2章.13 初めてのテンプレ
ストックが貯まったらすぐ出しちゃうやつ
カサンドラに着き、先ずは冒険者ギルドに向かう。
依頼達成の報告の為だ。
「ギルドも凄いな…。やっぱり儲かってるんだなぁ…。」
少し気後れしつつも、ギルドの扉を開いて受付に向かう。
「冒険者ギルド、カサンドラ支部へようこそ。本日は依頼達成の報告でよろしいでしょうか?」
「はい。これ契約書です。」
流石は都会のギルドだ。
恐らく、初めて見る冒険者が依頼も見ずに真っ直ぐ受付に来たのを見ての対応だろう。
「確かに受理致しました。こちら報酬の金貨1枚です。依頼達成おめでとう御座います。」
「ありがとうございます、それでは。」
プロの対応に俺も営業スマイルで返し、他に用事もないので宿を探しに街に出た。
パゴダ商会から今日は疲れてるだろうとの事で、ゆっくり休んで明日、会食はどうか?との提案があり、俺はそれを了承した。
宿も用意すると言われたが、初めて来た街なので街ブラついでに自分で探すと丁重に断った。
流石にこんな依頼に金貨1枚なんて高額報酬を出してもらって宿まで用意して貰うのはな。
宿場街を探して大通りを進んでいると、前の方から叫び声が聞こえた。
「スリよ!その男を止めて!!」
何事かと見ると、男が通りの人間を振り解きながらこちらに走ってくる。
異世界のテンプレじゃんか。
まさか俺が体験するなんてな。
流石に街中で武器は抜けないので、護身用に少し鍛えた拳闘術を使うか。
「どけ!!ぶっ殺されてぇかッ!!」
これは本当にスリだな。
そう判断して、真っ直ぐ俺に向かって来ながら叫ぶ男の顔面に、思い切り拳を叩き込んだ。
「へぶッ!?」
殺さないように一応手加減をした右ストレートで、男はそのまま気絶したようだ。
すると、それを見ていた通行人達から歓声があがった。
「兄ちゃんやるな!冒険者か?エルフなのに珍しいな!」
「やるじゃねぇか!一杯奢るぞー!」
「エルフのお兄さーん!うちで一杯やってかなーい?」
流石は商人の街だ。
他種族が共生している街の様子だからか、エルフにも普通に接してくれている。
ただ、大通りだったので人が多く、芸能人でも現れた様な騒ぎになっていた。
は、早く立ち去りたい…。
俺は恥ずかしくなり、とっとと済ませて去ろうと気絶した男が抱えた女物の財布を抜き取り、叫び声をあげた女性に返却した。
「はい。スリが多いと聞きましたので、次から気を付けて下さいね。それじゃ。」
「ま、待って下さい!本当にありがとうございました!何かお礼をさせて下さい!」
俺がそのまま去ろうとすると、案の定呼び止められた。
いやこんな注目されるの恥ずかしいから、帰してくれないかなぁ…。
そんな事言える訳もなく、それならばと、良い宿屋を紹介してくれとお願いした。
「うち、宿屋やってるんです!結構ここだと有名なので是非うちに泊まって下さい!」
俺はこのまま歩いて注目を集めるのも嫌なので、一泊して微妙なら別の宿に移れば良いかと考えて、了承して女性の後に着いて行った。
数分歩くと、宿屋がちらほらある中、一際大きな宿がある。
確かに立派な宿屋のようだ。
「ここが私の家です!今、両親に説明して来ますので!」
そう言って中に入ると、暫くして母親と思われる女性を連れて戻ってきた。
「娘を助けていただきありがとうございます。宿をお探しとの事ですが、是非うちにお泊まり下さい。
お代は要りませんので。」
タダより怖いものは無い。
というより、パゴダ商会の好意を断っているので、流石に悪い気がする。
「いや、そんなつもりで助けた訳じゃないので、普通に払わせて下さい。もし納得出来ないなら食事をサービスしてくれたら俺は一番嬉しいので。」
そう伝えると、母親は少し困った顔をして渋々受け入れてくれた。
「…分かりました。ではせめて、今日のお食事は無料で提供させて頂きます。うちは一泊銀貨4枚ですが宜しいでしょうか?」
意外と安いな?まぁ、気を遣わせて安く提示してくれているのかも知れないけど。
「大丈夫です。では、お世話になりますね。」
何はともあれ宿が決まった俺は、少し疲れたので宿で仮眠を取り、併設された酒場に向かった。
「あっ!こちらにお座り下さい!たくさんサービスさせて頂きますね!お父さーん!来たよー!」
先程助けた娘さんだ。
どうやら酒場のマスターをやっているらしい。
すると、厳つい顔をしたお父さんと呼ばれる男がこちらに向かってきた。
この世界の宿屋の店主は厳つい男しかいないの?
「娘が世話になったな!無料で泊めてやるってのに断るなんて謙虚な野郎だが、それも気に入った!俺がカサンドラで一番旨い飯を食わしてやる!」
でもやっぱり良い人なんだよなぁ…。
その後、オークの腸詰めやビッグバードの唐揚げなどザガルタにはない酒に合う料理を酒と楽しみ、カサンドラ最初の夜は最高の夜になった。




