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男装女子と善人女子  作者: 私信
才上編
18/38

第十八話 転校生 その①

ここから新キャラクターが登場します。



 その日は珍しく寝坊して、遅刻寸前で登校した。

 

 呼吸を荒げながらも、二年生の教室へと向かう。

 急いでドアをガラガラと開けると、ホームルームをする寸前だった。


「はぁ……間に合った」


 そうつぶやくと、先生が口を開く。


「遅刻ギリギリですよ、早乙女さん」

「す、すみません」


 教室の一番後ろの列の自分の席に座ろうとすると、突然見たことのない少女が私に扇子を向け、バッと開いた。


「ごきげんよう、早乙女さん」

「ご、ごきげんよう……」


 ついつい返事をしてしまう。

 ……とここで、彼女はみんなに自己紹介を始めた。


「わたくしは才上さいじょう雪菜ゆきな。よろしくお願いしますわ、みなさん?」

「はい、みんな拍手ー!」


 パチパチと拍手が飛び交う中、才上さんは私の後ろの席に座った。

 使われていない机とかは別の教室にあるはずなのに、どこから用意したのだろうか。

 だけど、才上さんはそんなことお構いなしに平然と扇子で仰いでいる。

 なんだか不思議な子が後ろの席になっちゃったなぁ。


「では、才上さんは転校初日ということですので……一時間目まで少し時間があるので、自己紹介などを済ましておいてください」

「はーい!」


 私以外のクラスメイトが声を揃えて返事をした。

 それから、才上さんが質問責めされる。


「黒髪ロングで美人とか、なんかもうすごいな!」

「いえいえ」

「扇子はなんなの? なんかのプロみたい!」

「ただの趣味ですわ」

「『ごきげんよう』って挨拶してたけど、お金持ちなの?」

「……かもしれませんわね」


 上手い具合に質問をいなす才上さん。

 ここは、私も質問した方がいいのかな?

 そう思い、私は振り返って後ろの席の才上さんに質問してみる。


「才上さんって、転校してきたワケとかあるの?」

「そうですわね……ありますわ」

「へぇ! それってどんな理由?」

 

 私がそう尋ねると、再び扇子を向けられる。


「あなたのために来ましたの」

「えっ?」

「早乙女つむぎさん。わたくし、あなたとお友達になりたくってよ?」

「そうなの!? なろうよ! よろしくね、えーと……」

「雪菜でしてよ」

「じゃあ、よろしくね! 雪菜ちゃん!」


 私は雪菜ちゃんの両手を手で包む。


「あなた、スキンシップが激しいですわね……」

「あっ、ごめんね? 嫌だった?」

「いえ、お気になさらずに」

「うん。じゃあ、教科書一緒に見る?」

「……どうやって?」

「私が後ろ側に下がればいいんだよ! ほら、もうすぐ一時間目だから、席をズラすね?」

「……変わった人ですわね」


 雪菜ちゃんと話していると、周りのクラスメイトから話しかけられる。


「つむぎちゃん、浮気はダメだよ?」

「『人たらし』って春木が前に言ってたのは本当だったのか」

「じゃあ早乙女さん、才上さんのことはよろしくね」

「うん……」

「ではつむぎさん、これからよろしくお願いしますわ」

「うん!」


 こんな調子で一時間目が始まり、雪菜ちゃんは私の教えることにいちいち驚いていた。

 なんだか少しだけハルキちゃんに似ている気がして、ちょっぴり可愛いと思ってしまう。


 そうして、昼休みがやってくる。


「お邪魔します!」

「「「お邪魔しまっス!」」」

「あの、つむぎさん。あの男の子たちはなんですの……?」

「ああ、あれは私の舎弟だよ」

「舎弟……?」

「うわっ!? 才上!?」

「お久しぶりですわね、春木はるきあきら

「なんでお前がここにいる?」

「あなたに言う筋合いはありませんわ。ね、つむぎさん?」

「うーん……なら、友達の私には話してくれる?」

「…………我が企業のライバル会社である『春木家』の詮索のためですわ。そこで、早乙女つむぎさん。あなたにフォーカスを当てましたの」

「我が企業?」

「つむぎさん。そいつはお嬢様で、大昔に会合で一度だけ会ったことがある! とんでもないヤツだ」

「失礼でしてよ? 今日は庶民の一日を体験したくて生活してるだけですわ」

「嘘つけ!」

「あなたには言ってませんわ」


 なんだろう? 

 なぜだか険悪ムードになってる気がする。

 ここは雪菜ちゃんの友達であり、ハルキちゃんの恋人である私が頑張らないと!


「雪菜ちゃん」

「はい?」

「どうせなら、学校生活を楽しもう?」

「もちろんですわ」

「つむぎさん……?」

「ハルキちゃんは……あとで頭撫でてあげるから、じっとしてて」

「はい!」

「あの、つむぎさん……? わたくしには?」

「えっ? ないよ? だって、『なでなで』は恋人限定でしょ?」

「はっはっは! 悔しいか才上!」

「ぐっ……! 春木晶め……!」

「そんなにやってほしいなら、あとで雪菜ちゃんにもやってあげるね」

「「えっ!?」」


 こうすれば公平だし、仲良くなるよね……?


「残念でしたわね、春木晶。わたくしたちは親友なので、スキンシップなどたやすいことでしてよ」

「いや、私たちはまだ友達なんじゃないかな?」

「…………では、わたくしと親友になってくださいまし」

「……いいけど、あんまりハルキちゃんとは争わないでね?」

「ええ、わかりましたわ」


 こうして、才上雪菜ちゃんがこの学校にやってきた。

 でも、こんなに争ってて、本当に二人は仲良くなれるのかな?

 だなんて、ついついらしくないことを心配してしまうのだった。

しばらくは才上編が続きます。

才上編の間は毎日二話掲載します。

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