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2章.9 格の違い

久しぶりにサウナに行きたい今日この頃

ローガンは大剣型の重量のある木剣を手に取り修練場の中央に向かった。


そしてその大剣を担ぎ上げこちらを見据える。

そして、ローガンは意外な提案をしてきた。


「お前、エルフだし弓が得意なんだろ?今回は禁止だ。剣でかかってこい。ハンデで俺はここから動かない。」


メイン武器を封じられたが、俺は始めから剣のみで挑もうと思っていた。

弓を使った所で、恐らく結果は変わらない。

なら始めから修行だと割り切って剣術で戦った方が、俺はもっと強くなれる、そんな気がした。


俺は静かに長剣型の木剣を手にして構える。


汗が止まらない。

勝ち筋が見えないのだ。

そう、“レベル“が違い過ぎる…


しかし、こんなチャンスは滅多にない。

明らかに格上の相手に、俺は命のやり取りなしでの本気をぶつけられる。

俺がこれから先、鍛錬と戦闘を繰り返してたどり着く山の頂を垣間見る事が出来るんだ。


「こんなに嬉しい事はないな。」


俺は自然と口から言葉が漏れる。

するとローガンは俺を見て楽しそうに笑った。


「ハハッ!俺の前に立って笑うか!やっぱりお前、面白いよ。今出せる本気で打ち込んで来い。」


それを聞き、周りなど気にせず魔力操作、魔力集中、を同時に全力で発動させた。

剣に魔弓術と同じ量の魔力を集中させ風魔法を纏わせ、俺はローガンへと駆け出す。


最初から全力で斬りかかる。

しかし、俺の全力の振り抜きをローガンは片手で大剣を振るい、払い除けた。


「そんな物か?それじゃ旅の道中ですぐにのたれ死んで終わりだぞ?」


ん?何で俺が旅に出る事を知ってるんだ?


俺が疑問に思うと、ローガンはそんな事は知らないと言う様に大剣を構える。


「ほら、ダラダラとやっても仕方がない。次で決めるぞ?さっきの腑抜けた剣じゃ最悪死ぬかもな。」


冗談では無かった。

大剣に魔力が集まっていく。

濃密な魔力で大剣が包まれている。


魔力探知を全力で使っていたら心が折れていたかもしれないな。


俺は、どうせ最後ならと次の一撃を考えずにローガンの真似をしてみた。

いつもより剣に魔力を凝縮させていく。

木剣が崩壊しない様、ギリギリを見極めながら魔力を込めて凝縮していく。


それを見て驚愕の表情でザイルが呟く。


「ウルド君、まさかこれ程とは…。」


俺は限界ギリギリまで魔力を凝縮させると、これから打ち込む相手を見据え叫んだ。


「これが今の俺の全力です!行きます!」


その後、返答を待たずに全力で駆け出す。

ローガンは構えを変えず、こちらを見据えたままだった。


ふざけやがって。一泡吹かせてやる。


俺はローガンの間合いに入る一歩手前で隠密スキルを発動させた。

そして背後に周り渾身の一振りをした。


「甘いな。」


次の瞬間、裏拳が俺の顎に入り、俺は視界が歪みそのまま意識を失った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





目が覚めると医務室のベッドの上だった。

知らない天井だ。

いや、知ってはいるか。


「あー、俺負けたんだな。裏拳は反則だろ…。」


全力を尽くして負けたからか、悔しさよりもスッキリした気持ちだ。


そんな事考えていると、ミレイさんが医務室にやって来た。


「ウルド君!?目が覚めたのね!?直ぐにギルドマスターを呼んで来るわ!待ってて!」


そう言うと医務室から駆け出し、数分後に厳つい男達を再び引き連れて医務室に現れた。


「ウルド君、大丈夫ですか?ローガンには僕からキツく叱っておいたので。まさか“異名持ち“がEランク相手に何してるんですか全く。」


ザイルさんのお説教に目を向けてローガンは慌てて言い訳した。


「だから、俺はてっきりBかAランク試験だと思ったんだよ!ランク詐欺じゃねーか!あのモウラの野郎が息子を独り立ちさせたって言ってたし、ザイルだって俺に任せたんだから同罪だろうが!」


父さんの知り合いなのか。

俺は気になってローガンに聞いてみた。


「あの、ローガンさんでしたよね?父のモウラと親しいんですか?」


するとローガンは戦っていた時と違い気持ちの良い笑いで返す。


「モウラとリーリエとは昔、同じパーティで旅してたんだ。お前の事をモウラの手紙で知ってな。アイツがお前に里を出る許可を与えたって事は、実力を認めたって事だろ?だから気になって見に来たんだよ。」


父さん母さんの仲間だったんだ。

そりゃ、強い訳だよ…。


「お前が旅をするなら俺が活動してる獣人国クティスにそのうち来るだろうし、それまでに強くなれ。お前に会わせたい奴もいるからな。それじゃ見たい物は見たし、国に帰るわ。ウルド、ソロで旅するなら剣も磨けよ?間合い入られたらお前死ぬぞ?」


そう言い残し、ローガンは手を振りながら軽い感じで去って行った。


残された俺達は呆気に取られた後、そうでした!と言うザイルさんの言葉でハッと意識を戻した。


「ウルド君、色々ありましたが試験は合格です。おめでとう!ギルドカードを更新しますね。カードをこちらに。」


ザイルさんに言われてカードを渡すと、ザイルさんが魔力を流す。

数秒で終わり、俺にカードを返した。


「はい、終わりです。Dランクは冒険者として中堅、ここから依頼の難度が一気に上がります。まぁ、ウルド君なら問題ないでしょうけど気をつけて下さいね。それと、貴方に紹介したい人物がいるんです。こちら、ギルドの解体場のリーダーをしているミゲル君です。」


すると、ずっとザイルさんの横で黙って立っていた厳つい男がついに口を開いた。


「改めて俺はミゲルだ。お前の持ち込んだオーク2匹いただろ?お前が何であそこまで丁寧に血抜きを済ませておいて解体せずに持ち込んだのか、ずっと疑問だったんだが疑問が晴れた。Eランクならオークの解体を知らなくても仕方ないからな。」


俺はミゲルさんの言葉に、冒険者として座学の大事さを改めて感じた。


「ウルドです。オークの金額が高かったのはミゲルさん達のおかげだったんですね。ありがとうございました。俺も知らない魔物の詳細や解体方法を勉強しなきゃですね。」


そう俺が言うと、ミゲルさんは厳つい顔が少しだけ優しくなった気がした。


「それなら街の本屋で買うか、ギルドで貸し出してるからな。分からない所があったら解体場に来い。俺が暇だったら教えてやるよ。お前みたいな冒険者は貴重だからな。」


本当にこのギルドは良い人ばかりだ。


俺はミゲルさんに感謝を伝えて、その後に早速ギルドから解体の本を借りてセオ君達との待ち合わせの時間まで勉強したのだった。

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