2章.2 新人冒険者
2章は多分長くなるかも?
翌朝、慣れないベッドで目を覚ました。
急に少しの寂しさを感じたが、それを振り払う様に起き上がり部屋を出る。
まだ少し早い様で、食堂には昨日の厳つい男が仕込みの為か調理場で作業しているみたいだ。
俺は顔を洗いたくて男に話しかけた。
「おはようございます。顔を洗いたいんですが、水場はどこにありますか?」
そうすると男は、一瞬目線をこちらに向けるが、すぐに手元に戻してそのまま喋り出す。
「宿を出てすぐ裏手に井戸がある。好きに使え。」
俺はお礼を言って井戸へと向かい、指輪から身体を拭く布巾を出して顔と身体を拭く。
日本で言う春ぐらいの気温だが、早朝の井戸水は刺す様に冷たくて、すっかり目も覚めた。
エルフの里では母さんと俺が魔法を使えたので、寒い時期や修行を少しやり過ぎた時にお湯を張ってお風呂に入ってたのだ。
冬になるまでになんとかならないかな?
小さな家でいいから借りれる様になりたいな。
そんな事を考えながら宿の部屋に戻って準備を始めた。
そう、今日は俺の冒険者デビューの日だ。
今の実力でどこまで通用するか分からないが、夢の為だ。
「よし、行ってみますか。」
俺は覚悟を決めて立ち上がり、ウェイトレスさんに外出を伝えて冒険者ギルドに向かった。
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2年振りに冒険者ギルドの扉を開く。
前に来た時は依頼を出す側だったが、これからは受ける側になるんだ。
俺は緊張しながらも幾つかある受付に並び、自分の番を待った。
「次の方どうぞー。」
どうやら俺の番になったらしく、獣人なのか獣耳のある女性に呼ばれた。
「すいません、冒険者になるにはどうすれば良いか教えていただけますか?田舎から出たばかりで分からなくて。」
俺は獣人の女性に嘘偽りなく質問した。
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥だ。
すると獣人の女性はすぐ笑顔を作り教えてくれた。
「冒険者登録ですね。ではまず、こちらの紙にご記入お願いします。終わりましたら教えて下さい。」
そう言い、1枚の紙を手渡された。
名前、年齢、種族、得意な武器、公開するスキルと鑑定でわかる情報とほぼ同じだ。
とりあえずスキル以外は隠す必要もないし、鑑定の情報と同じ内容を記入する。
問題はスキルだな。
この紙に記入する必要があるという事は鑑定は希少なスキルの筈だ。
なら、メインで使う弓術と風魔法、前にバレてる隠密ぐらい書いとけばいいか。
俺は記入を終えて再び獣人の女性に声を掛けた。
「ありがとうございます。ではこの杖を握って下さい。犯罪歴があると杖が光りますので、もし発覚すれば登録をお断りする事になります。よろしいですか?」
一瞬考えたが、あの時の野盗は称号欄に犯罪名が並んでいたのを思い出す。
俺にはないので、恐らく犯罪の称号に反応するのだろう。
「大丈夫です。では握りますね。」
俺が杖を握ると、案の定何も起こらなかった。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。それではカードを発行して来ますので少々お待ちください。」
そう言って女性が受付から離れると、数分で戻ってきた。
そして、俺に1枚のカードを差し出す。
「お待たせ致しました。こちら、冒険者ギルド発行の身分証です。紛失した際には金貨1枚で再発行しますが、無くさない様お気を付け下さい。ではこのまま簡単な説明に移らせていただきますが、お時間よろしいですか?」
金貨は高いが、それだけこの世界の身分証は大事なんだろう。
俺は失くさない様にしようと心に刻み説明をお願いした。
「はい、説明お願いします。」
すると獣人の女性はニコッと笑顔を作り説明を始める。
「はい、ありがとうございますっ!では任務は大きく分けて3つございます。まずは通常依頼で、入り口付近のボードから選んで頂いて、受付で受理されるとそこで初めて任務として扱われます。受付にて受理されない場合は、例えドラゴンを討伐しようと任務達成にはなりませんのでご注意下さい。」
女性は右手の人差し指を伸ばす。
なるほど、事後報告は駄目だと。
まぁこれに関しては特に質問はないか?
女性は中指も伸ばし説明を続ける。
「そして2つ目、指名依頼です。冒険者のランクが上がって有名になると、指名されて依頼される事がございます。勿論、拒否する事も可能ですが、更に上を目指す方々は優先して受ける事が多いです。」
冒険者は個人事業主だ。
優秀な人に直接依頼するのは当然の流れだろう。
上のランクの依頼があまり貼ってないのはその影響もあるのかな?
いずれにせよ拒否が可能なら問題ない。
そして女性は最後に薬指を伸ばした。
「そして3つ目、ザガルタからの緊急依頼です。こちらは稀ですが、指定のランクの方々は強制的に参加となりますのでご注意下さい。もし、理由なく拒否される場合は、身分証であるギルドカードが剥奪される恐れがございますのでご注意下さい。ただ、強制といっても普通の依頼と変わらずちゃんとお金も出ますので御安心を。」
これも問題ないな。
むしろ、野盗の件ではこの緊急依頼のおかげで里は救われたから、積極的に参加して恩を返したい。
「依頼に関しては理解しました。ありがとうございます。」
俺はそう答え一礼する。
これからは同じ職場だし、印象は大事だ。
「分かりました。では次にランクの説明に入ります。まずSABCDEFと7段階あり、Sが1番上、Fが1番下になります。上に上がるにつれて報酬も上がりますが、危険も増えますのでお気を付けてください。因みに、依頼失敗するとランク評価が下がりランク降格、また依頼内容によっては違約金が発生する場合がありますのでご注意下さい。」
違約金やランク評価関しては無理して失敗するな、という意味もあるんだろうな。
まぁ、命が掛かってるし当たり前だ。
俺は理解すると、女性に答える。
「よく理解出来ました。丁寧にありがとうございます。」
俺がそうお礼すると、女性は少し、いや、かなり崩した口調に変わる。
「貴方、随分と丁寧ね。むしろギルド職員向きだと思うわよ。面接受けてみない?あっ、私はミレイって言うの。よろしくね!」
少し驚いたが、俺は自由を欲して冒険者になりたいので断りを入れる。
「ミレイさん、よろしくお願いします。ただ、ギルド職員は申し訳ありませんが。自由に生きるのが俺の夢なんで。」
そう言うと、ミレイさんは溜め息を吐いた。
「そうよねぇ。はぁ…、ギルドマスターが忙し過ぎて職員を募集してるんだけど、忙し過ぎてすぐに辞めちゃうのよ…。私達、見てられなくて。」
そういえば、俺が里に帰る前、書類の山に埋もれてたっけ。
あれ?そういえばまだザイルさんがギルドマスターなのかな?
俺はミレイさんに聞いてみる事にした。
「あの、ギルドマスターって…」
と、俺がザイルさんの事を聞こうとすると、奥にある執務室の扉が勢いよく開き、見た事のある眼鏡をかけたエルフが飛び出してきた。
「ウルド君!やっぱり君だったんだね!」
ミレイさんがびっくりしてますよ、ザイルさん。
まだまだ書くの楽しいです!




