2章.1 新生活
新章突入です!
これからもよろしくお願いします!
里を出て約1時間、俺は森を疾走している。
風魔法を足に纏わせて、ロケットの付いたローラースケートの様にして駆け抜けているのだ。
森に1人で入って、密かに練習を続けて、傷だらけになり、ドライアドに爆笑されながらも習得した。
俺のオリジナル魔法なので、名前はまだない。
今では木に激突する事なく自在に走り回れる。
ギリギリまで疾走したが、森を抜ける少し手前で解除して自分の脚で歩く。
俺はこれから人間の街で住むのに、住む前から変な噂が広まるのは前世の経験上よろしくないからだ。
そこからすぐに街道に出て、目指すは辺境の城砦都市ザガルタだ。
2年振りの街がどうなっているか今から楽しみだ!
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街道を歩く事約4時間。
俺は同じ景色に飽きていた。
「前は父さんがいたしな。そりゃ一人で歩いてりゃ暇だよなぁ。」
また風魔法ですっ飛んで行くか悩んでると、前方に魔力反応が複数ある。
魔力探知を使う癖を付けていて良かった。
すぐに隠密スキルを発動させる。
街道の道じゃない所にある反応なんてどうせ碌な相手ではないからだ。
街道横の茂みから様子を伺っていると、俺の腰ぐらいのサイズの鬼のような顔をした生物が現れた。
「鑑定。」
【種族】ゴブリン
【性別】男
【レベル】5
【スキル】剣術Lv1
うん、弱い。
俺がいた森は大樹様と精霊のおかげで魔物がいなかったから初めて見て驚いたけど、所詮ゴブリンか。
俺は剣で片付けようと思ったが、丁度良いので父さんから貰った弓で魔弓術を試す事にした。
「魔弓術、試しておくか。」
指輪から弓を出し、弦を引き絞りながら魔力を集中させる。
あの野盗に風穴を開けた時の二倍は魔力が集まっている筈だ。
俺は魔弓術の可能性をずっと考えていた。
一撃の重さはあるが、それなら矢に魔力を纏わせれば、魔力消費も抑えられるので低コストだ。
しかし、これは普通の弓とは違う。
ならば、複数を同時に射撃するのも可能な筈。
視界にゴブリンを5体捉え、発射する。
魔力の塊が複数に分裂して、全てのゴブリンの頭に命中し、パァン、と音と共に消し飛ばした。
「成功だけど、まだまだ加減が出来ないな。」
成功はしたのだが、今回は魔力を込め過ぎた様で少し威力が高過ぎた様だ。
次は魔力をもっと抑えて打ってみよう。
俺は頭部のない5匹の死体を見て、ゴブリンなんてどうせ二足三文だと思い火魔法で燃やして街に向かった。
そして夕暮れの少し前に、約2年振りのザガルタが目の前に姿を見せた。
何度観ても凄い防壁だ。
門に近付くと、入場待ちの列に並ぶ。
15分程待つと、ついに俺の番になった。
「止まれ。身分証を提示してくれ…ってお前は確か、前に来たエルフの息子か!いや、逞しくなったなぁ。今日はどうしたんだ?」
前に父さんと漢の友情握手をしてた無精髭の兵士だった。
「お久しぶりです。今日から里を出て一人暮らしを始めるんですよ。身分証ってどうすれば良いんでしょうか?」
すると兵士は、ああ、と納得した顔をする。
「里でずっと暮らしていたら解らんだろうな。一番楽なのは、何れかのギルドに加入する事だ。冒険者になりたいなら冒険者ギルド、商売を始めるなら商人ギルド、ポーションとか薬を自作ちて取引したかったら薬剤ギルドとか色々ある。お前がなりたいと思う職のギルドで働くといい。別に身分証を作らなくても良いが、入場する度に銀貨1枚貰うから注意しろ。」
各職業でギルドがあるらしい。
俺の今のスキル的には薬剤ギルドか冒険者ギルドのどちらかなら、きっとすぐ働けるだろう。
まぁ、俺は冒険者一択だが。
「ありがとうございます。いやぁ、実は2年前お金すら知らなかったぐらいなので、色々教えていただき助かりました。とりあえず冒険者ギルドに入ろうと思ってます。」
俺はそう言いつつ銀貨1枚を手渡した。
「そうか、お前なら良い冒険者になるだろうよ。よし、確かに預かった。ようこそ、城砦都市ザガルタへ。」
そう言われ俺は門を抜けて大通りを歩く。
前に来た時は観光する余裕も時間もなかったし、街並みなんて気にしてなかったな。
とりあえず、俺は初日から野宿は嫌なので、まずは宿を探す事にした。
手持ちの金は金貨3枚と銀貨6枚と銅貨が20枚程。
この金は野盗討伐の時に、俺の功績分の支払いを父さんがザイルさんから受け取ってたらしい。
ただ、何もしなければすぐに底をついてしまう。
ならば、まずは宿屋探しという訳だ。
暫くの間はザガルタに滞在して資金を貯めたいので一番金のかかる宿は出費を抑えたい。
「暫くは安宿暮らしだな。」
俺は一人愚痴ると、前回の宿屋を通り過ぎて別の宿を探す。
暫くキョロキョロと探しながら歩いていると、人通りの少ない道に一軒の宿屋を見つけた。
「妖精の誘い亭か。店構えは良いけど、後は値段だな。」
少し緊張しつつ、早速入ってみる。
すると、一階は食堂兼酒場といった感じで雰囲気があり、まさにゲームやアニメの世界のようで気に入った。
カウンターに向かって進むと、俺と歳が変わらないであろう、ショートヘアのウェイトレスさんに声を掛けられた。
「いらっしゃーい!宿ですか?食事ですか?」
慣れているんだろうな、という接客だ。
俺は早速値段を聞いてみる。
「宿を借りたいんですが、金額を教えていただけますか?」
すると、ウェイトレスさんが俺に素晴らしい営業スマイルで答えてくれた。
「大丈夫ですよー!一泊素泊まりで銀貨1枚、夜のお食事込みですと、追加で銅貨2枚いただきまーす!」
俺には基準がわからないけど、この額なら冒険者の活動で何とかなるか?
安すぎても犯罪に巻き込まれるなどの危険もありそうなので、丁度良い値段な気がする。
明日、冒険者ギルドに行って厳しいと感じたらもっと安い宿に変えよう。
俺はそう考えてこの宿に決めた。
「じゃあ食事付きでよろしくお願いします。」
俺がそう答えて軽く一礼すると、ウェイトレスさんが奥に声を掛けた。
「ありがとうございまーす!オーナー!宿泊のお客様でーす!」
すると、奥の扉から屈強なスキンヘッドの男が顔を出した。
俺が、まさか騙されたか?と何を騙されたのか分からないが考えていると、男が口を開いた。
「いらっしゃい。何泊だ?」
俺は、やっぱりやめます。とは言えないので、覚悟を決める事にした。
「とりあえず5日、食事付きでお願いします。後、冒険者として活動する予定なので、もしかしたら帰らない日があるかもしれません。」
俺がオーナーと言われた男にそう答えると、表情を微塵も変えずに答える。
「分かった。もし二日以上部屋を空ける予定なら俺かソイツに言え。それと、部屋は掃除に入るから貴重品は金庫に入れるか持ち歩け。部屋で身体を拭くなら前日に銅貨1枚くれりゃ水桶を部屋に持って行ってやるが、自分でやるなら無料だ。全部で銀貨6枚、前払いで寄越せ。それと晩飯まだなら食ってけ。サービスだ。」
接客が大雑把なだけで普通に良い宿だな。
俺は銀貨を丁度で支払い、カウンターに座る。
暫く待つと、美味しそうなビーフシチューっぽい料理と切り分けたバケットが3枚運ばれてきた。
「お待たせしましたー!オークのシチューでーす!おかわりは銅貨2枚になりまーす!お酒は飲みますかー?」
オークって魔物だよな?食べれるのか…。
俺はせっかくなので葡萄酒も頼み、初めての一人暮らし最初の食事を楽しむ事にした。
頭の中で漫画でよく見るオークを想像する。
俺は二足歩行の豚を思い浮かべ、肉を見つめた。
勇気を出して一口、恐る恐るスプーンでオーク肉をすくい、口に運ぶ。
「美味しい…。オークってこんなに美味しいんだ。」
ゴロゴロと入っているオーク肉はとても柔らかくて、よく煮込まれているのでスプーンで割れるぐらいだ。
俺はすぐに完食して、おかわりと追加でもう一杯葡萄酒を頼み、冒険者ギルドは明日行こうと思いながら美味しい食事に舌鼓を打つのだった。
書いてたらシチュー食べたくなりました。




