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男装女子と善人女子  作者: 私信
自覚編
32/37

第三十二話 恋慕


 今日も昼休みがやってくる。


「雪菜ちゃん、学校には馴染めてきた?」

「はい、おかげさまで。では、眠りますわね」

「う、うん……おやすみ」

「はい!」


 雪菜ちゃんが寝ることに重要性を見出したようだ。

 それはいいことなんだけど、親友としては少し残念だなぁ。

 もう少しお話したいし。


 と、ここでハルキちゃんがやってくる。


「こんにちは、つむぎさん!」

「うん! よく来たね、ハルキちゃん!」

「……才上のヤツは、寝てるんですね」

「うん。相変わらず寝不足……ってわけじゃないと思うけど、寝かせておこう?」

「はい! それより、今日はロングヘアですか。可愛いです」

「うん、ありがとね。ハルキちゃんも可愛いよ!」

「はぁ……それで、今日はなにをしましょう?」

「うーん……」


 なんだろう? あのデートの日から、ハルキちゃんにだけドキドキする。


「つむぎさん?」

「ハルキちゃん、私、ヘンになっちゃった!」

「はい? どこがですか? 可愛いですよ?」

「あの、近づかないでくれる?」

「ご、ごめんなさい……」


 私から距離を置くハルキちゃん。


「あっ、そういう意味じゃなくってね?」

「では、どういうことです?」

「……その、ハルキちゃんを見ると、ドキドキしちゃうの」

「へぇ……」

「これ、病気なのかな?」

「はい、病気ですね!」

「そっか。どうやったら治るのかな?」

「さぁ?」

「でもそっかぁ……病気だったのか」

「だけど、ボクも同じ病気なので! 心配しなくても大丈夫です!」

「そうなの? それって、なんて病名?」

「『恋』ですね!」

「……そっか。これが『恋』かぁ」

「はい! つむぎさんはボクにドキドキしたりしたことはなかったんですか?」

「たまーにあったけど、あれっていつもえっちなことしてるときだったから」

「わー! わー! つむぎさん、まだ昼ですよ!?」

「あっ、ごめん……! とにかく、特別なときだけのものだと思ってた」


 でも、ハルキちゃんはこれを毎日味わってたんだ……。


「すごいなぁ……」

「なにがですか?」

「ハルキちゃんが」

「……ありがとうございます」

「じゃあ、攻めていい?」

「だから、まだ昼ですよ?」

「ならチューは?」

「余計にダメです!」

「ご、ごめん。私、ハルキちゃんみたいになってた……」

「その言葉を褒めてると受け取るべきなのか、それともそうじゃないのか……」

「だ、大丈夫! 暴走してるハルキちゃんは可愛いから!」

「はい、暴走してるつむぎさんも可愛いです! だから、安心してください!」

「そう?」

「はい!」

「そっか……!」


 今さらだけど、これって両思いってやつなのかな?


「ハルキちゃ……」

「ではつむぎさん! 昼休みが終わるので、またあとで!」

「あっ、うん!」


 えぇ……? もっとイチャイチャしたかったなぁ……。


 そんなふうにして、昼休みは無情にも終わった。


「ていうか、ハルキちゃんって可愛いなぁ」


 そのことをハルキちゃんに伝えてあげたい。

 ハルキちゃんは可愛くてカッコよくて、護りたくなる男装をしてる女の子。


 あ、でも男装してるのは二人だけの秘密だったっけ。


「ハルキちゃんに会いたいなぁ……」


 そんなことを考えていると、当然授業には集中できず、あっという間に放課後に。


 よし。この間みたいに、一年生の教室に行こうかな。

 とか思っていると、ハルキちゃんがやってくる。


「つむぎさーん!」

「あっ、ハルキちゃん」

「我慢できなかったので、廊下を走って来ました」

「それはダメだよ。でも、私も同じ立場ならやってただろうし、許すかな」

「ありがとうございます!」

「て、ててて……」

「はい? どうかしましたか?」

「手を繋いでいい?」

「はい!」


 こうして、恋人繋ぎで帰る私たち。

 嬉しくって、校門を過ぎても腕を前後にフリフリと揺らしてしまう。


「嬉しそうですね?」

「うん! 『恋』ってすごいね! そして、ハルキちゃんはもっとすごいね!」

「そうですか? ありがとうございます」

「なんか、視界が明るく感じる。人生バラ色ってやつ?」

「ボクも、つむぎさんと一緒だと思いますよ? 視界が煌びやかに光り輝き、鮮やかな色を持ち始めるんです!」

「……なんか負けた気がする!」

「なににですか?」

「語彙力? あと、ハルキちゃんの人生には色がなかった? ってことだよね?」

「そうですけど?」

「ふーん。なら、私ってハルキちゃん担当の画家さんだね!」

「……ふふっ、そうですね」

「なに? なんかおかしかった?」

「いえ、つむぎさんらしい……可愛らしい喩えだったので」

「そう? バカにしてない?」

「いえ! まったく! ボクの目を見てください!」


 そう言って、私に顔を近づけるハルキちゃん。


「て、照れちゃうよ……」

「いえ、大丈夫です」


 照れてつい目を逸らしてしまう私。


「ていうか、ハルキちゃん楽しんでるよね?」

「はい! ようやく両思いになれたので!」

「両思い……」

「……あの、違いましたか?」

「…………ううん、違くない!」

「そうですか、よかったです!」


 ハルキちゃんから言われると、なんだか緊張するというか、ドキッとするというか……


「……ハルキちゃんハルキちゃん」

「なんですか?」

「耳元で言いたいから、屈んで?」

「はぁ……?」


 屈んだハルキちゃんの耳元で、私はつぶやいた。


「……愛してる」

「えっ!?」


 顔を真っ赤にして動揺するハルキちゃん。

 

 でも、私も顔がとてつもなく熱いから、引き分けかな。


「ハルキちゃん照れてるね!」

「つ、つむぎさんだって!」

「これからは毎日言ってあげようか?」

「ぜ、ぜひ! お願いします!」

「冗談だよ? それに、ハルキちゃんにならいつでも言うから」

「そうですか……」

「あとさ……」

「はい?」

「どうしたら、この気持ちを抑えられるかなぁ? 授業中でも会いたくなるし、ついついハルキちゃんを考えちゃうんだよね……」

「それは……わかりません。ボクも同じなので!」

「そっかぁ……なら、これからは毎日の楽しみがまた一つ増えたってことだね!」

「ですね! でも、授業はしっかりと受けましょう」


 たまにまともなこと言うんだよね。ハルキちゃんって。


「そういうハルキちゃんは?」

「窓を見てます。ボク、先生方から怖がられてるので」

「なら、勉強の方はどうなってるの? テストとか」

「教科書を見れば大体わかるので」

「へぇー! でもさ、あれだよね!」

「なんですか?」

「もし私が留年してハルキちゃんと同級生になっちゃったら、困っちゃうね!」

「なんですかそれ!? 最高じゃないですか!! ぜひ、留年してください!!」

「えぇ~? ハルキちゃんが言うと冗談に聞こえないからなぁ……」

「冗談じゃないので!!!」

「……じゃあ、ハルキちゃんがもっと魅力的になったらいいよ?」

「…………どういう意味ですか?」

「うんとね、ハルキちゃんが私をメロメロにするの! そんで、私を留年させるくらい悶々させたら……とか?」


 もちろん冗談だけど。

 留年したら、なんか周りに気を遣わせそうで嫌だし。


「じゃあ! ボク、頑張りますね!!」

「うん……あと、冗談だからね?」

「えっ?」

「留年はしない。でも、ハルキちゃんとイチャイチャはいつでもできるから。ね? だから、お互い頑張って授業受けよう?」

「はい!!」


 こうして、私はハルキちゃんに今さらながら「恋」してしまった。

 これからは毎日ドキドキするのかな?

 そう考えると、ワクワクというかムズムズというか、不思議な感情に襲われる私だった。

ここからつむぎ側もだんだん変化していきます。

楽しみにしててください。

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