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男装女子と善人女子  作者: 私信
日常編
11/37

第十一話 記念日

ここからは付き合ってからを描くことになります。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


「ふわぁぁ……」


 私は口を手で押さえながら登校する。


「それにしても……」


 そろそろハルキちゃんと付き合って一ヶ月かぁ……

 ハルキちゃんはそういうの気にするのかな?


 記念日を気にするのって女の子って感じで可愛いなぁ。

 でも、案外気にしないタイプだったりして……?

 まあ、私からしたらどっちでもいいんだけどね。


「あっ……でも、なにかをプレゼントする口実にはなるかな?」

「……なんの話ですか?」


 後ろから声がしたので、振り向くとハルキちゃんがいた。


「お、おはよう……?」

「おはようございます! で、なんですか?」

「あのー、実は記念……あっ!」


 ここで記念日の話をしたら、なんか催促してるみたいにならないかな?

 あまり図々しい人だって思われたくないし、ここは……!


「記念……なんですか?」

「今日という平和で尊い日々を送っていられるのは、もはや記念日だな……と思っただけだよ!」

「はぁ……。それより、記念日といえばもうすぐ付き合ってひと月経ちますね!」

「あっ、そうだね……」


 せっかく誤魔化したのに、貫通してくるとは……

 さすがはハルキちゃんだなぁ。


「つむぎさんはなにか欲しいですか?」

「ハルキちゃん……かな」

「あっ、わかりました。では、その日のボクはつむぎさんのものということで……」

「いやいや、冗談だから! というか、ハルキちゃんはいつも私のものだから! ね?」

「はい……!」

「うん。それじゃあ登校しよっか」

「はい!」


 こうして、不良さんたちに挨拶する。


「「「おはようございます!」」」

「うん、おはよう」

「ボクはまだこの不良三兄弟を認めてませんからね!」

「わかってるってば。じゃ、またね。ハルキちゃん」

「はい!」

「「「では姐さん、いってらっしゃい!」」」

「うん」


 こうして、私はいつもどおり二年の教室へと向かった。



 それから、いつもと同じく昼休みがやってくる。

 一階まで不良さんたちとハルキちゃんを迎えに行くと、周りの生徒たちは私を見て驚いた表情をする。

 そりゃあそうか。

 同学年のイケメンと付き合ってることに加えて、不良たちを束ねてる先輩だもんなぁ……

 そんな人がいたら、私でも緊張してしまいそうだ。


「はぁ……べつにいいけどね。ハルキちゃーん!」

「はい! 行くぞ、不良三兄弟!」

「「「てめーが仕切んな!」」」


 そして、みんなで二年の教室へ向かう。


「つむぎさん、大丈夫ですか?」

「な、なにが?」

「いえ、一年のみんなから妙な目で見られていたので」

「シメますか?」

「ボコりますか?」

「恐喝しますか?」

「どれもしなくていいから。ほら、行くよ」


 二年の教室に着くと、下の階の生徒たちと違ってみんな歓迎している。


「よう、後輩ども!」

「オレさ、週刊誌をほとんど定期購読してるけど、お前らも読むか?」

「「「読むっス!」」」


 不良さんたちも、だんだんと馴染めている気がする。

 そう思って、ハルキちゃんと一緒にごはんを食べながら私はぽつりとつぶやいた。


「まあ、もうひと月だし当然か」

「なにがですか?」

「不良さんたちが舎弟になったこと」

「あぁ……」


 忘れてたのか、覚えるのを拒絶していたのか。

 付き合ったのもその頃だったってのに……。


「ハルキちゃんは可愛いね」

「はぁ……」


 負けず嫌いな人はカッコいいけど、いじめられていたことをなかったことにするとは、ハルキちゃんらしいな。


「そうだ! 記念日を記念日で上書きしない?」

「……というと?」

「例えば、交際記念日を初喧嘩記念日にして覚えやすくするとか」

「なるほど! 一石二鳥ですね!」

「うん! じゃあ、喧嘩しよ? それで、忘れられない日にしよう!」

「はい……! で、どうすれば?」


 クラスメイトのみんなは、“面白いものが見れそうだ“という視線で私たちを見ている。

 よし、やるぞ!


「じゃあ悪口を言うから、謝らないで反論してね!」

「は、はい!」

「は、ハルキちゃんの……おバカ!」

「はい?」

「ほら、反論!」

「はっ、はい! つむぎさんの……人たらし!」

「いいよいいよ!」


 ところで、人たらしってなんだろう?


「じゃあ次は……ハルキちゃんは、もっと人と関わった方がいいと思う!」

「それを言うなら、つむぎさんだって!」

「私はハルキちゃんさえいればいいから」

「ボクもです!」

「……あれ?」


 なんか上手くいかないな。

 というか、悪口って慣れてないんだよなぁ。

 身長の話は言い過ぎるし、だからといって泣かせたくないし……


「今度はハルキちゃんが言って?」

「えっ!? えーと……つむぎさんなんて嫌いです」

「そ、そっか」


 つい、フリーズしてしまう私。

 ……私、どうしちゃったんだろう?


「えっと、反論をお願いします……!」


 冗談だとしても、本気にしてしまい傷つく私。

 仮に嘘だとしても、嫌いだと言われるのは傷つくなぁ……


 しばらくすると涙が零れ、頬を伝った。


「あれ……?」

「あっ、ごめんなさい! 調子に乗りすぎました!」

「ぎゅってして」

「ええっ!? 見られてますよ?」

「……いいよ」

「では、抱きしめますね」

「うん……」


 こうして、ハルキちゃんに抱きしめられる私。

 いつも抱きつくときは少し息が荒いハルキちゃんも、今回は私のことが心配でそれどころじゃないみたい。


「つむぎさん、泣かせてごめんなさい」

「でも、忘れられない記念日になったね」

「はい……!」

「ただ、付き合った日は今日じゃないけどね」

「あっ、そうですね」


 私たちがそんなことを話していると、あちこちから歓声が飛ぶ。


「いいぞドチビー!」

「漢を見せたな!」

「もっと抱きつけー!」

「春木かっけーぞ!」

「つむぎちゃんともっとイチャイチャしてー!」


 外野のテンションも最高潮だ。

 そんな状況に、不思議と笑ってしまう。


「ふふっ……」

「どうかしましたか? つむぎさん」

「ううん、なんでもない」


 こうして、私たちにはたくさんの味方がいることを実感した。

 それと、この日はハルキちゃんが私を初めて泣かせた記念日として毎年私がハルキちゃんを茶化す日になるのだが、それはまた別のお話。

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