第二十三話 才上家 その①
時刻は午前九時頃、ピンポーンとチャイムが鳴る。
「はーい」
私が玄関へ向かうと、そこには雪菜ちゃんがいた。
「ごきげんよう」
「うん、おはよう!」
「では、乗ってくださいまし」
「うん。いってきます!」
昨日の夕方に連絡先を交換したので、雪菜ちゃんのおうちに行く準備は出来ていた。
それから外に停まっていたリムジンに乗ると、そこにはハルキちゃんも乗っていた。
「おはよう!」
「あっ、つむぎさん! おはようございます!」
「うん。今日は目いっぱい楽しもうね!」
「……そうですね。才上の家だけど、つむぎさんと一緒ならどこだって楽しんでみせます!」
「大げさだなぁ……でも、私も同じ気持ちかな」
「…………申し訳ございませんが、車内でのイチャイチャは禁止ですわ」
「そうなの!? ごめんね?」
「いえ……」
申し訳なさそうに言う雪菜ちゃん。
そんな雪菜ちゃんにハルキちゃんは反論する。
「おい才上、嘘をつくな。お前はボクとつむぎさんが話してるのが気に入らないだけだろ?」
「そうだ、と言ったら?」
「もっとイチャつく! つむぎさん、膝枕を……!」
「ええ~? 朝から膝枕をするのはちょっと……」
「ふふん、ドンマイですわ」
「心にもないことを言うな!」
「なんですの? やりますか?」
「はいはい、仲良くね? じゃないと、私だけ降ろしてもらうよ?」
「す、すみませんでした!」
「ごめんなさい。不快にさせるつもりはありませんでしたの」
「二人とも、今日は仲良くね?」
「……それは約束しかねます」
「わたくしもですわ」
「はぁ……」
どうして仲良くできないんだろう?
「そうだ! 私の好きなところで古今東西は?」
「うーん……それもいいですけど、逆につむぎさんがわたくしたちの好きなところを挙げるというのはいかがでしょう?」
「それいいな! 才上の割にはいいこと言うなぁ」
「えっ……!?」
こうして、二人の無茶振りに付き合う羽目になる。
「では、始めますわ。わたくしと春木晶の好きなところで古今東西」
「まずはボクのいいところから」
「可愛い!」
「わたくしは?」
「綺麗!」
「次、お願いします!」
「私を第一に考えてくれる!」
「わたくしは?」
「つい助けたくなる!」
「つむぎさん、なんかボクが贔屓されてる気がします!」
「わたくしの方が魅力的ということですわ」
「そんなことより、雪菜ちゃんのおうちに着いたんじゃない? 降りよう?」
「はい!」
「わかりましたわ」
上手く誤魔化せたかな?
雪菜ちゃんには色々と事情もあるだろうし、うんと甘やかしてあげたいんだよなぁ。
「では、門をお通りください」
「うん」
「ふーん、ボクの家より大きいのか」
そんな話をしながら、雪菜ちゃんのおうち……
というか、お屋敷に案内される私たち。
「では、あとは執事たちが相手してくれるでしょう。わたくしはお仕事があるので、ごきげんよう」
「うん! またあとでね!」
「つむぎさん、どうします?」
「私、雪菜ちゃんの部屋に行きたい!」
「そうですか。ひょっとして、つむぎさんは才上を助ける気ですね?」
「うん! だって、家だと忙しいらしいし……もっとのんびり過ごしてほしいんだよね!」
「止めはしませんが、無茶だけはやめてくださいね?」
「うん、ありがとね。じゃあ、行ってくる!」
「はい! くれぐれもお気をつけて!」
「うん!」
こうして、執事さんたちに案内してもらう。
「あのー、雪菜ちゃんの部屋ってどこですか?」
「お教えできません」
「よーし! なら、探そう! なんだかかくれんぼみたいで、楽しくなってきたぞ!」
「……愉快な方ですな」
「執事さん! 休んでていいですよ。それと、今って雪菜ちゃんのご両親は?」
「本社の方でお仕事を……」
「なら、あとで話したいので、連絡しておいてください!」
「はぁ……」
「私たち、今日は雪菜ちゃんと『遊び』に来たんだ! 絶対に見つけてみせるぞ!!」
こうして、雪菜ちゃんの部屋を見つけるためのゲームが始まった。
……と、勝手に解釈することにした。
そして、雪菜ちゃんと遊べる日になるといいなぁ。
そう願い、私は屋敷内を動き回るのだった。




