↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男装女子と善人女子  作者: 私信
自覚編
38/40

第三十八話 お宅訪問 その③


「実は今日、休日にも関わらず、お父様とお母様に用事が入ってしまい……」

「それで私が呼ばれたんだね……?」

「はい。ご迷惑じゃありませんでしたか?」

「うん。たまには親友同士、仲良く遊びたいなぁって」

「そうですの!?」

  

 本当はハルキちゃんと遊べなくてちょっぴり残念だけど、お屋敷で一人なのは可哀想だからなぁ。

 一応、使用人さんたちはいるんだけどね。


「それで、雪菜ちゃんはなにがしたい?」

「メイド服に着替えてください。この間言ってましたものね? この屋敷に来たらいつでも着ると」

「うん! 髪型は?」

「では、前に見られなかったツインテールでお願いしますわ」

「うん、わかった!」


 こうして、前のときのように着替える私。

 といっても、前はポニーテールだったけど。


「ど、どうかな?」


 雪菜ちゃんの作業室ではなく、ちゃんとしたお部屋で見せてみる。

 というか、ちゃんと部屋あったんだ。いや当たり前か。


「……まだまだですわね」

「な……なにが?」

「足りないものがありますわ」

「足りないもの……? あっ、そういうこと!」

「はい、そういうことでしてよ?」

「でもなぁ……」


 あれはスイッチが入らないと恥ずかしいからなぁ……


「……もしかして」

「な、なに?」

「春木晶が恋しいのですのね? わたくしだって、その辺はわかってきましたわ! すぐに手配を……」

「違うよ!? ごめんね? 気を遣わせて」

「でも、寂しそうな顔をしていましたわよ?」

「えっ?」

「『親友』は『恋人』には勝てないということに、先日ようやく気がつきましたの。だから、遠慮しなくて結構ですわ」

「遠慮じゃなくて……その、恥ずかしかっただけだよ?」


 私は雪菜ちゃんを見つめながらそう言う。


「くっ……! 上目遣いですの……!?」

「……ど、どうかした?」

「いえ、なんでもありませんわ。少しダメージを……」

「そっか。じゃあ、今日は『親友』を『恋人』より優先するから!」

「はい?」


 きっと私のせいで心にダメージを受けたんだよね?

 なら、私が助けてあげないと……!


「心にダメージを受けたんでしょ?」

「ええ、間違ってはいませんけど……」

「なら、私が助けてあげるね! 前みたいに攻め攻めでいくから!」

「でも、春木晶に悪いような……」

「じゃあ雪菜ちゃん、ベッドに座ってもらえる?」

「はい……?」


 私は雪菜ちゃんの頬を両手で包み込み、私の鼻の先を雪菜ちゃんの鼻の先にくっつける。


「ほら、私は雪菜ちゃんの味方だから。だから、今日は『親友』として遊ぼう?」

「はい……って、そうじゃありませんわ! 『親友』だからこそ、本音を言いますわね」

「えっ? なになに? ていうか、心のダメージは?」

「あ、あれは上目遣いにドキッとしただけでしてよ!」

「あっ、そうなんだ……。よかった」

「つむぎさんはわたくしをどう思っていますか? 今日は本音で語り合いましょう」

「うん、わかった! 私は雪菜ちゃんのことは、そうだな……気まぐれな猫ちゃんってイメージかな?」

「……どうしてですの?」

「えっと、気まぐれで……可愛いけど尻尾を振る相手は選ぶ。でも、その相手にも素直じゃないから……そういうところが可愛いなって」

「なるほど……」

「雪菜ちゃんは、私をどう思ってるの?」

「そうですわね……」


 これで私も雪菜ちゃんの本音が聞けるのかな?

 そんなふうに思っていると、早速雪菜ちゃんは語り始める。


「もしわたくしに姉がいたらこんな感じかと」

「そんなふうに見てたの?」

「はい。自由に生きてて、正義感が強くて、わたくしのために行動してくれて、可愛らしいけどしたたかで、そして…………とっても身勝手な人ですわ」

「……確かにそうかも。雪菜ちゃん、言語化が上手いね!」

「礼には及びませんわ」

「それじゃあ、なにして遊ぶ?」

「それでは、わたくしの膝に乗ってくださいまし」

「うん。いいけど……今の私ってメイドさんなんだよね?」

「関係ありませんわ」

「……うーん、そっか! 確かにそうだね」


 雪菜ちゃんを疑わずに雪菜ちゃんの膝の上に座ると、後ろから抱きしめられる。


「ゆ、雪菜ちゃん……?」

「本音で語り合いましょうと言いましたわね?」

「うん……」

「本来ならこんなこと言いませんし、言うべきではありませんわ。でも、言わせてくださいまし」

「えっ?」

「大好きですわ……!」


 雪菜ちゃんがギュッと私を抱きしめると、雪菜ちゃんの目元の位置から温かいものが背中ににじむ。

 それが涙だと気付くのに、一秒もかからなかった。


「そっか……」


 私は複雑な気持ちに襲われる。

 雪菜ちゃんに好かれていたのはわかってたけど、ここまでだったとは。


 

 それから数十分くらい経った頃、ようやく雪菜ちゃんは私を離してくれた。


「…………申し訳ございませんでした」

「いいよ」

「えっ?」

「前にも言ったよね? 泣きたかったら泣いてもいいし、つらいときは半分こしよう?」

「好きになりますわよ?」

「それは困るけど……あっ、そうだ! いい考えがあるよ!」

「なんですの?」

「今日からは雪菜ちゃんは私の妹分ね?」

「はい?」

「妹みたいに扱うから、これからもよろしくね! でも、こき使うわけじゃないから、そこは安心してね?」

「はい! つむぎお姉様!」


 やっぱりその呼び方になるのか……。


「その『お姉様』って呼び方はちょっと……」

「では、つむぎ姉さん……つむ姉とかどうですの?」

「じゃあ『つむ姉』で」

「わかりましたわ! それでつむ姉様、これからも親友でいてくださいますわよね?」

「うん。そこは安心して!」

「では二度目の失恋記念に、つむ姉様が思うわたくしの好きなところを教えてくださいますか?」

「うん、いいよ。最初の頃は……」


 こうして、雪菜ちゃんが私の妹分になった。

 でも、今までどおりの親友なのは変わらない。

 それから、ちょっぴりだけ雪菜ちゃんのことを知れて、少し距離が縮んだと思う私だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。