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男装女子と善人女子  作者: 私信
日常編
14/40

第十四話 入れ替え


 きっかけは、私の一言だった。


「おはようございます、つむぎさん」

「うん。おはよう、ハルキちゃん」

「相変わらず可愛いですね!」

「……どうかした?」

「いえ! 最近ドタバタしていたので!」

「そうだね。ハルキちゃんにとっては新鮮な体験ばっかりだったかもね」

「はい!」

「じゃあ、入れ替えしない?」

「……というと?」


 ハルキちゃんに内容を説明する。

 簡単に言うと、『二人が一緒のときだけ口調を入れ替える』というものだ。


「面白そうです!」

「だよね? 本格的にやるのはお昼休みからね!」

「は、はい! でも、ボクがつむぎさんの口調を真似するのか……」

「その代わり、呼び方は好きにしていいからね?」

「はぁ……」


 こうして、まずは実験台として、私の舎弟である不良さんたちにやってみることにした。


「それじゃあ、試しに不良さんたちにやってみよう!」

「は、はい!」


 私たちは登校中の不良さんたちを発見し、早速やってみる。


「おーい、三人ともー!」

「「「あん?」」」

「よーし! ゴホン……よう、不良三兄弟」

「いいですね、上手いです」

「ハルキちゃんも、ほら!」

「えぇ……? こいつらに挨拶するのは嫌だなぁ」

「……ハルキちゃん?」


 私はいつもより声のトーンを落とし、ハルキちゃんを脅す。


「おっ、すげぇオーラだ……!」

「だな!」

「やっと姐さんとしての自覚が芽生えたのか……?」

「おはよう、不良三兄弟さんたち……! あのー、これで勘弁してください」

「いいよハルキちゃん!」

「うわっ、春木がきめぇ」

「キモっ!」

「気持ち悪っ!?」

「おいてめぇら、握力五十キロ弱の拳でアイアンクローしてやろうか?」

「ハルキちゃん落ち着いて……! あと不良さんたちも謝って!」

「「「……サーセン」」」

「ほら、不良さんたちも反省してるし……」

「はいはい、わかりましたよ」


 よかった、わかってくれた。


「それで?」

「なにしてたんスか?」

「春木がキモ……変だったんスけど?」

「実はね、今日はみんなの前で口調を入れ替えてみようかなと」

「なんだ、そういうプレイか」

「だな」

「あんまりやらない方がいいスよ。姐さんは美人なんで」

「えっ……?」


 つい聞き慣れない発言に照れてしまう私。


「おいお前、いまつむぎさんを口説いたな?」

「大丈夫だって! 私はハルキちゃん一筋だから!」

「そうですか……ならいいか」

「春木がめんどくせーから行くか」

「じゃ、またあとで。姐さん」

「そういうことで」

「うん! バイバイ!」

「じゃあ、ボクも行きますね」

「うん。じゃあね」

「はい!」



 こうして、あっという間に時は過ぎ……昼休みがやってくる。


「お邪魔しまーす!」

「「「邪魔するっス」」」

「あ、ハルキちゃん!」

「どうも! 今日はおさげなんですね! 可愛いです」

「ほら、また白旗さんにやってもらったんだ!」

「へぇ……!」

「あっ、今日は奇声を上げないんだね。えらいえらい」


 私は背伸びをして、ハルキちゃんの頭を撫でてやる。


「あの、照れるので……」

「あ、やめた方がいい?」

「いえ! 続行で!」

「完全に尻に敷かれてるな……」

「俺たちには関係ねーけど」

「つーか春木のヤツ、デレデレしすぎだろ」


 ひと通り撫で終えてから、今朝のアレをやってみる私。


「ハルキちゃん……じゃなかった。アキラさん、今日もカッコいいです!」

「はい……?」

「どう? 似てた?」

「も、もう一度いいですか?」

「やだ」

「えっ?」

「ハルキちゃんも真似して!」

「は、はい! 早乙女ちゃん、もう一度いいかな……? で、どうでしょう?」

「いいね! ゴホン……アキラちゃん、今日もカッコいいですね!」

「おお!」

「アキラさんとアキラちゃん、ハルキちゃんはどっちがいい?」

「そうですね……聞き分けたいのでもう一回お願いします」

「言いづらいんだけどさ……ハルキちゃん、この状況を楽しんでるよね?」

「はい! ボクはつむぎさんに嘘はつきません!」

「はぁ……まあ、私的にはどっちでもいいんだけど……」


 そうため息をついていると、白旗さんが話しかけてきた。


「あのー……」

「あ、白旗さん」

「先輩、なんか用ですか?」

「ハルキちゃん、なんかガラ悪いね?」

「……そうですか?」

「あのさ、これみんなが思ってそうだからあたしが代表して言うけど、いいかな?」

「うん。なぁに?」

「二人とも、今日はイチャイチャの仕方を変えたのかなーって」

「あ、うん。たまには口調を入れ替えてみようかなって、ね!」

「そういうことです。先輩は自分の髪の毛でもいじっててください」

「ハルキちゃん……?」

「ごめんなさい! 言い過ぎました!」

「うん。すぐ謝れて偉いよハルキちゃん!」

「まあ、あたし的にはどっちでもいいんだけどね」

「じゃあね白旗さん! また今度、髪いじってね!」

「はい! わかったよ、早乙女さん!」


 白旗さん、相変わらず返事だけ敬語だ……。


「ハルキちゃん、それじゃあね」

「えっ!? もうですか?」

「うん。悪いけど、もうお昼休み終わるから」

「そうですか……」

「じゃあまたね。あっ、それと……」

「なんです?」


 私は背伸びをして、ハルキちゃんの耳元でコソッとつぶやく。


「『アキラさん』か『アキラちゃん』、どっちがいいかあとで教えてね? 将来のためにも」

「はい!!」


 そう自信満々に言うハルキちゃんに微笑む私。

 相変わらず私の恋人は可愛いなぁ。

 ついそんなことを思ってしまう私だった。

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