第十六話 相合傘と膝枕
「あ、今日雨降るんだ……」
朝食のトーストを食べながらテレビを観ていると、天気予報では雨のようだ。
ハルキちゃんと付き合ってからは初めてかも……。
今日は念のために傘を持っていこう。
「いってきます!」
そんなこんなで登校していると、前方からハルキちゃんが歩いてきた。
「おはようございます!」
「うん、おはよう」
「今日は雨が降るらしいですね!」
「うん。そうなんだよね」
よし。ここは少しだけ、ハルキちゃんをからかってみよう。
「実は私、相合傘がしたくて傘を持ってきてないんだ……」
「えっ!? 実は、ボクもです……」
「ふーん、ハルキちゃんらしいね!」
「はい……。こうなったら、不良三兄弟から……」
「いやいや! 嘘だよ? ちゃんと折り畳み傘を持ってきたから!」
「そうですか。よかった……」
「そういえばハルキちゃんって、男の人に厳しいよね?」
「ええ、男に囲まれて生きてきたので」
「そっか。組員さんたち? と育ったんだっけ?」
「はい。あいつらはいいヤツらですよ」
「そ、そうなんだ……」
……私って、いまだにハルキちゃんの家の事情がよくわかってないんだよなぁ。
「でも、放課後になったら雨が止んだりしてね!」
「というと?」
「例えば、お昼休みとかはザーザー降って、放課後にはもう晴れてるとか」
「そ、そんな……」
「がっかりしないで!? 例えばだから!」
「でも、つむぎさんの勘は当たるからなぁ……たまに」
「じゃあ、そのときも相合傘しよう! 晴れてても相合傘!」
「おおっ、さすがつむぎさん! 漢らしいです!」
「ふふん。あんまり嬉しくないけど、ありがとね!」
そして今朝も不良さんたちに挨拶をして、昼休みも過ぎ、あっという間に放課後に。
雨の方はというと……
意外と弱く、ぽつぽつと降っていた。
私が昇降口で待っていると、ハルキちゃんもやってくる。
「では行きましょう!」
「うん!」
折り畳み傘を開き、相合傘をする。
でも……
「あの、つむぎさん……傘にボクの頭が当たってます」
「えっ!? ごめんね?」
「いえ、可愛いので大丈夫です」
「……それはホントに大丈夫なの?」
冷静にツッコミを入れつつ、私は傘を持つ。
「でも、つむぎさんってカッコいいですよね」
「うん。ハルキちゃんも可愛いもんね」
「はぁ……そう言われるのは、ちょっと複雑ですが」
ぽつぽつと傘に雨の当たる音が心地いい。
でも、少しだけハルキちゃんに恥をかかせてる気がする。
ハルキちゃんは真面目だから。
「……ハルキちゃん、大丈夫?」
「はい!」
「ごめんね? ちっちゃくて」
「可愛いからいいじゃないですか」
「でも、ハルキちゃんと同じ身長になったらどう思う?」
「えーと……可愛いですね」
「……まあ、そうだよね。ハルキちゃんだもんね」
「つむぎさんだって同じこと言いそうですけどね」
ちっちゃいハルキちゃんかぁ……。
「うーん、反論できない……」
「でも、身長が変わってもお互いの印象が変わらないってのは、意外と素敵な関係じゃないですか?」
「…………そうだね」
そんなことを話しながら下校していると、雨が止んだ。
「……ハルキちゃん。傘、このままでいいかな?」
「はい、よろこんで」
「うん」
そう言いつつも、周りをチラチラと見て気にするハルキちゃん。
やっぱりハルキちゃんは真面目なんだなぁ。
それを解決するために、私はハルキちゃんに向かってつぶやいた。
「ハルキちゃん」
「な、なんですか? めっちゃ見られてますけど」
「ハルキちゃんは気になるだろうから、私から言うね」
「はい……?」
「私だけを見ていて。目を離さないで、私だけ見て」
「は、はい!」
「うん、恥かかせてごめんね?」
「いえ! つむぎさんのためならば!」
こうして、ハルキちゃんと見つめ合いながら家まで送ってあげた。
「入っていきます? というか、入ってください」
「うん、わかった」
ハルキちゃん、我慢ができなくなったのかな?
でも、私も同じ気持ちだと思う。
私も、恋人としてハルキちゃんに甘えたくなったから。
「ハルキちゃん」
「はい……!」
颯爽とハルキちゃんの部屋へ向かい、ドアを閉めた瞬間ハルキちゃんは部屋に鍵をかけた。
「じゃあハルキちゃん、寝て?」
「はい!」
ハルキちゃんがベッドに寝転がると、私は膝枕してあげる。
それから、
「んっ……」
と、おでこにキスしてあげる。
「……まだ口じゃないんですね」
「うん。じゃあ、いつもみたいにギュッてするね?」
「はい!」
ハルキちゃんの頭を抱きしめる。
ハルキちゃん曰く、柔らかいらしい。
「なにが?」とは聞かなかったけど、きっとそういう意味なんだろうな。
「相変わらず柔らかいです……!」
「……もう、相変わらずえっちだなぁ」
「すみません」
「でも、そういうところも好きだよ」
「ボクも、つむぎさんが好きです」
「うん……!」
こうして夕日が沈むまで、ハルキちゃんの部屋でずっとイチャイチャしていた。
私が十八歳になるまではえっちなことを禁止してるけど、これくらいならいいだろう。
そう考えながらも、しばらくしたらハルキちゃんちを出た。
水たまりを見つけるたびに、ハルキちゃんのことを思い出して顔を熱くする私だった。
唐突ですが、明日からしばらく二話同時更新となります。
突然ですが、ご理解のほどよろしくお願いします。




