二度目の共闘
-第53説 二度目の共闘-
戦闘は一方的なものだった。
ファロンが上空から高速で電撃を放ち、それを烏が防ぐと、今度はその隙にエルドが炎を纏って突っ込んでくる。
単純だが、対処しずらい攻撃。
防御に手数を使っているため、反撃が難しく、防戦一方、助けを求めようにも、何故か秀真の姿が何処にもない。
(あのマイペース野郎、こんなときまで気分で動きやがって! )
文句を言ったところで始まらないと分かってはいるが、文句の一つも言いたくなる事態。
そんな選也の苛立ちを知ってか知らずか、絹を割くような悲鳴と共に、突然、エルドの身体が溶け始めた。
「あづいぃ! あづい! 」
彼は自身の身体を掻きむしる様な仕草をして、上空にいるファロンを助けを求め、手を伸ばす。
ファロンはエルドの異変に気がつくと、彼に言葉をかけるより先に、周囲を見渡し始めた。
選也は一瞬、期待する。
(もしかして、秀真が! )
だが、期待は裏切られた。
ゆっくりと木々の間から歩いて現れたのは、灰色のパーカーのフードを目深に被った青年である。
選也はすぐに声をかけた。
「悠斗!? どうしてここに! 」
青年は選也の方を向くと、フードを脱いで、目を丸くする。
「選也さん………? あなたこそ、どうしてこんなところに? 」
フードの下にあった顔は確かに、夜の校舎で出会った、火無悠斗そのもの。
彼は、苦しみに耐えかねて飛びかかってきたエルドを、取り出した大剣で薙ぎ払うと、続けて、その剣をファロンに向かって投げつけた。
エルドはもう抵抗する力もないのか、そのまま身体を木に叩きつけ、剣を避けようとしたファロンも体勢を崩す。
選也は隙の出来たファロンに紫烏を差し向けながら、悠斗の問いに答えた。
「俺は夏休みに、父さんの実家に帰って来ただけだよ。」
悠斗は足に鎧を装備して、烏とファロンの落下地点位置まで走り、剣を突き上げる。
「帰省ですか、いいですね。」
しかし、あと少しで剣が当たるというところで、ファロンの身体が霧のように消えてしまったため、彼の渾身の一撃は虚しく空を刺した。
次にファロンが現れたのは、選也の背後。
手元に烏が居ない選也は、慌てて彼女の後ろに金属の棒を呼び出して、彼女の身体から放たれる術の標的を変える。
高鳴る心拍を押さえながら、選也は悠斗に返答した。
「折角の田舎も、これじゃ台無しだけどな! 」
悠斗は、選也が自分を見ていなくても、それに苦笑いを返して、女を大剣で木に叩きつける。
悠斗の登場前とは比べ物にならない、圧倒的有利な戦い。
しかし、それは所詮は数の力に過ぎず、別の勢力が絡むとその余裕は消える。
呟きの様な複数の声と同時に、不可思議な文字の帯に縛り付けられる3人の身体。
「選也さん、動かないで! 」
悠斗が切迫した様子で呼び掛けてきた。
選也が周囲を見渡すと、傷だらけになりながらもなにかを詠唱し続ける、ローブ姿の人間達の姿がある。
「動くなって言われなくても、動けないんだけど………。」
どうやらまだ《神徒連盟》の生き残りがいたらしい。
選也は歯噛みした。
これだけ戦っているのに、次から次へと敵が現れて、一向に状況が好転しない。
だからだろうか。
その時唐突に選也の唇を濡らした雨を、不運な偶然だと思ってしまったのは。
つづく。




