間話 ある冒険者についての申請書
ザイル視点の間話です!
ギルドマスターである僕は、今日も朝から机の上の書類をひたすらに片付けていた。
気付いたら増えているサイン待ちの束に嫌気が差しながらも、急ぎの確認書類の1つに気になる内容の書類を見つける。
「これはミレイさんですか。ウルド君のDランク試験申請…、オーク2匹をソロで、しかも無傷ですか。いいじゃないか!勿論、許可です許可!」
まさか初日のクエストで目に見える功績を上げてくれるとは。
「この調子でCランクまでとっとと上がってくれたら、仕事を振りやすいんですが。」
こればかりはウルド君の力と成長を信じて待つしかないので、心の中でエールを贈っておいた。
仕事に戻ろうと書類に目を戻すと、執務室の扉がノックされる。
どうぞ、と通すと、扉を開けて入って来たのは解体場のリーダーを務めるミゲルだった。
僕は珍しい来客に少々驚くも、顔に出さずに対応した。
「ミゲル君が来るとは珍しいね。何かあったのかい?良い話なら嬉しいんだけどね。」
僕が少し戯けて言うと、どうやらミゲル君は真面目な話らしい。
真剣な表情で1つ質問をされた。
「すまん、ちょっと気になる仕事が入ってな。頼みがあるんだが、昨日、オーク2匹を丸々持って来た冒険者を紹介してくれないか?」
まさかのお願いだった。
僕は流石に驚いて聞き返そうとすると、ミゲル君はさらに続けた。
「理由は見てもらった方が早いな。すまんが解体場に来てくれ。面白い物が見れるぞ?」
どうやら悪い話ではないらしいので、僕はミゲル君と一緒に解体場に向かった。
解体場に着くと、首と胴が分かれたオークが2匹並んでいた。
その隣では、ベテランの解体職人達が何やら話し合っている。
「お前ら!解体を始める時に呼ぶからちょっと下がってろ!ザイルさんの邪魔だ!すまん、この頭の傷を見てくれ。それが致命傷で恐らく即死だ。」
あり得ない。
いや、正確には僕には出来るから有り得なくはない。
ただ、これを討伐したのはウルド君の筈。
2〜3cmの綺麗な風穴を見るに、魔法での一撃だ。
こんな魔法を使えるとしたら、ランクB、いやAにすら届き得るのでは?
だからこそ、あり得ない、のだ。
「なるほど、ミゲル君はこのオークを持って来た冒険者のランク、どう見ます?」
僕は他の者の意見も聞きたくてミゲル君に質問してみる。
すると、ミゲル君は徐々に興奮しながら答えた。
「実力だけなら間違いなくB以上だろ。こんな傷見た事ないしな。それに見ろ、血抜きをしっかりしているから品質は最高だ。ここまで処理して解体してないって事は解体方法知らないんだろ?だからおかしいんだよ。チグハグだ!これで気にならないやつはいないだろ!で?どこから流れて来た冒険者だ?まさか異名持ちとかか?」
さて、どうするか。
僕はふと、先程の申請書の存在を思い出して、こう言った。
「近々その冒険者の昇格試験が決まったので、もし良ければその時にご一緒しますか?彼が良ければ紹介しましょう。」
ミゲル君は初めて見る嬉しそうな顔をして喜んでくれた。
「おお!そりゃ楽しみだ!ならしっかりコイツを解体して印象良くしないとな!お前ら!!始めるぞ!!」
そうミゲルが一声かけると、屈強な解体職人達が集まりすぐに作業に突入した。
僕はそれを見て静かに執務室に戻り、真っ先に件の申請書にサインした。
ザイル視点の間話でした!




