表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男装女子と善人女子  作者: 私信
才上編
26/38

第二十六話 才上家 その④


「ただいまああああああ!!」


 部屋の外からそんな声がすると、執事や使用人の皆さんがドタバタとかけて行く。


「な、なんだろう?」

「……お父様の帰宅ですわね」

「へぇ……どんな感じなの?」

「オールバックの渋い人ですわ……見た目は」

「『見た目は』ってなんだよ? 才上」

「会えばわかりますわ」

「それじゃあ会いに行こうか!」

「そうですわね、わたくしも紹介したいですし」


 こうして、雪菜ちゃんのお父さんに会うために部屋から廊下に出る。


「さぁ、昼食の用意をしてくれ! ん? 新入りのメイドか?」

「わたくしの学友ですわ! つむぎさんと言って……」

「話は食事中に聞こう。さあ、昼食にするぞ!!」

「はっ! 旦那さま!」


 使用人の人たちがみんな声を揃えて言う。

 もしかしたら、意外といい人なのかもしれない。


 そして、長いテーブルにたくさんの椅子が並んでいる部屋に連れられる。


「さて、いただきます!!」

「いただきます!」


 使用人さんたちみんなが口を揃えて言う「いただきます」は、ものすごい熱気を感じた。


「いただきます……」

「いただきますわ……」

「いただきます」


 そう言ったのはいいものの、私たちの皿に食べ物は乗っていなかった。

 さっき使用人の人たちがいなかったのは、雪菜ちゃんのお父さんの分を盛り付けに行ってからだったのかな?


「どうぞ? バイキング形式だ。食べたければ取りに行きなさい」

「お、お父様! そうやっていつも聞かないですわよね!? いい加減わたくしのことを認めてください!」

「いいや、ダメだ。若いうちは仕事よりも、もっと大切なことがあるはずだ」

「でも、わたくしはもう家業を引き継げる腕はありますわ!」

「ダメだと言ったらダメだ。早死にさせたくない、わかってくれ」

「お母様はまだ生きているでしょう!」

「彼女は秘書だ。睡眠時間を削って仕事をするワタシのような生活はさせたくない」


 なるほど、話が見えてきた……。

 雪菜ちゃんのお父さんは、雪菜ちゃんに家を継がせたくないんだ……!


「あの、雪菜ちゃんのお父さん!」

「キミは?」

「早乙女つむぎさんですわ!」

「ほう。確かそこにいるライバル社、『春木家』の子の恋人……と聞いているが?」

「わたくしとも仲良くなりましたの!」

「それはいいことだ。ぜひ、これからも仲良くしてやってください」

「は、はい……。で、雪菜ちゃんのことですが……」

「…………キミには無関係だ、とだけ言っておこう」


 すごいプレッシャーだ……!

 ならここは……


「そうですね! 無関係ですね!」

「ああ、そうやって喧嘩をしないで穏便に……」

「でも、私も雪菜ちゃんとは間接的に関係があるので、無関係ではないです!」

「……キミ、いい度胸だ」

「雪菜ちゃんと話してあげてください」

「話しているさ」

「話を聞かないのは話しているとは言いませんけどね」

「喧嘩を売ってるのかい?」

「はい! 先に雪菜ちゃんに売られた喧嘩を、私が代わりに買っています!」

「売った覚えはないのだが」

「そりゃあ、互いに自覚がないからです」

「生意気な子どもだなぁ」

「分からず屋の大人よりはマシかと」

「キミ、気に入った! 雪菜と友達でいなさい! 雪菜をよろしく頼んだ」

「話はまだ終わってないです」

「いいや? キミとの話は終わりだ」

「そうですか……」


 確かに、私にはもう話すことはないかな。


「じゃあ、雪菜ちゃんにバトンタッチしますね」

「いいとも」

「雪菜ちゃん。お父さんとの久しぶりの会話だよ? 頑張って」

「はい。ありがとうございますわ」

「雪菜、ワタシは自由に生きてほしいんだ」

「では、家業を継ぐのも自由では?」

「早死にさせたくないんだ」

「わたくしは構いませんわ」

「こっちが構うんだよ。当主は跡継ぎを決めるまで、死んではならないんだ」

「では、わたくしは頑張って生きますわ」

「つむぎさんとやら。キミはどう思う? 彼女に早死にしてほしくはないだろう?」


 ……ここはなんて答えるべきなんだろう。

 なら、私らしく言ってみよう。


「はい! 私は雪菜ちゃんには早死にしてほしくありません!」

「そうか。つまり、ワタシの味方なわけだね?」

「…………いえ、どうしてもと言うのならさせるべきです。私はあくまでも、雪菜ちゃんの味方なので!」

「そうかい。キミは雪菜が早死にしてもいいと」

「今の時代、人力のみの企業は少ないと思いますが?」

「それもそうだがね、いざってときは、やはり人間がものを言う」

「お父様! わたくしは大丈夫ですわ!」

「なら本音を語ろう。会社などどうでもいい。長生きしてほしいんだ。親として!」

「春木晶はどう思いますの?」

「ボク!? ボクからしたら、才上家なんてどうでもいいよ! つむぎさんに聞け!」

「では、つむぎさんとやらは?」

「うーん、私も正直どっちでもいいかな。お父さんの言うとおりだけど、雪菜ちゃんの味方もしたいし……」

「そうですか……」

「でもね、いい方法があるよ!」

「なにかね?」

「なんですの?」


 口を揃える才上親子。


「それはね、雪菜ちゃんのお父さんが休む時間を作ればいいんだよ!」

「ほう?」

「なぜですの?」

「雪菜ちゃんのテストとして、毎週末に会社の資料を解かせる! 実力があるなら会社のためになる! それで、雪菜ちゃんはお父さんとも遊べるよね?」

「ほぅ……確かに、親子の時間は大切だ」

「解けなかった場合はどうなるんですの?」

「その場合、雪菜ちゃんは会社を継ぐに値しない。でもそこそこの腕ってことで、社員にはなれるんじゃないんですか? 雪菜ちゃん自身も、睡眠時間を削って毎日頑張ってるんだったよね?」

「なるほど……どちらにしろ、雪菜の要望を叶えつつ、ワタシは自由な時間が増えるというわけか」

「いい考えですわね!」

「………………うむ、いいだろう。採用だ!」

「あのお父様が受け入れるだなんて……!」

「ありがとうございます!」

「さすがはつむぎさん! 惚れ直しましたよ!」

「ふふん。私も久しぶりに男の人と張り合って、緊張したなぁ」


 ちょっと怖かったけど、雪菜ちゃんのためだったからね!


「ああ、いい胆力だった。これからも雪菜とよろしく頼むよ」

「はい! 雪菜ちゃんの実力を見つつ、睡眠時間を増やしてください。雪菜ちゃんだけではなく、雪菜ちゃんのお父さん自身も!」

「了解だ。キミが女性でなければ、婿になってほしいくらいだよ」

「いえ! どちらにせよ、私にはハルキちゃんがいるので!」

「……そうか」

「それより、お父様たちと遊べる時間が増えるのは嬉しいですわ!」

「ああ。母さんにも伝えておこう」

「はい! ぜひ頼みますわ!」


 こうして、雪菜ちゃんの親子喧嘩に巻き込まれた私。

 私も雪菜ちゃんのお父さんには結構酷いこと言っちゃったけど……。

 なんにせよ、雪菜ちゃんの悩みの種を解消できてよかったと実感するのだった。

久しぶりの漢らしいつむぎですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ