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男装女子と善人女子  作者: 私信
自覚編
36/37

第三十六話 仔犬VS大型犬


 今日は連絡もなしに驚かせようと思い、ハルキちゃんのお屋敷に遊びにきた。


 そして、インターホンを鳴らすと、早速門が開く。


「つむぎさん!」

「おはよう、ハルキちゃん」

「はい!!」

「……朝から声が大きいね」

「はい、ボクも会いたかったので!」

「そっか。この間は雑に扱ってごめんね?」

「いえ! こうしてつむぎさんと仲良くできてるので、問題ないです!」

「そっか」


 ハルキちゃんは心が広いなぁ。

 そんなふうに会話していると、仔犬がやってくる。


「放し飼いしてるの?」

「はい。『つむぎ』、つむぎさんに挨拶を……」


 自分の名前を呼び捨てにされて、ちょっぴりドキドキする。

 でも、ハルキちゃんにバレないよう平然を装った。

 なんだか恥ずかしかったから。


「『ムギちゃん』、こんにちは」


 そう言うと、私の右手がガブリと噛まれる。


「痛っ!?」

「つむぎさん!? よし……ちょっとこいつ、保健所に連れて行きますね」

「いや大げさだよ!?」


 あっ、そうだ! 確か映画でこんなシーンあったっけ。


「怖くない怖くない……」


 そう言いながら左手で撫でる。

 すると、右手を離してくれた。


「や、やった……」


 と同時に、今度は左手をガブリと噛まれた。


「痛っ!!」

「くっ……! このままじゃつむぎさんの手がやばい……そうだ!」


 ハルキちゃんがどこから出したのか、フリスビーを「ムギちゃん」に見せつけてから遠くに投げる。

 すると、ハルキちゃんの思惑通り、「ムギちゃん」は投げた方向へと向かっていく。


「すみません、つむぎさん。まさか『つむぎ』がつむぎさんを噛むとは……」

「映画の主人公みたいにはならなかったね」

「笑いごとじゃないので、早く消毒しましょう」

「うん!」


 それから、傷口を水で洗って絆創膏を貼る。


「よし。では、どうします?」

「『ムギちゃん』と遊びたい」

「ボクがいるのにですか!? 犬ごときにつむぎさんを取られたくないです!」

「だから、大げさだって……」


 可愛い大型犬だなぁ……。


「じゃあ、噛んで?」

「はい?」

「なんか、えっちなことらしいから! ハルキちゃんも私にマーキングして?」

「はい! なら、部屋に行きましょう! ここは人目につくので!」

「わかった」


 それから、ハルキちゃんの部屋に着くと、ハルキちゃんが抱きついてくる。


「わっ……!?」

「まずは、謝らせてください。あのクソ犬……あ、『つむぎ』がしたこと」

「あんなの、かすり傷だよ……?」

「いえ、ガブッといってましたから」

「そっか……」

「ボクの前では、強がらないでください。ちゃんとわかっているので」

「うん……」


 そんな会話をしていると、ドアが半開きになっていたのか、「ムギちゃん」がやってくる。


「あっ! つむぎさん、『つむぎ』がやってきましたよ!?」

「よし、今度こそ仲良くなる!」


 そう覚悟すると、絆創膏の部分を舐めていた。


「あはは、可愛い」

「そうですか? ボクの方が可愛いでしょう?」

「……張り合わないの!」


 普段は可愛いって自分から言わないのに……

 ハルキちゃん、完全にこの子に嫉妬してる。

 なんか、こういうところが大型犬なんだよなぁ。


「ハルキちゃんも可愛いよ?」

「ありがとうございます」


 そんな会話をしていると、二の腕を舐めてくる「ムギちゃん」。


「くっ……! 羨まし……いや、けしからん犬だ」

「ハルキちゃんにもあとでさせてあげるから」

「ホントですか!?」

「ふふっ……くすぐったい!」


 私が仰向けになると、今度は太ももを舐めてきた。


「ふふふっ……! くすぐった……あれ? ハルキちゃん?」


 ハルキちゃんは「ムギちゃん」を持って、私から避難させる。


「すみません。うちのエロ犬が……」

「『ムギちゃん』の性別は?」

「メスですね」

「へー! ハルキちゃんと一緒だね?」

「……どういう意味ですか?」

「どっちも可愛いってこと! それじゃあ、洗ってくるかな」

「いえ、濡らしたタオルを持ってくるので、それで拭いてください」

「うん! さすがにシャワーを浴びるのは早いもんね」

「はい。持ってくる間、こいつを見ててください」

「うん!」


 こうして、「ムギちゃん」を下ろすハルキちゃん。


 それから、「ムギちゃん」と二人っきり? になる。


「『ムギちゃん』……?」


 声をかけようとすると、ベッドに寝そべり「ワン!」と吠えるムギちゃん。

 そっか。もしかしたら、私と同じなのかもしれない。名前も一緒だしね。


「大丈夫だよ、ハルキちゃんは取らないから」

「ワン!」

「うん。だから、安心してね?」

「ワン!」

「『ムギちゃん』が思う、ハルキちゃんのいいところは?」

「クゥーン……」

「そっか。私もそう聞かれたら悩むし、一緒だね!」

「ワン!!」

「一緒にするなってこと? なら、私たちはライバルなのかな?」

「ワン……」

「……ってわけでもないのか」


 なんとなくわかってきたかも。

 そんなことを思っていると、ハルキちゃんがやってくる。


「なに犬と会話してるんですか?」

「ワン!!」

「うわっ!? ボクには吠えたことないのに……!?」

「邪魔しないでって。ガールズトーク中だったから」

「なるほど。さすがはつむぎさん」

「なにが『さすが』なのかはわからないけど、ありがとう」

「クゥーン……」

「眠いみたい」

「そうですか。でも、ベッドに小便をかけられたら面倒なので、向こうに連れて行きます」

「うん」


 そのうちに、濡れたタオルで舐められた部分を拭う。

 「ムギちゃん」って可愛いなぁ。

 タイプで言えば、ハルキちゃんってよりかは雪菜ちゃんタイプだけど。

 

 それから、ハルキちゃんがやってくる。


「ではつむぎさん! あのエロ犬の代わりに、ボクが相手します!」

「うん、よろしく」

「では、うなじの近くを噛みますね……?」

「そんなところ噛んで、どうするの?」

「マーキングです」


 こうして、ハルキちゃんにうなじの近くを軽く噛まれる私。

 

「痛くなかったですか?」

「うん。『ムギちゃん』のよりは」

「『つむぎ』がすみません」

「……あまり呼び捨てにしないで? ドキッとするから」

「いえ、ボクはあの犬のことを……」

「わかってるけど、私だってハルキちゃんのことは好きだから……その、照れちゃうよ……」

「……あんなエロ犬よりよっぽど可愛いですね、つむぎさんは」

「私も、『ムギちゃん』とハルキちゃんなら、ハルキちゃんの方が可愛いと思う」

「ですよね!」

「うん」


 うーん、完全に尻尾を振ってる……可愛いなぁ。


「ところで、歯型をつけるのってなんでなの?」

「マーキングというか、自分のものだっていう証をつけるためとかなんとか……」

「さすが! 詳しいんだね?」

「はい。当然です」

「じゃあ、私も歯型つけていい?」

「いえ、ダメです」

「…………なんで?」

「その……ボクがつむぎさんのものって考えると、抑えが効かなくなるので」

「そっか。えっちなことは私が十八歳になってからだもんね!」

「そういうことです」


 こうして私は、「ムギちゃん」と仲良くなった……のかな?

 でも、ハルキちゃんはそれがあまり気に入らなかったみたい。

 そう考えると、やっぱり大型犬って飼うのが大変だ。

 でも、仔犬よりも可愛いかもしれないと思ってしまう私だった。

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