第十八話 転校生 その①
ここから新キャラクターが登場します。
その日は珍しく寝坊して、遅刻寸前で登校した。
呼吸を荒げながらも、二年生の教室へと向かう。
急いでドアをガラガラと開けると、ホームルームをする寸前だった。
「はぁ……間に合った」
そうつぶやくと、先生が口を開く。
「遅刻ギリギリですよ、早乙女さん」
「す、すみません」
教室の一番後ろの列の自分の席に座ろうとすると、突然見たことのない少女が私に扇子を向け、バッと開いた。
「ごきげんよう、早乙女さん」
「ご、ごきげんよう……」
ついつい返事をしてしまう。
……とここで、彼女はみんなに自己紹介を始めた。
「わたくしは才上雪菜。よろしくお願いしますわ、みなさん?」
「はい、みんな拍手ー!」
パチパチと拍手が飛び交う中、才上さんは私の後ろの席に座った。
使われていない机とかは別の教室にあるはずなのに、どこから用意したのだろうか。
だけど、才上さんはそんなことお構いなしに平然と扇子で仰いでいる。
なんだか不思議な子が後ろの席になっちゃったなぁ。
「では、才上さんは転校初日ということですので……一時間目まで少し時間があるので、自己紹介などを済ましておいてください」
「はーい!」
私以外のクラスメイトが声を揃えて返事をした。
それから、才上さんが質問責めされる。
「黒髪ロングで美人とか、なんかもうすごいな!」
「いえいえ」
「扇子はなんなの? なんかのプロみたい!」
「ただの趣味ですわ」
「『ごきげんよう』って挨拶してたけど、お金持ちなの?」
「……かもしれませんわね」
上手い具合に質問をいなす才上さん。
ここは、私も質問した方がいいのかな?
そう思い、私は振り返って後ろの席の才上さんに質問してみる。
「才上さんって、転校してきたワケとかあるの?」
「そうですわね……ありますわ」
「へぇ! それってどんな理由?」
私がそう尋ねると、再び扇子を向けられる。
「あなたのために来ましたの」
「えっ?」
「早乙女つむぎさん。わたくし、あなたとお友達になりたくってよ?」
「そうなの!? なろうよ! よろしくね、えーと……」
「雪菜でしてよ」
「じゃあ、よろしくね! 雪菜ちゃん!」
私は雪菜ちゃんの両手を手で包む。
「あなた、スキンシップが激しいですわね……」
「あっ、ごめんね? 嫌だった?」
「いえ、お気になさらずに」
「うん。じゃあ、教科書一緒に見る?」
「……どうやって?」
「私が後ろ側に下がればいいんだよ! ほら、もうすぐ一時間目だから、席をズラすね?」
「……変わった人ですわね」
雪菜ちゃんと話していると、周りのクラスメイトから話しかけられる。
「つむぎちゃん、浮気はダメだよ?」
「『人たらし』って春木が前に言ってたのは本当だったのか」
「じゃあ早乙女さん、才上さんのことはよろしくね」
「うん……」
「ではつむぎさん、これからよろしくお願いしますわ」
「うん!」
こんな調子で一時間目が始まり、雪菜ちゃんは私の教えることにいちいち驚いていた。
なんだか少しだけハルキちゃんに似ている気がして、ちょっぴり可愛いと思ってしまう。
そうして、昼休みがやってくる。
「お邪魔します!」
「「「お邪魔しまっス!」」」
「あの、つむぎさん。あの男の子たちはなんですの……?」
「ああ、あれは私の舎弟だよ」
「舎弟……?」
「うわっ!? 才上!?」
「お久しぶりですわね、春木晶」
「なんでお前がここにいる?」
「あなたに言う筋合いはありませんわ。ね、つむぎさん?」
「うーん……なら、友達の私には話してくれる?」
「…………我が企業のライバル会社である『春木家』の詮索のためですわ。そこで、早乙女つむぎさん。あなたにフォーカスを当てましたの」
「我が企業?」
「つむぎさん。そいつはお嬢様で、大昔に会合で一度だけ会ったことがある! とんでもないヤツだ」
「失礼でしてよ? 今日は庶民の一日を体験したくて生活してるだけですわ」
「嘘つけ!」
「あなたには言ってませんわ」
なんだろう?
なぜだか険悪ムードになってる気がする。
ここは雪菜ちゃんの友達であり、ハルキちゃんの恋人である私が頑張らないと!
「雪菜ちゃん」
「はい?」
「どうせなら、学校生活を楽しもう?」
「もちろんですわ」
「つむぎさん……?」
「ハルキちゃんは……あとで頭撫でてあげるから、じっとしてて」
「はい!」
「あの、つむぎさん……? わたくしには?」
「えっ? ないよ? だって、『なでなで』は恋人限定でしょ?」
「はっはっは! 悔しいか才上!」
「ぐっ……! 春木晶め……!」
「そんなにやってほしいなら、あとで雪菜ちゃんにもやってあげるね」
「「えっ!?」」
こうすれば公平だし、仲良くなるよね……?
「残念でしたわね、春木晶。わたくしたちは親友なので、スキンシップなどたやすいことでしてよ」
「いや、私たちはまだ友達なんじゃないかな?」
「…………では、わたくしと親友になってくださいまし」
「……いいけど、あんまりハルキちゃんとは争わないでね?」
「ええ、わかりましたわ」
こうして、才上雪菜ちゃんがこの学校にやってきた。
でも、こんなに争ってて、本当に二人は仲良くなれるのかな?
だなんて、ついついらしくないことを心配してしまうのだった。
しばらくは才上編が続きます。
才上編の間は毎日二話掲載します。




