第十話 デート
珍しく髪を結んで、ポニーテールでデートに勤しむ私。
予定より三十分くらい早く来ちゃったけど、大丈夫だよね?
「よし、手鏡で前髪を……」
そうして前髪をいじっていると、鏡からハルキちゃんが見えた。
なので振り返ってみると、チェックのシャツにデニムのコーデのハルキちゃんが女の子に囲まれているのを発見する。
でも、ハルキちゃんはハルキちゃんだ。
「すみません、ボクはつむぎさん一筋なので」
何度もそう言って、ナンパを断っていた。
「変わらないなぁ……」
まあ、そういうところが好きなんだけど。
そうつぶやいて、私はハルキちゃんと合流する。
「つむぎさん! 可愛いですね。どこが可愛いか言ってあげましょうか!?」
「いや、言わなくていいから。ハルキちゃんも可愛いね!」
「そうですかね……?」
「うん!」
相変わらず「可愛い」と言われ慣れていないハルキちゃんはとっても可愛い。
「じゃあ、映画館でも行きましょうか?」
「いや、小腹空いたからカフェでいいかな?」
「はい! つむぎさんとならどこへでも!」
こうして、カフェに寄りカフェオレとコーヒーを頼むハルキちゃん。
でも、カッコつけて飲んでるというのを、あるときハルキちゃんのお母さんたちから聞いたことがあるので、私はチョコレートパフェを二つ頼んだ。
「あの……」
「ふふん、なにも言わなくていいよ。ハルキちゃんが食べたくないなら私が食べるから」
「い、いえ! いただきます! 相変わらずカッコいいですね!!」
店員さんの不思議な二人だなという目をスルーして、私たちはカフェでパフェを食べる。
それから、世間話として不良さんたちの話題を出す。
「不良さんたちはあれからおとなしいの?」
「デートであいつらの話はやめてください……」
「じゃあ、次はどこへ行こうか?」
「うちに来てください! みんな待っているので!」
「そっか!」
それから、パフェを奢ってあげた。
「えっ? いいんですか?」
「ふっふっふ、先輩としての義務だよ」
「あ、ありがとうございます!」
パフェの値段が思ったより高くて、映画とかを観に行くつもりだった予定が破綻したのは内緒だ。
「じゃあ、ハルキちゃんちに行こうか?」
「はい!」
そして、ハルキちゃんちに行く。
「じゃあ、インターホンを鳴らしますね」
「うん……!」
しばらくして門が開くと、組員さんたちまでお出迎えしてくれる。
「だから、いつもみんなで出迎えなくていいから!」
「まあまあ、私は嬉しいよ!」
「つむぎさんがそう言うなら……」
「ほっ……」
ハルキちゃんは身内というか、男の人に厳しいところがある。
そういうところはカッコいいけど、正直ずっと前のように目をつけられないか不安になるから、そこは直してほしいかなぁ……。
そう思ってしまう私がいる。
「つむぎちゃん、おひさ~」
「はい、ハルキちゃんのお母さんもお元気そうで!」
「それでつむぎさんとやら、今日はなにをしに?」
「おうちデートですかね……。すみません、デート経験が少なくて……」
「なら今日は、わたしとお父さんの昔話を……」
「二人ともはしゃぎ過ぎだから! つむぎさん、ボクの部屋に行きましょう!」
「あっ、おじゃまします……わっ!?」
突然私をお姫様抱っこをするハルキちゃん。
「もう! やるなら言ってよ~……」
「す、すみません! あのままじゃ、デートの雰囲気が崩れそうだったので!」
「べつにいいよ。それじゃあ、今日はなにをする?」
「そうですね……とりあえず、部屋に着いてから考えましょう」
「そうだね」
それから、部屋に着くと私はベッドに下ろされる。
「わぁ! 相変わらずフカフカだね!」
そんなことを言っていると、ハルキちゃんが思いっきり私を抱きしめる。
「ふふっ、どうかした?」
「つむぎさん、好きです」
「私も好きだけど……?」
「……相変わらずですね」
「ハルキちゃんもね。意気地なしだなぁ」
「だって、つむぎさん鈍いし」
「えっちなことはまだダメだよ! 最低でもどっちかが成人しないと!」
「は、はぁ……」
「だから今日もお話しようよ! 恋人繋ぎしてさ」
「……ですね!」
ハルキちゃんはいつも一線を超えたがる。
私としては、超えたい気持ちも無くはないけど、一方的にされるのは好きじゃない。
だから、私が成人してからすることに決めた。
といっても、私が勝手に決めたことだけど。
こうして、そういう空気からいつもの空気に変わる。
「そういえばつむぎさん、今日のポニーテール可愛いですね! あと、奢ってくれてありがとうございました!」
「ハルキちゃんも可愛いね! でも、そのコーデ着こなしてカッコいいよ!」
「ありがとうございます!」
「ハルキちゃんも、いつも可愛いって言ってくれてありがとね」
「いえいえ……」
照れるハルキちゃんはやっぱり可愛い。
でも、ハルキちゃんもいずれ変わるのだろう。
大人になるにつれ、みんなどこか変わっていく。
けど、それはきっと私もだ。
だからこそ、いまをめいっぱい楽しんで生きないと。
そんなことを考えつつ、私たちは今日もこうして日常を過ごすのだった。




