表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男装女子と善人女子  作者: 私信
才上編
27/37

第二十七話 才上家 その後

才上家編最後です。

ここからはまた、一話掲載に戻ります。


 結局その日は雪菜ちゃんとお父さんのためにも、昼食を食べたあとにハルキちゃんと一緒に帰った。

 雪菜ちゃんのお父さんはもっと私たちに居てほしかったみたいだけど、親子水入らずなのを邪魔するのも悪いと思ったからだ。

 もちろん、メイド服を返してから帰った。

 ハルキちゃんは残念そうにしていたけどね。


 

 それから、その翌日……


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「いきなり頭を抱えてどうかしたんですか? つむぎさん」

「昨日はかなりでしゃばっちゃったし、雪菜ちゃんにも甘やかしモードで接しちゃったし、恥ずかしい……!」

「悶絶するつむぎさんも可愛いなぁ。そういえば、あのあとの才上は?」

「ふふ、気になる?」

「はい! デートを邪魔されたくないので!」

「ブレないね……。土日は仕事の山を処理する係になって、お父さんも雪菜ちゃんが徹夜しなければパソコンをイジるのは黙認してくれるって!」

「つまり、休日デートは平穏ということですね!」

「そうとも言えるね! それより、雪菜ちゃんは大丈夫かな?」

「大丈夫なんじゃないですか? 言っちゃ悪いですが、数年間ほぼ寝ずに働いてたんでしょう? なら、寝坊しないように生活する方が難しくないですかね?」

「うん、そうだね!」


 なんだ。ハルキちゃんも、意外に雪菜ちゃんを評価してるんだなぁ。


「それより、デートを楽しみましょう!」

「うん!」


 結局その日は食べ歩いたり、たくさんおしゃべりをしただけでデートは終わった。



 それから一週間後のこと。

 私は約束どおり、私一人で雪菜ちゃんのおうちにやってきた。


「今日は忙しい中、来ていただきありがとうございますわ」

「いやいや、それはこっちのセリフだよ! ご両親と仲良くしてる?」

「はい。それはもう!」

「よかった! 少しでも雪菜ちゃんの環境を変えられたかな」

「そんなの、言うまでもありませんわ!」

「そういえば、あの日は甘やかしモードで接してごめんね。なんであんなふうに接しちゃったんだろう……恥ずかしい」

「いえ! わたくしもまんざらではありませんでしたし、新たな扉が開いたので結果オーライですわ!」

「それは本当に結果オーライなのかな……?」

「では早速、膝枕を所望しますわ!」

「えぇ~? しょうがないなぁ。一回だけだからね?」

「そうそう、そういうところがグッと来ますわ」

「じゃあ、寝転がって?」

「はい!」


 こうして、ソファに座って雪菜ちゃんを膝枕する。

 すると、背後から誰かがやってくる気配を感じた。

 その人物とは、


「やぁ、つむぎさんとやら」


 先日揉めた雪菜ちゃんのお父さんだった。


「はい、お久しぶりです!」

「雪菜はどこかな? 仕事のことで話があるのになぁ」


 どうやらソファが陰になってるせいか、背後からは雪菜ちゃんが見えていないようだ。


「雪菜ちゃんがなにかやらかしましたか……?」

「いいや? 幹部クラスでないと解けないレベルの難題をクリアする発想力があって、褒めたかったんだがな……」

「すごいですね! でも、結局家業は継がせるんですか?」

「そうだなぁ……ワタシのエゴで束縛するのはイヤだし、前向きに継がせることを検討しようかなと」

「そうですか……」

「そのときは、キミに雪菜の秘書になってもらいたくてね」

「えっ? 大した能力はありませんよ!? 私は!」

「精神面のサポート役としてキミの腕を買いたい! キミは当然として、雪菜も望めばの話だがね」

「はぁ、進路の話ですか……」

「どうかな?」

「うーん……」


 うつむくと雪菜ちゃんがいることを忘れていて、少し驚いてしまう。

 それよりも秘書かぁ……

 ここはバッサリと行こう。その方が私らしいからね。


「高校卒業まで待ってもらえますか?」

「いいとも」

「……というのが建前で、本音を言えば、あまり前向きに検討できません」

「そうか。でもどうしてだい?」

「コネクションで社長秘書になるのがイヤなんです。陰口を言われそうですしね。事実、言うとおりコネなので」

「ふむ……」

「あと、雪菜ちゃんのお父さんは『これが適している。だからそうすべきだ』と決めつける悪癖があります。私はまだ先があるから言えますが、これはお父さん自身にも当てはまったかもしれません」

「何がだい?」

「『才能がないから伸ばさない』という選択のことです。確かに私にはカウンセラーが向いているかもしれません。でも、そればかりが人生ではありませんよね。事実、雪菜ちゃんにも違う道があったかもしれませんから」

「うむ。確かにその『きらい』はあるかもな。肝に銘じておこう」

「説教臭くなってすみません。私自身、今はいろんな『才能』を見つけたいんです」

「……だな。さすがはワタシに刃向かった子だ。よく考えている」

「私は目の前のことに真っ直ぐなだけです」

「そこが長所だと思うがね。あと雪菜、つま先が出ているよ」


 ここで、雪菜ちゃんがビクリとする。


「バレていましたのね……」

「気配でな」

「会社は継がせてくれますのね?」

「ああ。とっくにワタシレベルの腕だからな」

「よかったね、雪菜ちゃん!」

「はい!」

「ただ、逃した魚は大きかったかな」

「ご安心を、お父様! まだ逃してはいませんわ!」

「……つむぎさん。これからも迷惑をかけるだろうが、これからも娘を頼むよ」

「はい!」

「ではつむぎさん、わたくしに引き続き膝枕を……!」

「えっ? お父さんの前なのに?」

「関係ありませんわ!」

「それじゃあワタシは席を外すから、たっぷりと甘えておきなさい」

「わかりましたわ!」

「では雪菜ちゃんのお父さん、またいつか会いましょう!」

「ああ」


 こうして、雪菜ちゃんの家の騒動は終わった。

 雪菜ちゃんは今まで以上に自由な環境になれたし、私自身も少し変わった気がする。

 特に、雪菜ちゃんのお父さんとも仲良くなれたのが大きいだろう。

 だけど、それでもまだまだ悩みの種は多い。

 でも、それを解決するのが人生というものだ。

 こうして、雪菜ちゃんのために頑張った結果、才上家の風向きを変えることに少し成功したのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ