第十三話 お宅訪問 その②
数少ないハルキ視点回ですね。
今日はつむぎさんのおうちに行けることになった。
「つむぎさん! ホントに行ってもいいんですか!?」
「うん。ハルキちゃんならいいかなって」
「そ、そうですか。ところで、親御さんは?」
「今日は遅いはずだけど……?」
「つ、つまり……二人きりかもしれない、と」
「…………うん」
マジか。マジかぁ!
よっしゃー! つむぎさんとイチャイチャできるぞー!
いやいや、ここは平常心だぞ晶。
「でも、楽しみだなぁ……」
「やらしいことはダメだよ?」
「わかってます!」
そっか、ダメなのかぁ……
まあいいや。ボクはつむぎさんの恋人だし、いつかその機会が来るだろう。
そんなことを考えていると、つむぎさんが話しかけてくる。
「ハルキちゃん、どうかした? 難しい顔して」
「いえ、緊張してるだけです」
「そっか。じゃあ開けるね」
鍵を取り出し開けるまでの間、沈黙が続く。
「よし。それじゃあ、私の部屋で待ってて?」
「はい!」
そう言いつつ、つむぎさんがドアを開けると、
「あ! ねーちゃん、おかえ……り」
次の瞬間、つむぎさんは勢いよくドアを閉めた。
「あの、弟さんですか?」
「…………うん。まさか帰っていたとは……」
「大丈夫です! ボクは気にしませんから!」
「私は気にするよ!?」
「なんにせよ、ボクはつむぎさんしか見えていないので」
「……ふーん、カッコいいね!」
「ありがとうございます!」
よし、久しぶりにつむぎさんからカッコいいって言われたぞ!
「じゃあ、改めて……入って?」
「おじゃまします……」
こうして、ボクはつむぎさんちに足を踏み入れる。
すると、さっきの弟くんが近づいてきた。
「絃、挨拶」
「うん! オレは早乙女絃! 中三です! あんた、ねーちゃんの恋人なのか? オレより小さいんですね!」
なんだろうこの子は? 喧嘩売ってるのか?
そう思って怒ろうとすると、ボクより強い威圧感を出している存在に気付く。
そう、つむぎさんだ。
「……絃?」
「はい、ごめんなさい!! 器はデカそうです!!」
「よろしい。それじゃあ、ハルキちゃんは私の部屋に行ってて。ネームプレートでわかるだろうから」
「はい! それじゃあ、行ってきますね」
「うん」
なんだあのつむぎさんは……
ひと月ちょっと前に見た、不良と張り合うつむぎさんとはまた違う雰囲気……
超カッコよかった!!
ボクも叱ってくれないかなぁ……
「おっと、煩悩が……危ない危ない」
それから、『TSUMUGI』と書かれたネームプレートがある部屋を見つける。
「……お邪魔しまーす」
そう言いつつドアを開けると、そこはどこにでもありそうな普通の部屋だった。
ベッド、テーブル、テレビ、ぬいぐるみなどがある、女の子らしい部屋だ。
そして、まるで漫画の単行本を並べるように、本棚にはファッション雑誌が整頓されている。
「おっ、ファッション雑誌がある! ボクは読まないからなぁ」
ついファッション雑誌を手に取り開いてみると、色々な服装が載っていた。
「……まぁ、案の定ファッションのことばかりだよなぁ……やっぱり勉強しておくべきなのかな?」
そんなことを思いつつ、ペラペラと流し読みをする。
読みふけっていると、ガチャリとドアが開く。
「あっ! ハルキちゃんがファッション誌見てる!」
「その、ちょっと気になったもので……」
「いいよ全然! ハルキちゃんは好きなコーデとかある?」
「この服ですね! つむぎさんに着てほしいです!」
「あはは……気が向いたらね」
「はい!」
そんな会話をしていると、突然ドアが半開きになる。
「もー、どうかした? 絃」
「さっきはすみませんでした!」
「い、いいよ……それよりどうかしたのかな? 弟くん」
「あんた……じゃなくて、あなたってねーちゃんの恋人なんでしょ?」
「うん。一応……」
「なら、証明して!」
「えっ?」
「絃? お姉ちゃんたちは人前でそういうことはしないから。わかったら部屋に戻りなさい」
とてつもない威圧感を放ち、ボクの腕に鳥肌が立つほど怒るつむぎさん。
そんなつむぎさんに対し、ボクはこう言った。
「つむぎさん! ボクのことも、そんなふうに叱ってください!」
「えっ……?」
つむぎさんが困惑していつもどおりの雰囲気に戻る。
それにしても可愛いなぁ。
「すげー! さすが恋人だな! ねーちゃんの怒りを鎮めた! よかったら、オレを弟子にしてください!」
「その場合、なんの弟子になるんだ……?」
「ほら、ハルキちゃんが困ってるでしょ!」
「ハルキさん、お願いします!」
「だーめ! ハルキちゃんは私のものなの!」
「五分だけでもいいので!」
「ダメだってば! ほら、ハルキちゃんもなんとか言ってよ」
なんだろう、この幸せな空間は。
つむぎさんがボクを所有物として扱ってくれている……!
ありがとう、弟くん。
「じゃあ、ボクがつむぎさんとハグするから、それで恋人ってことでいいかな?」
「は……ハグ!? し、失礼しました!」
「ハグをする」と聞いた瞬間、猛スピードで去っていく弟くん。
…………なんで?
「絃はね、ハグがえっちなことだと思ってて、キスしたら子どもができると思ってるの」
「な、なるほど……」
ということは、ひょっとしてボクがものすごくスケベなヤツみたいに見られたってことか?
まぁ、べつに間違ってはいないけど。
「ではつむぎさん、ハグしましょう!」
「いやしないよ!?」
「じゃあ膝枕! 膝枕はどうでしょう?」
「もう、しょうがないなぁ……」
「ありがとうございます」
ボクはベッドに横になって、つむぎさんの膝に寝転がる。
「それにしても、弟がいたんですね」
「うん。ハルキちゃんは?」
「ボクは一人っ子です」
「そっか。よしよし」
こうして、ボクは幸せなひと時を過ごした。
弟くんのおかげでつむぎさんもボクを大切にしてると知れたし、今日はいい日だったな。
そう確信してしまうほど満足するボクだった。




