第四話 後輩
「よーし! 今日はハルキちゃんと向き合うぞー!」
そう意気込みつつ登校していると、昨日の不良さんたちが三人で校門前にたむろっていた。
ハルキちゃんにリベンジするつもりなのかな?
そう思い、私は不良さんたちに話しかける。
「あの……」
「あっ、昨日の先輩!」
「ヒロキ、マジで言うの?」
「たりめーだ! 行くぞ!」
なんだろう? 私に用でもあるのかな?
「その前に、みんなに迷惑かけてそうだし、昇降口まで行こっか」
「ショーコーグチ?」
「どんな愚痴だ?」
「サーセン! オレたちバカなんス!」
「えっと、校舎の……なんか、下駄箱が置いてあるところとかを言うんだけど……説明しろって言われたら難しいなぁ……」
「わかりました! 行くぞ!」
「おう!」
「うす!」
先生に会釈をして昇降口の端で彼らの話を聞く。
「で? ハルキちゃんにリベンジでもするの?」
「ハルキちゃんだってよ」
「ガキ扱いかよ。あのチビダセェな」
「だけど、もっとダセェのはオレたちだ」
「で、なにかな? もしかして、ハルキちゃんの身長を伸ばすためのコツを……」
「いや違うっス!」
「つーか、身長の話はもういいっつーの」
「オレたちを、あんたの舎弟にしてくれ!」
「えっ?」
聞き慣れない言葉が聞こえてフリーズする私。
「私がスケバンってやつに……!?」
「いえ、舎弟にしてください!」
「姐さんの度胸に惚れ込んじまって……!」
「あのドチビの女だってのはわかってるんス! お願いしゃーす!」
「えぇー? スケバンって、サラシ巻いて『おら!』的なやつだよね?」
「イメージ古すぎっスから!」
「つーかそれ、いつの時代の不良だよ」
「傷つけたことは謝ります! お願いします!」
「うーん、ハルキちゃんに聞いてみるかな……」
そう悩んでいると、ハルキちゃんがこわい顔で登校してくる。
「あっ、ハルキちゃ……」
「話は知らんが、まずは一発殴らせろ」
「ちょっとハルキちゃん、まずは喧嘩腰をやめようか?」
「ガキ扱いのダサチビはすっこんでろよ」
「そーだよ、おれたちは姐さんに惚れ込んだんだよ」
「つーか、春木の了承とかどーでもよくね?」
「「「……お願いします! 舎弟にしてください!」」」
声を揃えて頭を下げる不良さんたち。
周りに迷惑だし、ここは一旦舎弟にするしかないかな。
「いいよ。じゃあ、パシリ兼舎弟兼後輩ってことで……!」
「「「あざっス!!」」」
「つむぎさん、いいんですか!?」
「うん。ハルキちゃんほど面倒くさくないから」
「め、面倒くさい……」
「……ってのは冗談だけど、やんちゃしたら私が『スケバンナックル』喰らわせるからね!」
「「「ウス!」」」
「はぁ、大丈夫なのか……?」
ハルキちゃんが呆れる中、私は忠告する。
「まずは、授業をサボらないこと。カツアゲとかしないこと。そして、恐喝もしないこと! もしやったら、『ハルキちゃんアイアンクロー』だから!」
「そっちはガチでやべぇ」
「『スケバンナックル』の可愛らしさが微塵もねぇ」
「本気で更生させようとしてるな……。望むところだ!」
「じゃあ、昼休みまで頑張って! そしたら一年教室にまで私が遊びに来て、昼ごはん誘いに来るから!」
「「「ウス!」」」
「サボったかどうかはハルキちゃんが審査するから、注意してね」
「「「うす……」」」
「それじゃあハルキちゃん、少しだけ話そっか」
「は、はい……」
こうして、上履きを履いてからハルキちゃんと会話する。
「昨日はどうして返信しなくなっちゃったの?」
「あのー、親に取られました」
「お父さん? お母さん?」
「父です。ちょっと厳しくて……」
「へぇー、面白そう!」
「厳しい人です。つむぎさんくらい」
「なら私も仲良くなれそう!」
「ふざけてます?」
「全然真面目だけど?」
「あの、ハグはいつしてもいいんですよね?」
「うん。一回だけね」
そんな会話をしていると、不良さんたちが口を挟む。
「んだよ、ハグの一つもしてねぇのかよ」
「ヘタレチビ」
「チキンチビ」
「やかましい! ボクからはしてないだけだ!」
「んだよ、女からはもうハグされてんのかよ」
「ヘタレチビ」
「チキンチビ」
「ぐぬぬ……」
「まあまあ、ハルキちゃん落ち着いて」
「は、はい……!」
まったく、本当にこの四人で大丈夫なのかな?
「じゃあね。二年教室は上だから、バイバイ」
「はい! あっ、スカートは抑えてください」
「うん、わかった」
なんの意味があるんだろう?
まあいいや。
こうして私は二年教室へと向かう。
教室に着くと、いきなり仲の良い女子に絡まれた。
「つむぎちゃん、今朝不良に絡まれてなかった!?」
「ああ、舎弟にしたから大丈夫!」
「なんで!?」
みんなが注目する中、私は続けた。
「実は昨日、いじめられっ子を庇ってたら、逆にその度胸に惚れ込まれちゃって」
「ああ、だから早乙女さんは顔が傷だらけなのか」
「乱暴なことはされてないよね?」
「うん。ちょっと殴られただけ」
「それは乱暴なことかもだけど、よかった~」
「それで今朝、三人とも私の舎弟になったんだ。まあ、仲の良い後輩が増えたと思って」
「うん、わかった! そういうことなら……」
「だな! むしろ、更生させようぜ!」
「ありがとう、みんな」
うんうん。
やっぱり、日頃の行いがものを言うよね!
そして、昼休みを迎える。
「じゃあ、不良さんたちのところに行ってくる!」
「気をつけなよー?」
「またな、姐さん」
「うん」
こうして、一年教室のある一階に来ると、ハルキちゃんが「ハルキちゃんアイアンクロー」を二人にかましていた。
それも廊下で。
「あの、なにしてるのかな?」
「あ、つむぎさん! こいつら二人がサボってて……」
「そういうことっス。オレは教室に戻れって言ったんスけど」
「とりあえず、みんな私のクラスに来て? あと、ハルキちゃんは女子から怖がられてるから、一旦やめること」
「は、はい!」
「うす」
それから、私たちはみんな、二年教室に移った。
けど、なんかクラスの雰囲気がトゲトゲしてる気がする。
「じゃあ、自己紹介して」
「ここでっスか!?」
「うん。だって、私キミのこと知らないし」
「おれは矢田ユキト!」
「俺は大原カツヒコっス!」
「オレは室田ヒロキ」
「うん。三人とも、よろしく」
「「「ウッス! 姐さん!!」」」
「いいんですか? つむぎさん」
「うん。このクラスの人たちには事情を話したから。いじめられっ子を庇ったって!」
「それ、マズいんじゃ……?」
「大丈夫! みんないい人たちだから」
そう言ってると、クラスメイトの男子が殴りかかろうとしたので、私は庇う。
「危なーい!」
「早乙女さん!? なんで庇うんだよ!? 昨日ボコられたんだろ?」
「過去は変えられないけど、未来は変えられる。私はこの三人が更生できるって信じてる! 暴力なら、私が受けるから!」
そう言うと、クラスの雰囲気がトゲトゲしていた感じがなくなった。
「チッ……早乙女さんに感謝しろよ。不良ども」
「それよりつむぎちゃん、そこのイケメンは?」
「ああ、ハルキちゃんね。庇ったら、色々あって仲良くなったの」
「つむぎさんに惹かれた人間の一人です! よろしくお願いします!」
「……えっ!? 惹かれたって、そういうことだよね!?」
「さすが早乙女さん! 人徳あるなぁ」
「この子はハルキちゃん。春木晶って言うんだよ」
「へー! よろしくね!」
「は、はぁ……」
ハルキちゃんが困惑してる中、私は仕切る。
「それじゃあ、お昼ごはんを食べよっか!」
「はい!」
「「「ウス!」」」
こうして、後輩のみんなをクラスのみんなに紹介できた。
今はまだギクシャクするだろうけど、きっと大丈夫だろう。
そう確信しつつ、私はお弁当箱を出すのだった。
この不良たちの名前は覚えなくても問題ありません。




