第二十四話 才上家 その②
「ここかな?」
お屋敷の扉を開けると、そこにはたくさんの猫がいた。
「わぁ……! 猫ちゃんだ!」
前までは喜んでいたんだろうけれど、私にはもう大好きな大型犬がいるからなぁ。
「でも私はもう犬派だから、次の部屋にいこう!」
こうして、猫ちゃんたちがいた向かいの部屋を開ける。
すると、今度はたくさんの食べ物がバイキング形式で置いてあった。
「わぁ、美味しそう! でも今は雪菜ちゃんを探してるし、またあとで来よう!」
それから、いろんな部屋を回った。
でも、雪菜ちゃんはどこにも見つからなかった。
諦めてクッションやふかふかのベッドがある部屋でゴロゴロしながら壁に寄りかかる。
すると突然壁が抜けて、頭をぶつけてしまう私。
「いてて……なにこれ? 立体映像ってやつ? ハイテクだなぁ」
もしかして、ほとんどの部屋がこうなってたのかな?
壁の奥は長い廊下になっていて、奥に大きな扉がある。
ということは……!
「よし、進もう!」
そうして進むと、指紋認証を要求される。
『指紋認証をしてください』
「ええっ!? 仕方ない、ダメ元でやってみるか」
右手を扉の「手のマーク」にかざす。
『では、次に虹彩認証をしてください』
「まだあるの!? てか、虹彩認証ってなに!?」
『目のことでしてよ』
「あっ、雪菜ちゃんの声だ! よーし、待っててね!」
そして、覗き込んで虹彩認証ってのも終わらせる。
『登録完了。それでは、お通りください』
「登録してたんだね……」
紛らわしい設計だなぁ。
そんなふうに思いながらも部屋に入ると、巨大なコンピューターの目の前でキーボードをカタカタとイジってる雪菜ちゃんがいた。
「雪菜ちゃん、久しぶり! って、さっき会ったけどね!」
「ええ」
「でも、目ぇ悪くなりそうだね」
「心配ご無用。ブルーライトカットのコンタクトレンズとメガネを二重でしていますわ」
「それは意味があるのかどうかは置いといて、よかった! で、なにしてるの?」
「今は遠隔で両親の会社の会議に参加していますの。こちらの音声は聞こえていないので、タイピングでメッセージを送ってますわ」
「オンライン会議ってやつだね!」
「ええ。しばらくお待ちくださいまし」
「わかった。忙しそうだし、今はいいや。またね!」
「ええ、またあとで」
こうして部屋を出る私。
それにしても……
もしかして、私ってお邪魔虫なのかな?
企業の邪魔になることしかしてないし、そりゃあそうか。
…………どうしたら解決できるんだろう?
ハルキちゃんに相談してみよう。
『ハルキちゃん?』
メッセージアプリで試しに相談してみる。
『なんでしょうか?』
『邪魔にならない支え方ってあるのかな?』
『その人の主観によりますね』
『雪菜ちゃんを助ける方法って、本当にあるのかな?』
『学校でたくさん関わるだけじゃダメなんですか?』
『でも、現状のままじゃ可哀想じゃない?』
『そうですね。でも、現実を見るのも大事かと。事実、才上自身が変わろうとしていませんから』
『そっか! ありがとね、ハルキちゃん』
『なにか掴めたなら幸いです』
『じゃあ、またあとで!』
『それとつむぎさんって、今どこにいるんですか?』
『あとで教えてあげる』
これでよし。
雪菜ちゃんが変わろうとしていないってことは、欲を出そうとしていないってことだ。
つまり、私がなにをしても無意味ってことだよね。
「私じゃなくて、雪菜ちゃんの心を動かす必要がある! よーし、やってやるぞ!」
そう考えると、これはハルキちゃんの許可も取る必要がある。
そう思い、メッセージを送る。
『ハルキちゃんハルキちゃん』
『なんですか?』
『今日だけは雪菜ちゃんも私の大切な人として扱ってもいいかな?』
『はい?』
『できないことがあるなら、しっかりと現実を見る必要があるのかもしれないけどさ』
『はい』
『青くさいことをやってでも、私は彼女を助けたいんだよね』
そう送ると、三分ほど待ってから返信がくる。
『わかりました。じゃあ今日は、つむぎさんの好きにしてください』
『ありがとね! 明日はたくさんイチャイチャしよう?』
『はい! その言葉、忘れないでくださいね』
『うん!』
これで準備は整った。
今はもうハルキちゃんだけが特別ってわけじゃない。
だから、罪悪感を感じない……ってわけじゃないけど、少しはマシになったと思う。
まるで雪菜ちゃんがしているブルーライトカットのコンタクトレンズやメガネのように。
「これでよし!」
『指紋認証をしてください』
「はい!」
『では、次に虹彩認証をしてください』
「うん!」
『認証完了。それでは、お通りください』
「よーし」
そうして、雪菜ちゃんのいる部屋に入る。
「雪菜ちゃん?」
「はぁ……ようやく会議が終わりましたわ」
「お疲れ!」
「はい。お待たせして申し訳ございませんわ」
「それで、これからどうするの?」
「お仕事ですわ」
「なら今日はやめておこうか! ね?」
「言いのづらいですが、つむぎさんには関係ありませんわよね?」
「じゃあ、今日だけは少しだけわがままになろう?」
「どういう意味でして?」
「今日は私に甘えてもいいよ! 私は雪菜ちゃんが心配だから、ハルキちゃんにも確認取っておいたし!」
「なにを考えていますの……?」
「ふふっ」
こうして、雪菜ちゃんともっと仲良くなることにした私。
これで自由に動けて助けられる!
現実は受け入れた方がいいのかもしれないけど、私は不自由な人は見過ごせない。
そのために、ハルキちゃんにも確認したんだから。
そして、ここから私の逆転劇が始まろうとしていた。




