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男装女子と善人女子  作者: 私信
日常編
17/37

第十七話 言い争い

今日からしばらく二話同時掲載です。

よろしくお願いします


 きっかけは私の一言だった。

 それは下校中に起こったことで、


「ハルキちゃんって可愛いよね!」


 と言ったのが始まりだ。

 しかし、ハルキちゃんはいつものようにこう返す。


「いえ、つむぎさんの方が可愛いですよ!」

「そうかなぁ……」

「はい! 自信を持ってください!」

「ハルキちゃんもね? 一応女の子なんだし」

「それはつむぎさんも同じでしょう?」

「それはそうなんだけど……ハルキちゃんは大切な恋人だから」

「ボクもです」


 ここで私は、ハルキちゃんが私の言ったことばかりを返してるのに気付く。


「ハルキちゃん、オウム返しばっかりだね」

「すみません……」

「私のボキャブラリーが少なくてごめんね……」

「そっちですか?」

「うん。私が悪い気がする」

「いやいや、ボクが悪いですから!」

「ならさ! 明日一日は会話しないってのは?」

「それは、どうしてですか?」

「……『会えない時間が愛を育てる』ってやつじゃないけど、会話しない時間が『愛』を育てる気がする」

「でもボク、つむぎさんと会話できないのはつらいです……」

「可愛いなぁ……ならさ、喧嘩してるときはアリで!」

「喧嘩ですか?」

「うん! 『喧嘩するほど仲がいい』って言うよね!」

「なるほど……例えば?」

「そうだなぁ……」


 私はハルキちゃんに対して悪口を考える。


「ハルキちゃんのえっち! とか?」

「それ、実際に言わないでくださいね? 変なレッテルが貼られるので」

「うん。でも実際のところ、不満はあると思うんだよね。私もあるし」

「ど、どんな不満ですか?」

「秘密! 明日喧嘩するときに言ってあげる!」

「それは楽しみです。では、ボクも考えておきます!」

「うん。それじゃあ、また明日」

「はい。また明日」



 それから翌日、いつもどおりハルキちゃんと一緒に登校する。


「おは……あ、ごめんね」

「……はい」


 無言で登校する私たち。

 でも、不安でついついハルキちゃんの目を見ては逸らす。

 そんなヤキモキした空気に喝を入れたのは、不良さんたちだった。


「おはようっス!」

「おっす!」

「どもっす!」

「あ、不良さんたち! おはよう」

「よう、不良三兄弟」

「おう」

「それより、さっきから見てると……」

「変な空気っつーか、なんかあったんスか?」

「実は……ハルキちゃんと話さない約束をしたの!」

「ああ」

「いつもの……」

「今回はそういうプレイっスか」

「プレイ……?」


 プレイってなんだろう?


「おい、つむぎさんに変な言葉を吹き込むな」

「へいへい」

「でも、周りから見るとなにかあったようにしか見えないっスよ?」

「せめて事情を話しておいた方がいいっスね」

「わかった! じゃあね、みんな!」

「「「うす!」」」


 こうして、不良さんたちと分かれる私。



 それから、昼休みがやってくる。


「お邪魔します」

「「「お邪魔しまっス!」」」


 いつもどおり二年の教室へとやってくるハルキちゃんたち。

 よーし、喧嘩するぞ!


「は、ハルキちゃん!」

「……なんですか?」

「実は、えっと、その……今日は不満をぶちまけようと思うから、覚悟してね!」

「望むところです! ボクだって、つむぎさんに対して不満があるので!」

「じゃあ、私のターンから始めるね!」

「はい……!」

「えっと……ハルキちゃんはもっと自分を可愛いって自覚すべきだと思うの!」

「はぁ……」

「カッコつけるのは構わないけど、ハルキちゃんも人間だよ!? もっと自分を大切にすること!」

「ぐっ……! 手強いな……」


 ハルキちゃんが苦戦していると、クラスメイトの男子が尋ねてきた。


「早乙女さん、これなんの話してるの?」

「えっと、ハルキちゃんと喧嘩したことないから、ちゃんとしたいなって思ってね」

「そ、そうなのか」

「では、ボクからも行きます!」

「うん!」

「つむぎさんは可愛いし、カッコいいし、頼りにもなります。非の打ち所がない人間です! でも、もっと自分を大切にしてほしいです!」

「私と同じ……?」

「ですね。やっぱり似た者同士ってことですかね」

「それじゃあ、また私のターン! だけど……えっと、私を好きすぎるのを直してほしい!」

「えっ……?」

「私のために行動するのはいいと思う! けど、ハルキちゃんはそれ以外を蔑ろにしすぎな気がする!」

「ぐぅ……負けました」


 屈むハルキちゃん。

 そんなハルキちゃんに、私は目線を合わせるために少し屈み、罰を与える。


「罰として、これからは私優先でもいいから、その次に自分や他人を大切にして生きてね」

「はい!」

「じゃあ、今日はもう放課後まで話しかけないでね」

「はい」


 こうして、喧嘩は収まった。

 

 それにしても、考えていたことが同じだったとは……

 嬉しくてハルキちゃんと目を合わせるも、少し恥ずかしくて逸らしてしまう。

 そんな光景を見た不良さんたちはこう発言した。


「話さなくてもイチャイチャするとは……」

「さすが姐さん」

「つーか、相変わらず春木がベタ惚れだな」

「あの、私たち、イチャついてないよ!?」

「そうだ! ボクはただ、つむぎさんに気持ちを伝えたいのを我慢してるだけだ!」

「そうそう! あとハルキちゃん、絶対に話しかけないでね!」

「はい!」

「いやイチャついてるじゃねーか!」

「むしろ会話なしでイチャイチャするとか」

「もはやバカップルを通り越して夫婦だな」


 そんなこともあったけど、なんだかんだで今日も放課後がやってくる。


「つむぎさん! 帰りましょう!」

「うん」


 それから、いつもと同じくハルキちゃんと二人で下校する。


「どうだった? あんまり話さなかったけど」

「つむぎさんと心が通じた気がしました!」

「私も! 同じこと考えてたのはびっくりしたなぁ」

「そうですね」

「でも、危ないときはせめて『自分も』大切にしてよ?」

「はい! わかってます」

「うん。それならいいかな」

「つむぎさん」

「ん?」

「好きです」

「ふふっ……私もだよ。どうかしたの?」

「たまにはつむぎさんにもオウム返ししてほしくて……」

「そっか。手、繋ごう?」

「はい!」


 こうして、いつもとは違うカタチで語り合った私たち。

 それでも、繋がっているというか……同じことを考えてるのは運命を感じたなぁ。

 そんなふうにして、私たちは今日も一緒に下校するのだった。

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