。


魔力探知は50匹近くのゴブリンの反応が引っかかってるので、今回は木々を飛び移りながら集落へ近付いて行く。

森と共に育った俺には楽勝だ。


暫く進み、集落を見下ろせる木の天辺に立って眼下の様子を伺う。


「上位種っていっても所詮ゴブリンか。強そうなのは数匹ってとこだな。」


人の反応はないので、遠慮なく奇襲させて貰う事にしよう。


俺は弓を出し、魔力の矢を作り出す。

今回は今までの比じゃないレベルで魔力を溜め込んだ。


「さて、何匹生き残るかな?」


イメージは矢の雨。


俺は集落の上に向かって矢を放つ。

すると集落の上に放たれた魔力の塊から、流星の如く光が集落に降り注いだ。

この光景を見る者がいたら、幻想的で美しい光景に見えるだろう。


しかし、ゴブリン達にとっては悪夢の始まりだった。


光が地上に降り注ぎ、ゴブリン達の身体に無数の風穴を空ける。

それは家の中にいようと関係なかった。

着弾する轟音とゴブリン達の絶叫を聞きつつ、俺は生き残りを探す。


光の雨が止むと、数分前まで目の前にあった集落は跡形もなく粉々になり、バラバラになったゴブリン達の遺体が転がる地獄絵図が広がっていた。


しかし魔力探知にはまだ3匹の反応が残っている。


俺は地上に降りて反応がある方へ歩き出した。

すると、1匹の一際大きなゴブリンを守る様に護衛する装備が整ったゴブリンが2匹が目の前に現れた。


「鑑定。」



【種族】ゴブリン将軍(ジェネラル)

【性別】男

【レベル】35

【スキル】剣術Lv5 盾術Lv3 指揮Lv2



【種族】ゴブリン騎士(ナイト)

【性別】男

【レベル】28

【スキル】剣術Lv3 盾術Lv1



ゴブリンの割には強いな。

魔石を売れば良い金になりそうだ。


矢筒から2本の矢を取り出すと、流れる様に風魔法を纏わせて弓を引く。


高速連射された矢は、ゴブリン騎士の眉間に突き刺さり、勢いを殺せなかったゴブリン騎士の頭が、胴体から千切れて飛んだ。


それを見て明らかに動揺しているゴブリン将軍に向かって駆け出す。

弓と矢筒を指輪に仕舞い、闇市で購入したミスリルの剣を代わりに取り出した。


「集落を作る場所を間違えたなお前。」


魔力操作を全力で発動して風魔法を全身に纏わせる。

これはいつも足にだけ使って爆速移動に使っていた魔法の応用で、“風(ウインド)の鎧(アーマー)“と名付けた。


風を纏って高速で接近した俺に剣を振るうが、風の鎧に阻まれて、風圧で剣を弾き飛ばす。


俺はそのままゴブリン将軍に袈裟斬りにすると、致命傷になったのか膝をついた。

諦めたのか既に動けないのか、ゴブリン将軍は地面を見つめ抵抗はない。


「悪いな。今、楽にしてやる。」


そう告げて、俺はゴブリン将軍の首を跳ね飛ばした。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






その後、地道に魔石と討伐証明に使うゴブリンの耳と、上位種がいた報告の為にゴブリン騎士とゴブリン将軍の死骸を回収してザガルタに帰還した。


出発から4時間程で戻ってきた俺を見て、ミレイさんは幽霊でも見た様な顔をしているが、気にせずミレイさんの元に向かう。 


「ゴブリン集落の依頼終わりました。大体50匹ぐらいの集落でしたよ。ゴブリン騎士2匹とゴブリン将軍が1匹いたので、証拠として死骸を持って来たんですが確認します?要らないなら依頼に出る時に外で燃やしときます。」


ミレイさんは数秒間呆気に取られていたが、ハッと意識を取り戻した。


「ち、ちょっと待って!!ギルドマスターを呼んできます!!私じゃ無理!!」


そう言って走り去るミレイさんを見て、俺は早く報酬貰って帰りたいと思うのだった。

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