第九話 通学路
あれから一日が経った。
私は通学路を歩きながら、昨日のことを思い返す。
それにしても、やっぱりハルキちゃんは可愛いな。
あんなにはしゃがなくても、頼まれればなんでもやってあげるのに……。
そういえば、デートしてあげるって言ってあげたっけ?
膝枕も。まあ、それはべつにいいんだけど……
ハルキちゃんからハグとかほっぺになんかされたし、私からしてもいいんだよね?
そんなふうに考えていると、あることを思い出した。
「あっ! そういえば……!」
『ハルキちゃんだから好きなのか、女性だから好きなのか、男装してる姿が好きなのか。答えが出たら、交際しようとは思っています』って言っちゃったっけ。
「でも、私はもうハルキちゃんが好きなのは自覚してるからなぁ……」
ちょっとえっちで、スキンシップに飢えてる女の子。
いつもはカッコいいけど、時折見せる可愛らしさ。
そういうところが……
「好きだなぁ……」
「なにがですか?」
後ろから声がしたので、振り向くと、ハルキちゃんが立っていた。
「あっ、ハルキちゃん。今日も可愛いね」
「あ、ありがとうございます。ところで、なにが好きなんです?」
「えっと、ハルキちゃん……」
「なんですか?」
「……だから、ハルキちゃんが好きなの」
「あっ、そうでしたか」
なんだろう? その余裕な感じは?
つい、そのすまし顔を崩してあげたくなってしまう。
「ハルキちゃん、屈んで?」
「は、はい」
通学路で突然屈むハルキちゃん。
朝早くなので、あまり人がいない。
その隙を突いて、
「んっ……!」
と、ほっぺにキスをした。
とっさに立ち上がり、キスされた頬を押さえるハルキちゃん。
「ななな、なんですか!?」
「いや、昨日似たようなことされたし、いいかなって……」
「な、なるほど……」
「嫌だった?」
「いえ! 驚いただけです! 寝不足だったけど、目が覚めました!」
「そっか。昼休みにはしてあげてもいいよ?」
「な、なにをですか!?」
「いや、膝枕だけど……? なにを想像したのかな?」
「なんでもないです!」
「まあハルキちゃんはえっちだから、あえてなにも言わないけど」
「すみません……」
「それより、手を繋いでいいかな?」
「はい! お願いします!」
朝から元気がいいなぁ。
手を繋いで歩き始めると、まるで振り子のように前後に繋いだ手を揺らすハルキちゃん。
やっぱり可愛いな。
「ハルキちゃん」
「な、なんですか?」
「明日は休日だけど、デートする?」
「はい! ぜひ!」
「ふふっ……」
私が微笑ましい目で見ていると、ハルキちゃんが口を開く。
「あ! あの……」
「なにかな?」
「あ、あ……やっぱりいいです」
「気になるなぁ。白状して?」
「はい! おうちデート的なのがいいなって……」
「へぇー! 意外だなぁ。でも、変なことは考えてないよね……?」
「実は少し……」
「……冗談だったんだけど、ホントにそんなことばかり考えてるんだね」
「はい……ごめんなさい」
「ハルキちゃんって、ユニークだね!」
「ユニーク?」
「全然いいよ? 私たち、恋人同士だし」
「えっ?」
突然足を止めるハルキちゃん。
「違った?」
「……初耳なんですけど」
「あ、まだ言ってなかったっけ。ハルキちゃんが好きなことを自覚したから、今日から恋人同士だよ?」
「そうでしたか……」
「私はよくわからないけど、ハルキちゃんなら……いいよ?」
「はい! 早く明日にならないかなぁ」
「気が早いね……」
「はい。つむぎさんが好きなので」
「私も、ハルキちゃんが好きだけど?」
立ち止まって見つめ合う私とハルキちゃん。
そして、先に目を逸らしたのはハルキちゃんだった。
「はい、私の勝ち!」
「……勝負だったんですね」
「うん」
こうして、歩くのを再開する。
「それじゃあハルキちゃんは、今日一日は私の言うことを聞いてね?」
「はぁ……いつも聞いてる気もしますけど」
「例えば、“私を抱きしめて“って言ったら抱きしめてね?」
「はい……」
「でも、今は学校が近づいてきてるから、放課後ね?」
「はい!」
「そういえば、ハルキちゃんって元からそうなの? それとも、私以外はそういう目で見てないの?」
「はい!? なんですかその質問は……?」
「答えないなら、デートしてあげないから」
「……えーと、つむぎさん限定で興奮してしまうと言いますか……」
「ふーん」
「気持ち悪いですか?」
「ううん? 私もハルキちゃんとはハグとかチューとかしたいって思ってるし、普通なんじゃないかな?」
「あ、そこ止まりなんですね……」
「え? まだ先があるの?」
「いえ! あるにはありますが、高校生にはまだ早いので!」
「そっか。なら仕方ないね」
「はい」
「ところでハルキちゃんって、私以外に好きにならないの?」
「……わかりません。でも、多分今のままだとつむぎさん以外は好きにならないと思います」
「そっか。私もだから、安心してね?」
「はい」
こうして、明日デートすることになった私たち。
ハルキちゃんはちょっとえっちだけど、そういう正直な気持ちを持ってるところも嫌いじゃない。
それは私がハルキちゃんのことを好きになっているからなんだろうか。
そんなことを考えながら、今日も登校するのだった。




