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男装女子と善人女子  作者: 私信
自覚編
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第二十九話 雨のちシャワー


 それはとあるデートの日だった。


「うーん、スイパラっていいね!」

「ですね……ちょっと恥ずかしいですけど」

「えー? ハルキちゃんも今日は女の子になれば?」

「えぇ……? それは難しいかと……」

「そうかなぁ?」


 そんなふうに話していると、突然雲行きが怪しくなってきた。


「どうしよう? 今日は傘持ってきてないよ?」

「ではもう行きましょう」

「うん……お会計は私が払うね!」

「いえ、ボクが払います。今日は!」

「うーん……なら、今日はなんかお願い聞いてあげるから、それでチャラね!」

「はい!」


 ハルキちゃんって、お金の話になるとうるさいんだよなぁ。

 奢るとき以外はお金を受け取ってくれないし。

 まあ、それだけお金の価値を知ってるってことでもあるけど。


「よし! では、行きましょう!」

「うん!」

「それで、ボクの家に来てください」

「うん! ん? 冷たっ!?」

「くっ……! 降ってきたか!」

「ど、どうする?」

「前が透けると思うので、まずはボクの上着を着てから前を締めてください!」


 そう言って、パーカーを貸してくれるハルキちゃん。

 

「でも、ハルキちゃんは?」

「大丈夫です。ボクは小さいですし、サラシを巻いてるので!」

「そう? あ、そうだ! あとで楽しみにしててね?」

「……はい。で、なにをですか?」

「とりあえず、ハルキちゃんちに行こ?」

「ですね!」


 というわけで、ハルキちゃんの家に着く。


「ではつむぎさん、ボクはシャワーを浴びてきます!」

「その、一緒に入るのはありかな?」

「えっ……?」

「ダメだよね? ダメなのかな?」

「うーん……エロいことはしちゃいけな……いや、女同士で浴びるだけだ。なら大丈夫か!」

「ハルキちゃん……?」


 なんだか自問自答しているように見えたけど、本当に大丈夫なのかな?


「つむぎさん…………」

「な、なに?」

「入りましょう!」

「うん!」


 こうして、ハルキちゃんと一緒にシャワーを浴びることに。

 それにしても、ハルキちゃんの裸を見るのは初めてだなぁ。

 そんなことを考えながら、お風呂場へと足を運ぶ。


「お風呂場って広いの?」

「普通ですね。でも、まだお湯は入ってないと思いますよ?」

「……そうなんだ。あとハルキちゃんの場合、普通って基準がちょっと違うからなぁ……」


 それから洗面所に着くと、ハルキちゃんが口を開いた。


「では脱いでください」

「うん」


 なんか、気恥ずかしいな。

 ハルキちゃんの裸を見るのも、見られるのも。

 でも気になって、私の方からチラチラと見てしまう。


「あの、あまり見ないでください」

「ごめん……」

「見られると視線を感じて、こちらも気になるので!」

「う、うん」


 なんだ、ハルキちゃんはやっぱりハルキちゃんのままだ。


「じゃあ、お背中流しますねー」

「いえ、そういうのはちょっと……」

「甘えてもいいんだよ?」

「血のシャワーを浴びることになりますよ?」

「血のシャワー!? そんなのあるの!? 地獄みたいだね!?」

「はい。ボクの鼻血です」

「……あのー、これ聞いてもいいかな? 今どのくらい興奮してる?」

「すでにいつものスキンシップをやられるだけで、鼻血を出して気絶しますね」

「そっかぁ……じゃあ私は出ていく?」

「いえ! とりあえず、黙ってそこに座っててください。終わったらボクが出ていきますので」

「……うん」


 なんでだろう? ハルキちゃんを喜ばせたかったのに、困らせることばっかりだ。

 なんだか涙が出てくる。


「うぅ……」

「つむぎさん?」

「あっ、ハルキちゃん? なんか、涙が出てきて……」

「うーん……これ言おうかなぁ。でもなぁ……いや、言おう!」

「な、なに? ていうか、なんだかさっきから困らせてばっかりだよね。ごめんね?」

「……この際だから、ボクの気持ちをはっきりと言いますね」

「うん……」

「ボクはつむぎさんをエロい目で見てます! だから興奮してます。ボクは女ですが、つむぎさんは特別なので」

「私も、ハルキちゃんをそういう目で見てるけど……? だから今日はからかいたかったんだ」

「そうですか。でも、ボクの方が気持ちは強いはずです!」

「私だって負けてないけど?」


 なぜか張り合ってしまう。

 でも私だって、ハルキちゃんのことはハルキちゃんの気持ちに負けないくらい好きだ。


「…………よし。じゃあ、こうしましょう」

「なぁに?」

「とりあえず裸なのは置いといて、シャワー浴びましょう」

「うん。じゃあ、お背中流すね」

「……はい。お願いします」


 よし、すごく綺麗にしてあげよう!

 そう思ってボディソープを手に出して泡立てる。

 

「なでなでするね?」

「あのー、つむぎさん?」

「なにかな?」

「あまりそういうことは言わないでください。卑猥なので」

「ご、ごめんね」


 ……どこが卑猥なんだろう?


「えーと、なーでなーで……痛くない?」

「はい! それと、不意に身体を押し付けたりしないでくださいね。特に胸とか!」

「そんなことやらないよ? もう、えっちだなぁ」

「すみません。では、早く背中を洗ってもらえますか?」

「あっ、そうだね」


 なんか、ハルキちゃんの中ではもうギリギリなんだろうなぁ。

 だからこそ、ちょっぴりいたずらしたくなる自分がいる。

 でも、えっちなことは成人してから! それを忘れちゃダメだ。


「じゃあ、流すよ? でもさ、これ熱くない?」

「四十三度は普通ですよ?」

「いや、かなり熱いよ……?」

「これぐらいが丁度いいです」

「じゃあ、なでなでしながら流すね」

「…………お願いします」

「じゃあいくよ」


 シャワーをかけると、ハルキちゃんは気持ちよさそうにしていた。


「うん。やっぱり丁度いい」


 ようやくハルキちゃんの身体を洗い流す。


「じゃあ、今度は私を洗って?」

「えっ? その綺麗な身体をボクに触れろと?」

「うん。ハルキちゃんはヘタレじゃないから、余裕だよね?」

「いえ! ボクはヘタレなので、自分でどうぞ。失礼します!」

「…………意気地なし」

「着替えを置いておくので、着たら部屋に来てください」

「あーあ、私もハルキちゃんに洗ってほしかったなぁ」

「血のシャワーを浴びせたくなかったので。では、入り口で見張ってます!」

「うん……!」


 こうして、ハルキちゃんを洗ってあげた私。

 でも、ハルキちゃんにはちょっと刺激が強すぎたのか、上手く逃げられてしまった。

 えっちなことは禁止してるから仕方ないけど、少しだけでもかまってほしかったなぁ。

 そんな乙女心も届かず、一人寂しく身体を洗う私だった。

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