第十二話 ライバル登場?
「ふぅ、昨日は大変だったなぁ……」
まさかみんなの前で抱きつかせることになるとは。
でも、私にも交際相手がいるってアピールしたし(誰に?)、結果オーライかな。
そんなことを考えていると、背後から気配がする。
ハルキちゃんの気配は大型犬のような感じだけど、この気配はそんなんじゃない。
「誰!?」
そう言うと、電柱の陰から女の子が出てきた。
「どうも、おはようございます」
「お、おはよう……」
このヘアスタイルの女の子は確か……
「えーっと……同じクラスの、白旗千早さん?」
「おおっ、あたしを知っているとは!」
「そりゃあミディアムウルフの髪型の生徒なんて、そういないからね」
「では、早速始めていいですか!?」
「えーと、なにをかな……?」
「ヘアセットです! あたしがもっと可愛くさせてみせます」
「うん! じゃあ、よろしく!」
「えっ……? 抵抗しないんですか?」
「うん。だって、同じクラスだったはずだよね? ならいいんじゃないの?」
「ありがとうございます。ではやりますね……」
「あ、その前に、タメ口でいいよ?」
「は、はい……」
こうして、白旗さんが私の髪に触れたと思うと、手が止まった。
でも、振り向いてようやくわかった。
どうやらハルキちゃんが白旗さんの腕を握っていたのが原因のようだ。
「ちょっ……!? ハルキちゃん?」
「あ、おはようございます。なんか不審なヤツがつむぎさんに触れようとしていたので……」
「いや、この子は私の友達だから!」
「えっ? こんな怪しいヤツがですか?」
「うん。離して?」
「…………はい」
こうして、白旗さんが掴まれていた手をぷらぷらと振る。
「いてて……」
「大丈夫!?」
「はい。なんとかだけど……」
「ハルキちゃん、反省してる?」
「はい……」
「よし。それなら、罰としてお昼休みまで会話禁止だから」
「えぇ~!!?」
「白旗さんに暴力を振るった罰!」
「わかりました……」
もう! 普通女の子に暴力を振るっちゃダメだよね。
いや、男の子にもダメだけど。
「それじゃあ白旗さん、行こっか」
「はい! わかった」
「白旗さんって、返事だけ敬語なんだね」
「はい。癖かもしれないです」
振り返ると、ハルキちゃんがゾンビのようにノロノロと歩いていた。
そんなにショックだったのかな?
「ハルキちゃん?」
「……なんですか?」
元気がないハルキちゃんのために、私は背伸びをしてハルキちゃんの耳元でこうささやいてやる。
「……あとで膝枕してあげるから」
「……はぁ」
「あと、よしよしもしてあげる」
そう言うと、ハルキちゃんがフリーズしてから、
「…………よし!」
と言った。
どうかしたのかな?
「あのー、ハルキちゃん?」
心配になったので問いかけると、元気にスキップをして前進するハルキちゃん。
「では、またあとで!」
「あ、うん!」
おそらく「よしよしをする」という発言が効いたようだ。
「ふぅ、よかった」
「相変わらずラブラブなようで」
「う、うん……まぁね!」
他人からそう言われるとちょっと恥ずかしいけどね。
「では、彼が初めて見る光景でも見せてやりましょう」
「そうだね……って、どういう意味?」
というか、ホントは彼女なんだけどね。
「それは昼休み前に披露します」
「じゃあ私は、ハルキちゃんにメッセージを送っておくかな」
私はスマホを取り出して、ハルキちゃんにこう送る。
『ハルキちゃん。今日は事情があってお昼休みに迎えに行けないから、そっちから来てね』
これでよし。
それにしても、ハルキちゃんが初めて見る光景ってなんだろう?
そんなことを考えながらも登校した。
それから、昼休みがやってくる。
と同時に突然白旗さんが背後へ回り、私の頭に触れる。
「では、やります……!」
「わっ……!!」
しばらく私の髪をイジる白旗さん。
そして数分後、ようやくセットが終わったようだ。
「できました……!」
「白旗さん、なにしたの?」
「ハーフアップのお団子ですね。これでモテモテですよ!」
「あのー、敬語出てるよ」
「あっ、はい。ごめんなさい……」
「うわあああああああああ!!!」
急に叫び声が聞こえたので教室の入り口を見ると、その正体はハルキちゃんだったようだ。
「おおっ! ささ、彼氏のご到着だよ? 見せに行ってください!」
「うん、ありがとね」
こうして、ハルキちゃんに髪型を見せに行く。
「ハルキちゃん、どうかな……?」
「可愛いです! いつもが……いや、少ない数字をつけるとつむぎさんの可愛さを妥協する結果になるから、一万の一万乗くらい可愛いです!!」
「うん。よくわからないけどありがとう! 白旗さんがやってくれたんだよ?」
「そうなんですか! でも、つむぎさんの魅力に最初に気付いたのはボクですから!」
よくそんな恥ずかしいことを堂々と言えるなぁ……。
少しだけ照れてしまう。
「は? あたしは早乙女さんを初めて見たときから仲良くなりたいと思ってたけど?」
「そうですか。でも、つむぎさんはボクのものなので」
「それはいいとして、これからはあたしの練習台になってもらうから、早乙女さんの髪はあたしのものなのでお忘れなく」
「はぁ?」
「ん? 事実を言っただけですけど?」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて? それとハルキちゃん。膝枕するから、椅子並べるね?」
「はい! あ、つむぎさん……!」
「な、なにかな?」
「このままだとつむぎさんがモテてしまうので、その髪型……あまり見せびらかさないでくださいね」
「あっ、うん……」
うーん、そんなにモテないと思うけどなぁ……。
というか、ハルキちゃんの知名度のせいで、私がハルキちゃんの恋人だってことは有名だし。
「では、お願いします」
「うん。よしよし」
ハルキちゃんを撫でて、リラックスした表情になるハルキちゃん。
「あ、そうだ。これからもたまにヘアアレンジしてね? 白旗さん」
「はい! わかりました!」
「じゃあ、よろしく。私そういうのあまり詳しくないからさ……」
そんな話を白旗さんとしていると、ハルキちゃんが口を開く。
「つむぎさん! 今はボクだけを見てください!」
「あっ、ごめんごめん」
いつも構ってあげてるけど、ハルキちゃんは相変わらずだ。
そう思いつつ、私はハルキちゃんの頭を撫でてやる。
相変わらず可愛いなぁ……
こうして、私たちは穏やかな昼休みを過ごすのだった。




