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男装女子と善人女子  作者: 私信
日常編
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第十五話 恋愛相談


「おはよう、ハルキちゃん」

「はい! おはようございます!」

「あっ……! 下駄箱になんか入ってる! これ、手紙だ」

「……燃やしますか?」

「いやいや、燃やさないからね!?」

「まったく、誰ですかね? とりあえず、ボクもついて行きますから」

「まだ告白と決まったわけじゃ……」

「あれ? ボクの方にもなにか入ってるぞ?」


 ハルキちゃんのところへ向かうと、同じ柄の便箋だった。


「ハルキちゃんの方も手紙だね。と、いうことは……?」


 …………どういうことだろうか?


「同じ便箋ですし、とりあえずイタズラの類ではなさそうですね」

「えーと……『放課後に一年の教室でお待ちしております』って書いてあるよ!」

「あっ、こっちもだ。肝心なのは、どこのクラスなのかということですね」

「とりあえず、放課後まで待とう?」

「ですね!」

「あと、必要そうな人材にも声かけておくから!」

「それって誰ですか……?」

「放課後まで待ってて! 代わりにハルキちゃんはお昼休みの間に、この手紙の差出人を特定しておいて!」

「は、はい!」



 そうして今日も放課後がやってくる。


 ハルキちゃんからアプリでメッセージをもらったので、手紙の差出人とどこのクラスに呼ぶのかは特定できた。

 あとは、もしものときのために、ある人を説得した。

 

「ごめん! 遅れたかな?」

「いえ、大丈夫です。で、どうして白旗先輩までいるんですか?」

「必要かと思って! それで、そこのショートボブの子が?」

「はい。じゃあ佐々木さん、ボクたちに用があるんでしょ?」

「うん……。実は、早乙女先輩と春木くんに相談があるんです」

「ほほう? 恋バナかな? 恋バナでしょう?」

「あ、はい。えっと……あなたは?」


 佐々木さんって子は白旗さんに尋ねる。

 そこで、白旗さんは軽快に自己紹介した。


「白旗千早! 早乙女さんに呼ばれたんだけど、イメチェンしない?」

「えっ? 短い髪でもできるんですか?」

「あたしに捌けない髪はない! というわけで、イジりますね」

「ちょっ、わっ……!?」

「それで、佐々木さん……だっけ? なんの相談?」

「えっと、先輩の男子に告白を……というか、なんなんですかこの人?」

「つむぎさんの同級生の、変人の先輩だよ」

「こらこら。私の髪型をアレンジしてくれた……オシャレ好きな子だよ。ずっと前にハルキちゃんが叫んだときがあったでしょ?」

「ああ、あの春木くん絶叫事件ですか」

「聞こえてたのか……アレ」

「でも、アレもいつもと違って可愛かったよね!」

「早乙女先輩って変わってますね」

「そう?」


 そんな会話をしているうちに、ヘアアレンジが終わる。


「出来上がり! ゴム一つでできる一つ結び、完成! ほら、鏡をどうぞ?」


 そう言って佐々木さんに手鏡を差し出す白旗さん。


「わぁっ……可愛いです!」

「そりゃよかった。あたしは髪いじりが好きだから、よかったら下級生のみんなにも宣伝してね!」

「はい、ぜひ! 早乙女先輩、白旗先輩を連れてきてくれてありがとうございます!」

「ううん。それより、頑張ってね!」

「はい! 先輩の男子に告白をされたのですが、迷ってました。でも、付き合おうと思います! 恋愛は一度きりじゃないので!」

「告白された側だったのか……」

「うんうん、若人わこうどは恋愛してなんぼだよね!」

「白旗さん、そういう年配の人みたいな言い方はちょっと……」

「はっは! ごめんごめん。それじゃあ早乙女さん、約束どおり髪をイジらせてね!」

「うん!」


 私が返事をすると、ハルキちゃんがつぶやく。


「白旗先輩……」

「なにかな? 春木くん」

「つむぎさんを可愛くしてやってく……ください」

「ハルキちゃん……!」


 私は歓喜のあまりハルキちゃんに抱きついた。


「つ、つむぎさん!?」

「ようやく白旗さんと仲良くなろうとしてくれたんだね!」

「べつに、悪いヤツじゃないと思っただけです!」

「うんうん、そっかそっか」

「あの、早乙女さん。イチャイチャしてないで早く座ってくれる?」

「ああ、ごめんね?」


 そう言われて、椅子に座り直す私。


「では、ありがとうございました」

「うん。じゃあ佐々木さん、宣伝頼むよ!」

「はい!」


 そうして、佐々木さんは教室から出ていった。


「それより白旗先輩! なんかこう……可愛い系はできないんですか!? 内側にハネさせる的な!」

「それには道具が必要なんだよねー」

「大丈夫だよ、ハルキちゃん。白旗さん、シンプルなのでお願い」

「じゃあ、ハーフアップにするね」

「え? それ、前のと同じじゃないの?」

「あれはハーフアップのお団子。これはただのハーフアップですね!」

「へぇ……ハルキちゃんもイジってもらえば? 私がメロメロになるかもよ?」


 ……まあ、もう十分メロメロかもしれないけど。


「いえ、ボクはいいです」

「あたしもメンズのは勉強してないから、ごめんね?」

「そっかぁ……」


 個人的には、一つ結びハルキちゃんが見たかったなぁ……。


「あっ! なら白旗さん、私を弟子にして?」

「……というと?」

「私にヘアアレンジのやり方を教えてください!」

「そんなの、スマホで調べれば……」

「うー……そうなんだろうけどさ……」

「なにか事情がありそうですね。では、弟子にはしません」

「うん……」

「弟子にはしませんが、いつか下級生たちにヘアアレンジのやり方を教える講座を開こうと思ってます」

「へぇ、いいねそれ!」

「だから、そのときに早乙女さんも一緒に学んでください」

「うん! ありがとね!」

「いえいえ。ではあたしもそろそろ帰ります。それと、ここは一年の教室なので、あんまり長居しないように」

「あっ、うん」


 こうして、白旗さんは帰っていった。


「あのー、どうして白旗先輩に弟子入りをしようと?」

「ハルキちゃん、ファッションに興味ありそうだったから」

「いや……まあ、ないと言えば嘘になりますけど」

「ハルキちゃんをもっと可愛くしたいから、髪型を変えてあげたかったの」

「そうですか……」

「でも、私の恋人のことだし、私自身が頑張らないと!」

「あの、そんなことしなくても大丈夫ですよ?」

「だけど、ハルキちゃんは魅力的だからなぁ」


 だからこそ、女の子らしいことをさせてあげたい。

 ハルキちゃんだって、立派な女の子なんだから。

 ……今は男装をしてるけど。


「つむぎさんは頑固ですし、わかりました。ボクも頑張ります!」

「なにを?」

「組員の連中にヘアアレンジさせます!」

「いや、しなくていいよ? ハルキちゃんの髪に触っていいのは私だけにしたいから」

「つむぎさん……カッコいいです!」

「うん、ありがとう。それじゃあ、私たちも帰ろっか」

「はい!」


 こうして、ハルキちゃんに女の子らしいことをしたくなった私。

 ハルキちゃんは可愛いから、せっかくなら女の子っぽくさせたいなぁ。

 そう思ってしまう私がいた。

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